補聴に関する国際フォーラム
International Forum 2002
講演「聴覚障害乳幼児のマネージメントにおいて考慮すべきこと」要旨
Dr.Cheryl DeConde Johnson(米国コロラド州教育省)
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1.早期発見・早期教育がもたらす影響
新しい世代の聴覚障害児は,1)出生時または出生直後に発見され,2)補聴器・人工内耳を早期に装用でき,3)教育オーディオロジスト,早期教育担当者から適切な支援・指導を受けられるようになってきている。この結果,言語発達などの発達指標は障害を持たない子どもの群と同様となりつつある。
Yoshinaga-Itano, Sedey, Coulter, Mehl (1998)の聴覚障害児31〜36ヶ月児の平均言語発達指数を発見時期によって比較しているが,ここでも早期発見の有用性が示されている。
ジョニーは,新生児スクリーニングにより出生直後に聴覚障害が発見され,両側高度感音性難聴との診断を受けた。その後,生後3ヶ月から補聴器装用と早期教育を開始した。整った家族支援体制の下で養育され,3歳時での評価では,言語理解・言語表出のスキルは年齢相応であり,誤りがあるものの注意して聴けば聴き取れる発音を獲得し,認知発達などの発達指標は正常という結果を得た。補聴器を常時両耳装用し,家庭ではFMシステムを利用している。視覚的なヒントを補うことで相手の発話をほぼ理解できる聴取力を身に付けている。
まず,コロラド州新生児聴力スクリーニングプロジェクトの結果をご紹介したい。[& Thomson, Pediatrics 109(1),2002. ]
「聴覚障害の発見」に対する両親のニーズに関する研究がなされている[Luterman & Kurtzer-White(2000)]。これは,聴覚障害児を持つ両親に対して,聴覚障害発見当時を振り返りながら,答えてもらう5問題で構成されている。
質問1では,「あなたの赤ちゃんが生まれたときに聞こえていないと言うことを知りたかったですか?」と問うてみた。回答は「はい」が83%,「いいえ」が17%であった。「はい」の主な理由は「教育が早く始められたから」であり,「いいえ」の主な理由は「親子関係の成立に影響を与えたかもしれない」という回答であった。
質問2は「出産直後での指摘ではないとすると、いつが望まれた?」という問であった。この問に対しては,「6カ月から1歳までの間」という回答が最も多かった。
質問3「子どもの聴覚障害を両親に説明するのは、どのような方法が最も良いと思いましたか?」。この問には,82%が「情熱があり事情が良くわかる正直なオーディオジストが行うべきだ」と答えた。
質問4「子どもの聴覚障害を誰が両親に説明すべきだと思いますか?」。質問3と同じような質問であるので,回答はやはり「オーディオロジストまたはオーディオロジストを含むチーム」という回答が最も多かった。
質問5「あなたは子どもの聴覚障害の発見がされたことで、何がもっとも大きな援助だと思いましたか?」。この回答には,61%が「聴覚障害児を持つ他の親と接触をもつこと」と答え,46%は「特に教育と方法論に関する偏見のない情報の提供」,26%は「気持ちのこもったサポートや援助」と答えた。
研究のまとめとして,Luterman & Kurtzer-Whiteは,1)聴覚障害児を持つ両親同士の連携・連帯が必要であること,2)様々な情報を与えること,3)複雑な情報を処理するための十分な時間を与えること,4)技術を持った共感する心を持ったオーディオロジストが必要であるとくくっている。
専門家に対するニーズとして,1)カウンセリングの技能を磨くこと,2)聾を専門とする早期教育の専門家を確保すること,3)家族との連携を維持するためのオーディオロジカルな諸設備を整え,情報提供をすること,4)個人的な偏見のない方法を提示することが望まれるとしている。
乳幼児スクリーニングを実施することによって生じる「早期発見・早期教育を受けた子どもたち」に対して,現在の教育プログラムや教師は、適切なサービスを提供することができているであろうか?
