2004年1月12日発行(第2・4月曜日発行)
News Source of Educational Audiology
聴能情報誌
みみだより
第3巻
第468号
通巻553号
編集・発行人:みみだより会、立入 哉 〒790−0833 愛媛県松山市祝谷5丁目2−25 FAX:089-946-5211
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【目次】第468号
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教育オーディオロジー関係各位
日本教育オーディオロジー研究会
代表 大 沼 直 紀
「日本教育オーディオロジー研究会」設立に向けて
この度,教育の中でのオーディオロジーを進めるための新しい研究会発足に向けての準備がほぼ整いました。
今,聴覚障害児に対する教育のあり方については様々な論議がありますが,その中にあっても,聴覚を併せて利用する教育環境を望み,支援を必要としている聴覚障害児とその家族がいることを忘れるわけにはいきません。その意味で教育オーディオロジーにかかわる方々に期待される役割は大きいと考えております。
つきましては,下記の日程で本会の設立総会を開催する予定ですので,お忙しいところ恐縮に存じますが,ぜひ「日本教育オーディオロジー研究会」の設立にご賛同賜り,ご入会下さいますようお願い申し上げます。ご入会は設立総会会場にて承けたまわりますほか,総会後,決議にあわせてご入会のご案内書等を発送させていただきます。
期 日 2004年2月21日(土) 13:00〜14:00
会 場 足立区こども家庭支援センター
(東京都足立区東綾瀬1−5−17)
交通:地下鉄千代田線「綾瀬駅」東口下車 徒歩7分
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【目次】
聾学校教員免許状をとろう!
現場の教員が聾学校教員免許状を取得するには大きく下記の方法があります。
@内地留学で大学院に入学する→修士の学位と聾学校専修免許状が取得可能
A内地留学で特別専攻科に入学する→聾学校専修免許状が取得可能
B内地留学で国立特殊教育総合研究所で研修する→聾学校免許状が取得可能
C認定講習会を受け、規定単位を取得すると、聾学校二種または一種免許状が取得可能
D特殊教育教員資格認定試験に合格する→聾学校自立活動免許状が取得可能
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A「特別専攻科」の例として、愛媛大学の募集要項(抜粋)をお届けします。
平成16年度愛媛大学特殊教育特別専攻科
言語障害教育専攻 学生募集要項の抜粋
本文は抜粋ですので,応募にあたっては,必ず,早めに募集要項を請求して下さい。
本特殊教育特別専攻科言語障害教育専攻は,聴覚言語障害教育の充実に資するため,充実した特殊教育に関する専門教育を施し,これら特殊分野における教育を担当し得る教員の養成を目的とします。専攻科の修業年限は1年です。
小学校,中学校,高等学校又は幼稚園の教諭の普通免許状を有する者は,今まで聾免をまったく持っていなくとも,聴覚障害コースUで履修することで,聾0免状態から一年間で聾学校教諭専修免許状を取得できます(1年間で0免から専修免を取れるのは愛媛だけです)。
すでに聾学校教諭一種免許状を有する者は,聴覚障害コースTで履修することで,聾学校教諭専修免許状を取得できます(聾学校教諭二種免の場合は上記のUコースになります)。
聾学校教員を目指す4年生大学卒業生も数多く入学してきています。
現職の先生方の内留先の対象としてもお考え下さい。現職の先生が現職のままで研修を受けるためには,当該所属長の承認書と推薦書が必要です。受験をお考えの先生方は,お早めに所属長とご相談下さい。なお近年,給与のない1年間の自主研修制度もあります。
募集要項の請求は,自己のあて先を記入し,200円切手をはった返信用封筒(角形2号:33cm×24cm)を同封して,「特専募集要項請求」と明記の上,下記に申し込んでください。〒790-8577 松山市文京町3 愛媛大学教育学部学務係 TEL:089-927-9377
T.募集人員:15人(最近は合格者は定員に達さず,倍率は1倍を切っています)
U.出願資格:小学校,中学校,高等学校又は幼稚園の教諭の普通免許状を有する者,
および平成15年3月において取得見込みの者。
V.願書受付期間 2月5〜12日,入学選抜検査 2月26日,発表 3月8日
W.入学料 58,400円,授業料年間 266,400円,他に諸費 6,350円要。奨学金制度あり。
なお障害のある受験生は1月26日までに受験と修学に関する事前相談が必要です。
【目次】
活動報告
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細々と補聴器を送り続けています[HICAP] |