2.乳幼児に対する教育オーディオロジストの役割
全新生児聴覚スクリーニングプログラム(UNHS:Universal Newborn Hearing Screening)に対して教育オーディオロジストはどのような関与をすべきなのであろうか。
まず「発見」過程に対しては,UNHSセンターとの連携のもと,機器操作トレーニングに参加し,スクリーニングの現場に立ち会い,スクリーニング結果の再検討を行ったり,データの追跡や管理の補助をし,精密検査前の再スクリーニングに立ち会い,スクリーニングの流れについて家族に説明することが求められる。
さらに,スクリーニングおよびその後のフォローアップの流れについて家族に説明し,必要に応じて他の専門家に紹介したり,聴覚障害、ハビリテーション、教育に関する地域の情報を家族に提供する責任を負う。
次に
「評価」過程では,ABRや,TEOAE/DPOAE(耳音響放射)や,ティンパノメトリ、耳小骨筋反射,聴性行動反応観察を行い,報告書を作成する責任を負う。近年は,Auditory dys-synchrony/neuropathyに対する対処も行っている。(Auditory dys-synchrony/neuropathyについては,
http://www.boystown.orgを参照のこと)
「医学的評価や他のサービスへの紹介」として,耳鼻科医に対して,補聴器装用について医学的な問題の有無について照会し,必要に応じて,遺伝相談,眼科医等にも子どもを紹介する。次に早期教育のサービス機関や経済的なサポートを提供する機関,親の会を照会する。
教育オーディオロジストの役割として,「補聴器装用指導」が求められる。「米国聴覚学会小児補聴プロトコル」(AAA Pediatric Amplification Protocol ; 2002)では,補聴器適応についてのガイドラインを新たに発表した。これによると,補聴器適用は「20dB以上の両側難聴」に行うこととし,特例として,一側性難聴/Auditory dys-synchrony/neuropathy/非常に軽度な難聴などをあげている。このプロトコルでは補聴器の初期選択に関する考慮点について述べており,以下の選択を考慮すべきとしている。
1)気導補聴器か骨導補聴器か,
2)補聴器の形(耳かけ形、耳あな形、カナル形、CIC),
3)装用形態(両耳か片耳装用か:通常は両耳装用が奨められる),
4)特殊な装用方式(CROS, BICROS, 骨導CROSとか埋め込み式骨導補聴器(「バッハ)」),
5)アンプやレシーバのタイプ(通常はクラスCかクラスDアンプを推奨している),
6)特性メモリ機能の有無(車中など騒音が予想される場では騒音抑制を考えた周波数特性に切り替えるなどの使用法ができるメモリ機能付きを推奨している),
7)イヤモールドのスタイル,
8)音道の形態(フックやチューブ),
9)マイクロフォン(指向性か無指向性かデュアルマイクロフォンか:騒音下における指向性マイクの有効性は明らかになっている),
10)湿気対策の有無,
11)デジタルプログラマブルであるかどうか(通常は周波数特性や入出力特性の調整幅が広いデジタルプログラマブルの器種を推奨している),
12)保証や保険制度(なくした場合の対応策),
13)電話の使用の有無,
14)FM、赤外線などの補助機器の使用,
15)音量調整器の必要性,
16)補聴器がはずれにくくする工夫(ハギーエイド・オトクリップ)がとれるかどうか。
そして,「小児に対する補聴器として必要な機能」として下記をあげている。1)歪みが少ない回路であること,2)不快な音が入らないようにするためにコンプレッションによる最大出力制限機能があること,3)入出力特性を可変できる機能があること,4)周波数特性や入出力特性の調整幅が広いこと。
今後,自動ハウリングコントロール機能や,多チャンネル処理,低レベルの雑音を抑えるエクスパンション増幅機能,様々なコンプレッション方式などについても使用を考えていくことが求められよう。最新の技術として,背景雑音の抑制機能や音声知覚の向上を目的とした新しい処理方式については、効果に関する十分なデータが得られていない。
子どもの「補聴器のフィッティング」にあたっては,補聴器装用によって,どこまで聴取可能となるかを考えて行っていくことになる。そのために,とりあえず,ゲインや出力の目標値を算出する仮選択法を参考にしながら,カプラ測定によって仮調整を行う。この際,様々な入力レベルについて歪みが少ないことを確認する。さらに,年齢に応じた実耳カプラ特性差(RECD)を参考に,不快レベルを十分に考慮する。
次に「調整の確認」として,プローブマイクロフォンを用いた実耳補聴器装用時特性(REAR)を測定し,閾値および不快レベルをSPLで表した値と、実耳装用時特性とを比較し、装用閾値を想定することを行っている。プローブマイクによる測定ができない場合、該当年齢の実耳カプラ特性差(RECD)の平均値を用して補聴効果を予想している。
インサーションゲイン(挿入利得)を目標値として設定する方法は,その目標値自体が成人のREUR(実耳開耳特性)の平均から考えられたものであったり,インサーションゲイン測定時の呈示音が音声を反映しないため、音声入力時にコンプレッションが常に作動するような回路では特性が異なることがあり効果予測を誤る場合があることが問題となる。
一方,音場での装用閾値測定の場合は,子どもが長時間、検査に協力する必要があり,周波数分解能が低い=検査周波数が限られておりピークやディップを見逃す危険性があること,検査信頼度が低い場合が少なくないこと,紛らわしい結果がでることがあるなどの問題がある。
つまり,補聴器調整の確認方法は唯一つの方法があるというわけではない。
補聴器の使用にとって,「補聴器装用指導」が欠かせない。補聴器装用指導の場面には,家族、養育者、子どもに加え、早期教育担当者、聾教育担当者にも参加してもらうことが必要である。指導は,実際にやってみる=デモンストレーション、話し合い、情報を文書化したもの、ビデオなど様々なモードで行うことが必要である。家族および子どもの課題達成能力によって、複数回の指導を行っている。
主な「補聴器装用指導の内容」は下記の通り。補聴器の日常的なケア/様々な活用例の紹介/装着方法/取り外し方法/夜間の保管方法/電池の挿入や取り出し方/電池の寿命や保管方法と処分方法/基本的な故障時の対応/電話とのカップリング/補聴援助機器との接続法と使用方法。
次に補聴が成されているか,補聴の「妥当性の評価」を行う必要がある。ここでは,聴取能について補聴機器の装用効果と限界を家族に示すこと,子どもが最適な音声入力を得ているか継続的に確認すること,装用時の語音聴取能検査を行うことが求められよう。
現在,補聴の状態について機能的に評価するためのツールとして,「機能的聴覚活用指標(FAPI)」を提案している。
補聴器装用後は,「フォローアップ」が必要である。まず,定期的なフォローアップ評価は,最初の2年間は3ヶ月に一回、その後は4〜6ヶ月に一回必要であろう。フォロ−アップの内容としては,聴性行動反応聴力検査/コミュニケーション能力の評価/補聴器の周波数特性検査/実際聞いてみて確かめる(リスニング・チェック)/イヤモールドのチェック/プローブ・マイクロフォンによる挿入利得の測定/補聴状態の機能的評価が含まれる。さらに専門家チームによる聴覚(リ)ハビリテーションの状況を評価する。学齢児になれば,学業成績の経過も評価の対象となるであろう。
早期教育の実施にあたっては,「自然な環境」という点で評価することが望まれよう。早期教育サービスは、家庭や地域など、障害のない子ども達も参加するような『自然な環境』で行われるべきであると考えている。同じ様なコミュニケーション・ニーズをもつピア(仲間)と出会う機会が減ること,親の選択を否定する可能性があると言った理由で,病院やクリニックが早期教育サービスを提供することには賛成できない。
補聴器と並んで「人工内耳」の選択も考える。一般的には,18カ月以上の最重度感音性難聴であること(特殊な例として,さらに早期に人工内耳手術を行う場合もある),聴覚スキルの発達が見られない、または一定のレベルで停まっていること,医学的禁忌がないこと,家族および(可能なら)子どもが装用に意欲的で、適切な期待感をもっていること,聴覚スキルの発達に重点をおく教育プログラムに参加していることが適応基準としてあげられている。
しかし,人工内耳の適応であるかどうかは個々のケースごとに検討されるものであり、保有(残存)聴力/子どもの年齢/失聴期間/術後に適切な教育を受けられるかどうか/コミュニケーション方法/親の意欲などについては,各人工内耳センターで独自の適応基準を設けている場合が多い。
人工内耳については,別紙資料もあわせて参考にして欲しい。
補聴の成否は,その後の「ハビリテーション」にかかっている。その内容には,補聴器装用指導も含まれるし,当然,聴覚・言語・発話指導が含まれる。ハビリテーションにあたっては,子どもと家族の目標をどこに設定するかを考えること/コミュニケーションの方法を何にするかを考えること/指導と家族へのサポートを行う専門家を誰にするかを考えること/同じ体験を持つグループ(ピアグループ)と接触させること/その後の経過を評価することが求められよう。
「ハビリテーションの目標設定」にあたっては,意見ではなく、評価結果に基づいて設定すること,家族が子どもが持っている価値観や考えを重視すること,頻繁に見直しを行うこと(米国では6ヶ月ごとに見直しをする),家族が様々な情報源に触れられるよう配慮すること(特に他の聴覚障害児を持つ親や成人聾者と接すること)が求められよう。
「コミュニケーション方法」も教育オーディオロジストが指導する項目である。コミュニケーション方法について説明する際は,その選択肢について家族に偏りのない情報を提供することが最も重要である。専門家は、家族にインフォームド,つまり十分に説明を行い,その情報に基づき,子どもと家族自身が選択できる環境を用意することが必要である。その上で,各児の「コミュニケーション・プラン」を作成する。「コミュニケーション・プラン」は,一旦決定した後でも、いつでも変更することができるものと,とらえている。コミュニケーション方法の選択は継続的なプロセスであり、柔軟で変更が可能なものである。このことは,早期発見は,コミュニケーション方法の選択にとっても好都合であることがわかる,つまり、早期発見によって,家族は様々なコミュニケーション方法を試す時間が得られるのだ。「コミュニケーション・プラン」の説明をする際には,下記の図を用いることが多い。
「コミュニケーション方法の選択」にあたって,4つの名句を紹介したい。
1)「大事なのはコミュニケーションをすることであって、その方法ではない」
出典:Families for Hands & Voices National [www.handsandvoices.org]