以前よりアジアの聴覚障害児に補聴器を無償で贈呈するNGOとして,HICAPというグループを作り補聴器を収集,修理,発送しております。その後,贈呈先国が広がり,過去にお送りした国は,スリランカ,タイ,バングラデシュ,ベトナム,パレスチナ,ボリビアになっています。しかし,最近は贈呈先からの連絡が途絶えがちで,また手渡しを原則とし,贈呈先で補聴器の調整等を受けられる場合にのみ贈るようにしているため,お送りする補聴器も少なくなっております。
先日,スリランカ,バンダラガマのライオンズクラブ障害者サービスセンター,オーディオロジー部より補聴器3台の要請があり,現地の大学生にお送り致しました。
受け取った学生の良聴耳の聴力は下の通りです。
また写真と礼状(省略)も届きました。
このような事業は細々であれ,継続していくことで,広がっていくものと思います。現在,受け取った後に補聴器の調整は誰がどのようにするのか,イヤモールドの製造はどうするのか,電池はどのように買うのかということが確認できる場合にお贈りしていますが,そのような条件が整うことは稀な場合もあり,問題は補聴器贈呈後のケアを含めた援助のあり方とも思っています。
さて,現地からの要望に応じて継続して補聴器をお贈りできるのは,最近はもっぱら中国補聴器センター様のご協力によるものになっています。昨年は箱形10台,耳かけ形19台,コード,電池等補修パーツも含めてご寄贈いただきました。現在,モンゴルの日本NGOから,現地の聴覚障害児支援の依頼を受けています。輸送ルート,モンゴルでの受け入れ状況(補聴器受け取り後に調整などの問題がクリアできるかどうか)を照会中です。準備が整えば,お贈りさせていただきたいと思っています。
補聴器を受け取る S.G.Bamunusinhaさん
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彼女の聴力
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【目次】
冊子紹介
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高等教育における障害のある学生へ学習支援 |
福岡教育大学ファカルティ・ディベロップメント研究報告書
教員養成大学としての教育のあり方(4)
第2分冊「高等教育における障害のある学生への学習支援」
近年,多くの聴覚障害児が大学で学ぶようになってきた。しかし,聴覚障害を始め様々な障害のある学生への学習支援が充実しているような状況ではない。本書は,大学間衛星放送ネットワーク[SCS]を使用して行ったアメリカでの障害のある大学での学習支援に関する報告,障害のある学生が在籍している大学から学習支援の実態報告が紹介されている。特にアメリカにおける障害のある学生に対する学習支援体制は,規模,制度,対象とする障害の種類など日本国内の状況とは大きな隔たりがあることが一目瞭然でわかる。
本書は福岡教育大学ファカルティ・ディベロップメント研究報告書の分冊である。一般の書店で入手できるものでも,一般に販売しているものでもない。特にご入用をご希望の場合は,福岡教育大学の太田富雄先生(メールアドレス:
tomiohta@fukuoka-edu.ac.jp)より分けていただくことが可能。郵便番号,住所,氏名をメールにて送信のこと。
【目次】
■ワイデックス株式会社の本社が移転
新住所
〒131-0034 東京都墨田区堤通1-19-9 リバーサイド隅田セントラルタワー7F
営業部/補聴器営業 TEL:03-5631-2853 FAX:03-5631-3023
■聴覚障害者用110番通報サイトが開設された(東京都内専用)
「警視庁110番サイト」アドレス http://mpd110.jp/
ここを開き、「接続」をクリックすることでつながるのでいたずらしないように。
【目次】
図書紹介
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魅力ある聴覚障害児教育を目指して
−ようこそ筑波大学附属聾学校中学部へ− |
聾学校において,中学部ほど日が当たらなかった学部はないのではないだろうか。幼稚部はもちろん,小学部の国語科指導,高等部での基礎学力の問題や進路の問題などが焦点になることが多く,中学部は話題になりにくかったように思う。
本書は聾学校中学部において,介護等体験などで参観に来る人たちに中学部をいかに紹介するかという第一章に始まり,第二章では「中学部の特徴」を挙げている。各教科における留意点はもちろんのこと,や特に土曜日に行われる「学習支援講座」の取り組みなどユニークな特徴を紹介している。第三章では,総合的な学習」として取り組んだ事例を紹介している。小学部段階の教科指導を中心とした「教えられる授業」から,中学部における交流教育や社会の人たちを招いて行った授業など「主体的に動機を重視した自ら学ぶ授業」への転換が明確に示されている。「聾学校の子どもは自ら学ぼうとしない」ということを良く耳にする。ある意味で少人数教育によってかゆいところに手が届く授業展開がなされ,隅の隅まで教えてくれる授業があることで結果として自ら学ぶ機会を奪っていることもあるのだろう。本書では中学部の,中学部だからこそできる,中学部が価値付けられる内容を紹介している。