2)「いくら子どもに話し方を教えたって、伝えたいと思う気持ちを育てなければ何の意味があるだろう?」
3)「聞こえないというのは、聴覚の問題ではなく、コミュニケーションの問題なのだ」
4)「どのコミュニケーション・モードを選ぶかより、そのモードが子どもに合っているかどうかの方が重要である」
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「コミュニケーションしたいという欲求・権利は、人間の権利の中でも最も基本的なものである。これを否定することは人間の精神を傷つけることである。そして、コミュニケーションを育てるということは、人生のあらゆる可能性を明らかにすることなのだ」
米国聾教育プロジェクト(2000)
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教育オーディオロジストは,「親へのカウンセリングと支援」も重要な使命を持つ。親のニーズを確認し、家族が適切なサービス提供者を見つけられるよう援助すること。親の会の設立を援助すること。コミュニケーション、補聴機器、教育などの選択枝について、偏りのない情報を提供すること。家族が選択したコミュニケーション、補聴機器、教育について地域で適切サービスが受けられるところを紹介するといった作業をこなすべきである。
基本的には,早期教育のプロセスを進めていくのは「親」であると考えている。早期教育は、専門家と親との信頼関係の上に成り立っていく。信頼とは、親、親の価値観、親の文化を尊重するという基本前提の上に成り立つものである
「家族との連携」を保つためには,いくつかの配慮が必要である。専門家は常に前向きな姿勢を持ちつづけること,お互いに尊重しあうことが信頼を気付くこと。そのためには,連携、役割、責任について相互に期待していることを明らかにしておくことが役立つかもしれない。
家族と「効果的なコミュニケーション」をするためには,相手は何を言わんとしているのか?をじっくりと聴くこと。自分が答えられない,わからない時は,「ごめんなさい,それはわからないの」と認めること。情報は文書化して渡すこと。はっきりと、オープンに、正直に話すこと。時に電話でフォローすることも。情報として,家族の識字能力,診断されたばかりの家族なのか、家族は診断を受け入れているのか,文化的な問題や家族構成なども知っておくことが望まれる。
接するときは,自分の持っている偏見はとりあえず考えないこと。家族に時間を与えること。家族が事態に対処する際、自信をもって適切に処理していけるよう援助、助言するという立場を取ることなども注意して欲しい。
最後に・・・,
「聾とは、ただ聞こえないという状況にすぎません。適切な教育がなされなかった時にこそ、障害となるのです。」 (Dr. Christine Yoshinaga-Itano;2001)
「教育とは器に水を満たしていくということよりも、燃えようとする火種に息を吹きかける作業なのです。」(Heraclitus)
参考資料
1)Pediatric Amplification Protocol (2002); American Academy of Audiology
2)Standards for Early Intervention Service Providers: Infants/Toddlers who are Deaf/Hard of Hearing and their Families (2001); National Early Intervention Coalition
3)Natural Environments (1999); Western States Early Intervention Administrators
Coalition for Young Children with Sensory Disabilities
4)National Agenda for Deaf Education Reform (2001); The Colorado Infant Hearing Advisory Committee Guidelines for Infant Hearing Screening, Audiologic Assessment, and Intervention. http://www.cdphe.state.co.us/ps/mch/hcp/Completecihac.PDF
5)The Colorado Resource Guide. http://handsandvoices.org/resource_guide/01_intro. html
6)スクリーニングについて,発見後のことなどは,下記のホームページが役立つので,くわえて参考にして欲しい。
私の研究を支えてきてくれたマリオンダウンズセンターのチームに感謝したい。特に研究のインスピレーションを与え続けてくれたマリオンダウンズ先生にお礼を申し上げて,講演を終えたい。
The Marion Downs National Center Team - Colorado
・Dr. Al Mehl, Pediatrician
・Dr. Christine Yoshinaga-Itano, Research
・Vickie Thomson, Screening
・Dr.Sandy Gabbard, Assessment
・Arlene Stredler Brown, Intervention
・Dr. Cheryl DeConde Johnson, Education
・Dr. Marion Downs, Inspriration
【目次】
資料
次の情報は人工内耳に関する簡単な概要を示しています。さらに詳細な情報を得るためには,コロラド人工内耳協会のメンバーに連絡を取ってください。スペイン語やその他の言語の資料もあります。
装置に関して: 人工内耳は,耳が聞こえない人に有用な音声情報を提供できるよう設計された電子装置です。装置は内部及び外部の装置から構成されます。内部装置は手術により皮下に完全に埋め込まれます。外部装置は携帯型あるいは耳かけ形スピーチプロセッサから構成されています。送信コイルは内部と外部の磁石を使って決まった位置に装着します。
人工統計データ: 人工内耳に関する研究は30年以上の間行われてきました。ニュークレアス24チャンネル人工内耳システムとクラリオンの多コード化法の人工内耳システムは,重度(91dB以上)の感音性難聴を伴った小児(18カ月以上)と,重度(91dB以上)および高度(71〜90dB)の感音性難聴を伴った成人に対しFDAによって承認された装置です。現在では言語習得前及び言語習得中に聾となった成人も人工内耳を受けています。
新しい人工内耳システムとその改良品について,研究開発,及び合衆国食品衛生局(FDA)を通した臨床試験が進行中です。アドバンスドバイオニクス社とコクレア社の両社は新しく設計した電極について現在臨床試験中を行っています。そしてメドエル社はコンビ40の前臨床試験を行っています。
世界中で3万人以上の人々が人工内耳を受けています。そのうち小児は15,000人以上です。ほぼ18カ月ぐらいの年齢の幼児が人工内耳を受けており,さらに傾向として手術時期は12カ月に近づいています。人工内耳は40国以上の国で,そして世界中で550の病院において実施されています。合衆国には230以上の認定された人工内耳実施施設があります。
小児の人工内耳手順: 小児が人工内耳実施施設に送られた後,人工内耳の適用となるかどうかの評価が始まります。この過程でオーディオロジスト,語音・言語の病理学者,術医(耳鼻科医)と,時には聾学校の教師,心理学者,あるいは職業セラピストによって評価が行われます。適用の評価の間,地元のサービス機関との調整が不可欠です。もし小児が人工内耳の適用であると決定されたなら,手術が予定されるでしょう。術後3〜4週間の治癒期間の後,最初の刺激を出す時に外部装置が設定されます。人工内耳手順の中での最も重要な要素は,両親,教育者,セラピスト,人工内耳実施施設の間の密接な連携によるハビリテーションを実行していくことです。
適用となるための小児の基準: 次のことが小児における人工内耳の一般的な基準です:
重度の感音性難聴
小児は少なくとも18カ月の月齢になっている
聴能の発達がない,あるいは伸びない
医学的な禁忌がない
家族と小児(可能ならば)の高い動機づけと適切な期待
聴能の発達を強調する教育プログラムが受けられること
適用の評価はそれぞれの小児で個々に取り扱わなくてなならないため,病院は小児の保有(残存)聴力,小児の年齢,失聴期間の長さ,適切な教育を受けられるかどうか,コミュニケーション手段,両親への成功の約束など,特定の基準を考慮する場合が多いでしょう。
小児への人工内耳の使用に関しては,聾団体の中で論争があります。両親は,小児にとって選択が可能であることを知ることができるように,人工内耳に関する問題を徹底的に調査して理解していただきたいと思います。人工内耳は小児難聴のために広く認められた医学的治療であって,聾児の両親のために利用可能な多くの選択肢のうちの1つです。
結果: 両親と専門家は,人工内耳によって受ける効果には大きな差があることを知るべきです。コミュニケーションのために人工内耳を使う小児の能力は,以下のようないろいろな要因に依存しているように思われます:
1日の間に装置を使う時間
日常生活の中での音を意味づけられる程度
受けることができるハビリテーションサービスの質
親の関与と適切な期待
聴神経の残存の程度
失聴期間
インプラントを受けた年齢
多数の研究において人工内耳を使っている小児の結果を調査しました。これらの調査結果は以下のようなものです:
発語明瞭度と語音認知度の有意な増加
言語理解,及び言語表出の有意で継続的な増加
5〜7歳より前で人工内耳をした小児の方が良い成績を得る傾向があった
話しことばを学ぶ前や学んでいる途中(言語習得前失聴,言語習得中失聴)に聴力を失った小児は,早い時期に人工内耳を受けた場合,話しことばを習得した後で聴力を失った小児と同じぐらいうまくいく可能性が高い。
人工内耳の危険性と術後の注意: 大きな問題は報告されませんでした。人工内耳手術の危険性は,一般的な麻酔を必要とするどんな内耳手術でも起こり得る基本的な危険性と同じです。頭をぶったり強く打ったりすること,あるいは例えば運動場で遊んだりするときにかぶるプラスチックのヘルメットで起こり得る静電気放電から人工内耳を守ることが内部の装置の故障を最小に抑えることになります。MRIなど特定の医学的治療が多くの人工内耳装置で禁忌とされます。術後にスポーツやその他の運動をしたい場合は,術医からアドバイスを受けてからにしましょう。