発行元:聾教育研究会
1冊700円。
希望の書籍名、冊数、郵便番号、住所、氏名、TEL、FAXを記入してください(書店では注文不可能)。
下記送料が書籍代に加算されます。
1冊 300円、2冊 400円、 3冊 500円、4冊 600円、 5冊 700円
6冊 800円、7〜10冊 1,000円、 11冊以上 1,500円
郵便振替 00100-1-161140 加入者名:聾教育研究会出版部
注文先:
〒272-8560 千葉県市川市国府台2-2-1 筑波大学附属聾学校内聾教育研究会出版部
TEL / FAX : 047-372-2672
【目次】
冊子紹介
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トライアングル文庫9
「きこえない・きこえにくい子どもの豊かな学校生活」 |
通常の学校の中で学ぶ聴覚障害児が,聴覚障害児の側のみが努力し,必死についていこうとする,かつてのインテグレーションの姿を捨て,周囲の理解を得て,様々なサポートのもとで学んでいく保障を獲得できるようになってきた。本書は,難聴学級の先生方の執筆によるサポートの実態,子どもの実態から,中学校でのノートテーク,要約筆記,パソコン要約筆記の第一人者でもある太田晴康氏の執筆によるノートテークを実施する前の様々なこと,例えばノートテーカーの募集から,実際の運用に至る事務の役割分担に至るまで多くの実践的内容を含んでいる。
特に小学校・中学校の難聴学級の先生方にはお目通し願いたい一冊である。
≪もくじ≫
はじめに
第T章 これまでのきこえない・きこえにくい子どもたちへの支援
第U章 きこえない・きこえにくい子どもの学校生活
第V章 きこえない・きこえにくいことの理解のための授業
第W章 小学校における豊かな生活を考える
第X章 中学校における、ノートテイクを中心とする情報バリアフリー
第Y章 きこえない・きこえにくいことを理解する授業・教材・体験
「豊かな学校生活を考える会」編集
価格:1800円(送料実費別途)
申込先:聴覚障害児と共に歩む会・トライアングル(書店では注文不可能)
TEL&FAX:03-3203-9938
E-mail:aq2t-ueym@asahi-net.or.jp
【目次】
冊子紹介
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耳 の こ と で 悩 ま な い で !
中 途 失 聴 ・ 難 聴 者 の ガ イ ド ブ ッ ク |
「ろう」「ろう者」「きこえない人」というキーワードでは,多くの書籍が出て,社会の理解も進みつつある。しかし,「きこえにくい人」「難聴」ということには,まだまだ社会の関心も低い。特に中途失聴者は,手話以外のコミュニケーション方法を望む場合も多く,あるいは軽度の場合は,周囲がうるさい,距離が離れているという時だけに聞こえにくさが生じるので最も周囲に理解されにくい障害とも言えよう。本書は,そうした今まで紹介されてこなかった難聴者ゆえの様々な事項について,広く扱った最初の冊子といっても差し支えないだろう。実は聴覚障害者の大部分は,老人性難聴を含む軽〜中等度の中途失聴・難聴者である。そうした多くの,今まで孤独だった難聴者の手に本書が届くことを期待したい。
【目次】
第1章 聞こえなくなったかな?そのときあなたは? |
第2章 コミュニケーション手段の再獲得
第3章 機器の使い方
第4章 家族や周囲の関わり方
第5章 リハビリテーション
第6章 福祉制度
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第7章 ライフステージ
第8章 教育問題
第9章 仕事の問題
第10章 通信・放送のバリアフリー
第11章 バリアフリー・ユニバーサルデザイン
第12章 聴覚に障害を持つ人の人権確立
第13章 関連データ
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作成:全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
定価:700円
申込方法:下記事務局にTEL、FAX、メールで申込み(書店では注文不可能)
照会先・申込先:(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
【目次】
図書紹介
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はじめて学ぶヴィゴツキー心理学
そ の 生 き 方 と 子 ど も 研 究 |