費用: 他の精巧な医学的装置と同様,人工内耳は高価です。しかし全てあるいは部分的な経費が多くの私的な保険会社,国民医療保険制度やメディケアによってカバーされます。人工内耳チームは,家族が助成の割合と可能な資金源を決めることについても相談に乗ります。
コロラド人工内耳実施施設
Colorado Hearing and Balance Clinic
Dr. Cameron Shaw
2125 E. LaSalle St., Suite 201
Colorado Springs, CO 80909
719-442-6984
Children's Hospital
Audiology Department
1056 E. 19th Ave
Denver, CO 80237
303-861-6800
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Rocky Mountain Cochlear Implant Center
Denver Ear Associates
799 E. Hamden, Suite 510
Englewood, CO 80110
303-788-7838
University Hospital Audiology and
Otolaryngology Clinic
360 S. Garfield, Suite 400
Denver, CO 80209
303-372-3190
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【目次】
人工内耳と補聴援助機器ガイドライン
(コロラド人工内耳協会)
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なぜ補聴援助システム(ALD)を使うのでしょうか?
補聴援助システムを使うことによって,ごく普通の教室のように聞き取りが困難な状態で聞こえと語音理解が改善されます。座席を優先的にするだけは適切ではありません。補聴援助システムの目的の1つは,教師の声を直接児童生徒のところに持って来ることです。もう1つの目的は,教師の声を聞こうとする児童生徒の聞き取りを妨害する雑音を減らし,一方では児童生徒自身の声や同級生の声を聞くことも可能にすることです。
・ 補聴援助システムは教師の声を強調し,それによって周囲雑音を減らします。
・ 音声は部屋を伝わってくると,その信号の大きさが減少します。補聴援助システムは,教師からわずか15cmのところに立っているかのように教師の声を送り込むことが可能です。
・ 補聴援助システムは,教室に一般的に見られる貧弱な音響効果による反響の効果を最小に抑えることができます。
補聴援助システムシステムはどのように作動しますか?
人工内耳に使われる補聴援助システムシステムには,主にFMと赤外線の2つの方式があります。
1.FMは聞き手の受信器に話し手の声を送るのにFM電波を使います。
2.赤外線装置は受信器に話し手の声を送るのに赤外線を使います。
両方のシステムとも,話し手/教師はFMあるいは赤外線の送信機に接続したマイクロホンを着用します。聞き手/児童生徒は受信器を身につけますが,受信器の信号はパッチコードあるいはケーブルを使って人工内耳スピーチプロセッサの中に直接伝達されます。あるいは,受信器を机の上に置かれたスピーカ,あるいは教室の周りに置かれた多数のスピーカの前に置くことで音場増幅集団補聴器として使用できます。
どのように補聴援助システムを選択し,設置しますか?
教師,教育オーディオロジスト,人工内耳センターの間には強い協力体制が必要です。すべての専門家は,聞き取り環境の質を最大限に向上させるために協力すべきです。すなわち,補聴援助システムの必要性を決定し,適切な補聴援助システムを選択すること,そして次に補聴援助システムを使用したときと使用しないときの児童生徒の成績に関して定期的なフィードバックを共有すると同時に,補聴援助システムを教室に取り入れること等です。
補聴援助システムを選択する際に考慮すべきこと:
1.児童生徒は,補聴援助システムを導入する前,少なくとも3〜6カ月間前に人工内耳を使用しているべきです。これは児童生徒と両親がプロセッサを使う方法を学んだり,人工内耳のみを使用したときの聞こえの状態を知っておく時間となるでしょう。
2.補聴援助システムを選択したとき,特にもし教師が容易に補聴援助システムの信号をモニタすることができないなら,自発的な自己表出技能を行える児童生徒の能力が必要となります。児童生徒が何を聞いているかに関して,話し言葉や手話言語で十分に訴えることができる技能がなければなりません。児童生徒は教師に対して,自発的に,補聴援助システムからの信号が切れたり,異常であることを訴えてくるようにならなければなりません。
3.装置の毎日の聞き取りのチェックや,問題が起きたときの対処法を,児童生徒が行うのをけたりするべきです。さらに,教育オーディオロジストは教室で,最適な成績を確実にするために補聴援助システムを使ったときと使わないときによる,機能的な聴覚評価を定期的に行うべきです。
4.補聴援助システムは,それが有益であると決定された状態でのみ使われるべきです。漫然と使用しているだけでは,標準的な聞き取り状態でさまざまな音をどのように処理するかを学ぶ児童生徒の能力をかえって抑制することになってしまうでしょう。
補聴援助システムの使用における問題点は何でしょうか,またどのように解決すべきでしょうか?
補聴援助システムの使用には大きな効果がありますが,システムの有効性を最大にするために考慮すべき点があります。
1.隣接する教室で使っているFMシステムとの間に混信が起きることがあります。その結果,児童生徒は他の教室の教師の声を聞くということになってしまいます。
解決法:適切な周波数を選択し,システムを注文する責任者とよく話し合っておかなくてはなりません。送信機と受信器で同じ周波数を使うこと,自教室で使う周波数と隣接する教室で使う周波数とは異なっていることが重要です。
2.人工内耳のヘッドピースは,FMシステムが使う信号に類似している無線信号によって人内耳の内部装置に音声を送ります。もし送信コイルがFMシステムの無線信号を拾うと,静的雑音やホワイトノイズとして聞こえてしまうような干渉を起こすことがあります。
解決法:干渉を減らすために,FM受信器とスピーチプロセッサケーブルは完全に切り離す必要があります。
3.補聴援助システムシステムの電気的出力は,インプラントが受ける信号より大きいため,結果として語音信号が歪んでしまう可能性があります。新しいシステムあるいは新しいケーブルを使用する際にはこの問題に注意しなくてはなりません。
解決法:適切なケーブルが使われていることを確認するために,教育オーディオロジストあるいは人工内耳オーディオロジストに相談してください。それぞれの補聴援助システムシステムとを接続する特定のケーブルがあり,補聴援助システムシステムと人工内耳の間のインピーダンスと周波数応答は合致していなくてはなりません。また,補聴援助システムシステムにある音質調整と最大出力調整の効果と調整の方法について知っておかねばなりません。
4.環境によっては補聴援助システムの信号の減少,あるいは混信を起こす可能性があります。
解決法:1)蛍光灯が雑音を引き起こす可能性があるため,代わりの座席位置を探すべきです(FMのみ)。2)明るい光が信号伝達を妨害する可能性があるため,昼間の最も明るい時間には日よけを部分的に使用すべきです(赤外線のみ)。3)赤外線の信号の途中に物体があると信号伝達を妨害する可能性があるため,送信機と受信器の間は明確な伝達路が確保されていなければなりません(赤外線のみ)。4)全ての場合において壁カバーと床敷きが反響を減らすのに役立つでしょう。
補聴援助システムの確認はどのようにして確認できますか?
定期的に装置と成績を確認し,必要に応じて問題を処理してください。毎朝,最初に人工内耳だけで,それから補聴援助システムシステムを接続して聴覚だけの条件で聞き取りを行い,それぞれの機能を確認します。聞き取りは,両方とも教師から児童生徒への標準的な距離で行います。補聴援助システムシステムを使ったとき,人工内耳のみの時と比べ,聞き取りの結果が下がるはずはありませんので,補聴援助システムの評価・確認を行うことができます。
参考:人工内耳とFMシステムの接続
コクレア社 |
アドバンスド バイオニクス社 |
1.FMシステムに合った正しいFMケーブルであることを確認してください。
2.FM送信機が作動している間に,受信器をイヤホーンで聞くことによって,FMシステムの正常動作を確認してください。
3.スピーチプロセッサの感度を0に,そしてFM受信器を最小設定に設定し,両方とも電源を切ってください。
4.FM番号が付いたFMケーブルコネクタをFM受信器の音声出力,あるいはヘッドホンソケットに挿入してください。
5.スピーチプロセッサの外部入力ソケットにコクレアマークが付いたコネクタを差し込んでください。
6.スピーチプロセッサ,FM送信機とFM受信器の順に電源を入れてください。
7.使用者にとって快適なレベルにFMシステムの音量を調整してください(一度決めた値はオーディオロジストとの相談なしに変更しないこと)。
8.FM信号と環境音のミキシングがうまくいくようにスピーチプロセッサの感度を調整してください。
a.FM信号のみを受信するためには,感度をスプリントでは0に,エスプリあるいはエスプリ22では1.5以下に設定します。
b.FMと環境音を入力するためには,感度設定を上げてください(エスプリあるいはエスプリ22では少なくとも2に設定)
c.FM信号を大きくし,周囲雑音を減らすために感度を標準的な使用環境より低くしておいてください。
9.以前のプロセッサ(MSPおよびシリアルナッバーが34xxx未満のスペクトラ)では,ヘッドセットマイクロホンは作動しないようになっています。