子どもの発達と教育の関わりについて先駆的な業績を残したヴィゴツキー。彼は1896年にロシアで生まれ、1934年に他界したソビエト心理学者である。ソビエトというとなんだか暗いイメージがあるが、障害児教育、特に知的障害児に対する算数指導などでは伝統ある業績を残している。しかし、日本には翻訳本が出されることが少なく、ほとんど紹介されていない。
さて、ヴィゴツキーは有名な「子どもの想像力と創造」との創造の発達心理学ともいうべき名著を残し、今も書店に日本訳本が並んでいるが、翻訳本としての性格と、現在の発達心理学への適応、臨床的価値という点では十分ではなかった。
本書の著者、明神氏は北海道教育大学幼児教育講座の教官であり、広瀬氏は山梨大学の障害児教育講座に在籍している。広瀬氏の訳書には、「きこえない人ときこえる人」「サカリャンスキー先生と子どもたち」といったロシア語の訳書があり、どちらも聴覚障害児教育界に与えるもの多しとして「みみだより」で紹介した。
本書の長所は、日本の幼児の遊びなどの観察例の分析を通して、ヴィゴツキーの考えを紹介している点にある。とりわけ、両教官のゼミでのレポートを土台にまとめられているために、実にわかりやすく、一つ一つの事例からヴィゴツキーの心理学を学ぶことができる。
明神もと子編著、広瀬信雄他著 新読書社
1000円 ISBN:4-7880-4007-7
【目次】
第一部ヴィゴツキーに学ぷ
第1章 子どもの想像力
第2章 子どもの遊び
第3章 社会的存在としての子ども
第二部 ヴィゴツキーを知る
第4章 ヴィゴツキーの生涯
第5章 ヴィゴツキーの研究から
【目次】
研究会開催
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茨城聴覚障害教育研究会 第2回研究会のご案内 |
さて、このたび茨城聴覚障害教育研究会第2回研究会を下記の日程で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
1.日時:2004年1月31日(土)午後2時〜5時
2.会場:筑波大学 人間学系 会議室A101教室(茨城県つくば市天王台1−1−1)
3.内容:
1:30〜 受 付
2:00〜 開会式
2:15〜
「学校生活への参加保障を考える
−難聴学級担任と通常学級担任の立場から−」
つくば市立竹園東小学校 松本裕子先生(難聴学級担任)
冨島久美子先生(通常学級担任)
本教室では地元大学生の教育補助員を導入している。聴者学生はノートテイクや手話通訳で情報保障に努め、聾者学生は子どもたちのロールモデルとして親密に関わりをもっている。通常学級担任も難聴児と正面から向き合い、学校生活への参加保障ということを真剣に考えている。これらの実践を紹介することで今後の支援のあり方を考えていきたい。
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4:30〜 意見交換・諸連絡
5:00 閉会
4.参加資格:教職員
5.参加費:会員無料、非会員500円
会員対象は、茨城県内の幼稚園・小学校・中学校・高等学校・盲・聾・養護学校・保育所等の教職員。
6.申し込み:事前申し込みはしていません。当日会場にお越しください。
7.お問い合わせ:
茨城聴覚障害教育研究会 事務局(代表:中瀬 浩一)まで
勤務先:筑波技術短期大学 教育方法開発センター
Tel&Fax:029−858−9407
【目次】
冊子紹介
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新生児聴覚スクリーニング検査を考えるシンポジウム記録資料集 |
2003年5月18日に行われた「新生児聴覚スクリーニング検査を考えるシンポジウム」の報告書。以下の各講演の予稿および当日の講演録,シンポジウム討議の記録,資料で構成されている。
講演「新生児聴覚スクリーニングの意義と実際」
三科 潤(東京女子医大母子総合医療センター)
講演「臨床心理学からみた新生児聴覚スクリーニング検査」
河崎佳子(佛教大学教育学部)
講演「医療技術と生命倫理」
松原洋子(立命館大学院先端総合学術研究科)
発表「ひとつのコンテキストを理解するために」
大杉 豊(全日本ろうあ連盟)
発表「新生児期に聴覚障害の疑いを告げられた一人の親として」
橋倉あや子(稲城市聴覚障害児をもつ親の会)
発表「耳鼻科医の立場から」
田中美郷(田中美郷教育研究所)
予稿「早期発見・早期治療という医療概念はどこへ連れて行くのか」
上農正剛(九州保健福祉大学保健科学部)
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1冊1000円(送料別)
申込方法:@氏名,A送り先(郵便番号も),B連絡先(電話・FAX・メールアドレ ス),C必要冊数をお書きの上、下記にお申し込み下さい。
12月に行われた「京都シンポ」の記録集が三月中旬に発行予定です。ここには、秋田でのスクリーニングについてまとめた中澤先生の講演記録、三科先生からいただいたコロラドプログラムのビデオの邦訳全訳などが資料として掲載されます。予価1000円ということです。
【目次】
確かに日本に聴覚スクリーニングが導入された経緯を振り返れば,機器輸入が先行し教育的対応が後になってしまった部分もあるのかも知れない。でも私自身は,スクリーニングが始まる前から,聾学校や難聴幼児通園施設は,妊娠時に風疹にかかった母親からの申し出や耳介奇形を伴う子どもさんの場合に,0歳児からの教育相談を行い,対応の実績を積み重ねてきていると考えている。0歳時点での発見後の教育の方法については,地域差や学校間差はまだまだ大きいが,発見後の保護者への支援が積極的に行われ,必要なカウンセリングも実施され適切な対応がなされている。3年前にコロラドに行き,実際に拝見する機会に恵まれたが,例えば家庭に出向いての相談などはアメリカの広い国土ゆえの体制であり,せまい日本であれば一カ所に来ていただき,他の親子を見ることができる環境でのフォローの方が良いという考え方もある。日本には「日本型のフォロー体制」があれば良いと私は思う。
日本聴覚医学会において遺伝子診断についての発表がある場合には,必ずと言っていいほど,問題を指摘する質問がなされ,そこに倫理が議論される土壌があることを私自身は実感している。もちろん,医療の現場に問題なしとは言えないこともある。新生児スクリーニングの結果を説明する場で,「人工内耳があるから・・・」となだめられたということを耳にすることもある。しかし,そうした場合に,教育の場からそれ以前に何を発信してきたのだろうかと考え直しても良いのではないかと思う。0歳児で発見された子どもたちがどのように発達し,成長したかを発見した医師に報告し,見せてきたのだろうか。人工内耳の手術を受けた子どもたちの発達は人工内耳のリハビリの際に、医師たちは見ることができている。しかし結果として人工内耳を選択しなかった子どもがどのような言語的発達を遂げたかを見ることはできない。教育の世界にいる人間しか見ることができない人工内耳以外を選択した子どもたちの発達を,医療の世界にデータとして示してきたのだろうか。「わかっていない」「わかってもらえない」「入れてもらえない」と言う前に「いかにわかるように説明してきたか」「入れてもらえるようにいかに社会に発信してきたか」ということを考えても良いように思う。
障害に適切に対応できる方法があるのであれば,より早期に発見をするべきだと思っている。多くの聴覚障害児は聴覚障害に関してまったく知らない両親のもとに生まれる。だからこそ早期の教育的支援が必要だと思う。適切な援助技術を持つこと,それは「教育」側の問題であり,「教育」の充実こそが問題を解決すると思う。全国に張り巡らされている聾学校のネットワークと守備体制をベースに,さらに「教育」領域から耳鼻科領域,産婦人科領域,新生児領域に発信と連携を進める必要があると考えている。
【目次】
ニュースその後
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日本手話の使用等に関する人権救済申立,その後 |
ろう学校において日本手話を使用すること,日本手話の研修を行うこと,聾学校教員養成課程で日本手話に関する科目を設置すること等の内容で,ろう児とその親たちが,2003年5月に日本弁護士連合会宛て人権救済申し立てを行ったを行ったことは,新聞記事の転載という形でお知らせしました「みみだより462号 13ページ」関連記事「みみだより464号 15ページ」。
その後,様々な動きが続いています。その一部をご紹介します。
1.全日本ろうあ連盟の見解発表
全日本ろうあ連盟は2003年10月17日に,「日本手話」と「日本語対応手話」を二分することの可否/手話と直接の関わりを持たない日弁連という組織の判断を求める発想等々を記した[「人権救済申立」に対する全日本ろうあ連盟の見解]を発表しています。
2.全日本ろうあ連盟の「人権救済申立に対する見解」賛同署名の開始
人権救済申立を報じた新聞記事が多い一方で,上記の全日本ろうあ連盟の見解を報じたメディアはほとんどなく,様々な意見があることが日弁連に伝わらないのではないかとの危惧も感じていた。そう思っていたときに,京都で[全日本ろうあ連盟の「見解」を支持する会]が組織され,賛同署名を集めることを耳にした。同会が全日本ろうあ連盟の「見解」を支持する理由は下記の通り(概略)。
(1)手話を二分することは,結果として聴覚障害者を分裂させるおそれがある。
(2)勧告が出されると,「口話」を希望する人々に対する「人権侵害」の可能性が強まること。
(3)「日本手話」さえ導入すれば,聴覚障害に起因する諸問題は解決されるというものではないこと。日本手話を第一言語として獲得することが,書記日本語や高い学力の獲得につながるという「保証」が,現時点では少ないこと。
(4)社会生活を営むうえで,聴者とのコミュニケーションは必須であるが,日本語文法体系と異なり声を発しない日本手話のモノリンガルになった時の不利益は,現時点ではきわめて大きいものがあること。
署名用紙は下記でダウンロードできます。
【目次】
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