a.感度を最適に設定し,FM音量を調整してください。
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1.受信機と自分の機種のプロセッサを接続するための正規の接続ケーブルであることを確かめてください。
2.送信機と受信機の両方の電池が充電されていることを確かめて下さい。
3.プラチナサウンドプロセッサ,または耳かけ形プラチナ/耳かけ形CUプロセッサを使用している場合には,自分のプロセッサのオーディオミキシング比が適当な配分に設定されているか,オーディオロジストに確認してください。(訳者注:プラチナシリーズ以降のスピーチプロセッサは,外部入力とマイクロフォン入力比を何通りかに設定できます。50/50とか,30/70とか。それ以前のスピーチプロセッサでは,外部入力につなぐと自動的にマイク入力は切れます)
4.受信器の設定をチェックしてください。受信器の中にはプラグをソケットに入れたときに,FM送信機に話したことを環境音の中から聞くようにFM/マイクが設定されているものもあります。これは多くのSシリーズ/1.2 使用者には便利な機能でしょう。
5.ケーブルは,先に受信器に次にプロセッサに接続してください。プロセッサと送信機は,それぞれ身体の反対側に着用してください。
6.プロセッサの電源を入れた後,送信機の電源を確実に入れてから話をしてください。もし児童が「報告」を行うのに十分な年齢であるなら,最適なレベルに音量を調整してください。
特別な考慮:
耳かけ形のスピーチプロセッサをFMシステムと接続する時には,まずイヤフックを外部入力用ケーブル付きのイヤフックに取り替えて,適当な接続ケーブルをそれに接続してください。AVR社のLogicom CIは,直接,外部入力用ケーブル付きイヤフックに接続します。
混信の回避:
1.機器の身体への装着時には,物理的にFM受
信器とスピーチプロセッサを離してください。
2.パッチコードがヘッドピースケーブルに巻き付いた状態にならない様,気を付けてください−すべてのFMパッチケーブルがシールドされているわけではありません。
3.異なるFM周波数に切り替えてみてください。
4.送受信範囲を超えていないことを確認してください。FM送信機と受信器の間の送受信範囲は20m以上の距離では限界となり始めるかもしれません。
5.教室,あるいは他の環境で送受信の「不能」となる場所を観察してください。教師は教室でFMシステムの聞き取りチェックを行い,問題の場所がないかどうかを調べ,これらの場所に児童が席につくのを避けてください。
トラブル・シューティングのヒント
1.特定の状況下では,FMあるいは人工内耳メ
ーカによって特定の設定が薦められます(パッチ
ケーブルの型を含めて)。ハードウェアの変更(例
えばFM送信器の変更)は,結果として装用者の
聞こえに変化をもたらすかもしれません。
2.大きな金属物体の存在のような,ある特定の環境の条件によっては混信を起こす可能性があります。教室で児童を他の場所に動かすことを考えてください。
3.パッチコードに適切な注意を払うことにより,寿命を長引かせることができます。 |
【目次】
小児の人工内耳
医師のためのFAQ
(コロラド人工内耳協会)
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最近の子どもへの人工内耳適応基準は何か?
以下が子どもにおける人工内耳の一般的な適応基準である:
・重度から最重度の感音性聴覚障害のある12ヶ月以上の子ども
・必要な補聴や教育をしている状態でも聴覚的スキルの発達が十分ではない
・一般的な麻酔に対し,医学的な禁忌がない
・家族や子どもに高い動機や適度な期待がある
・聴覚的スキルの発達を促す教育プログラムを受けることができる
適応基準は子どもごとに個別的に考えるものであり,人工内耳センターは,例えば,保有(残存)聴力,子どもの年齢,失聴期間,必要な教育的オプションの利用可能性,コミュニケーション方法,両親の結果に対する評価といった基準をも考慮する。以下の人工内耳センターがコロラドにある:
Colorado Hearing & Balance Center, Colorado Springs
Denver Ear Associates, Denver
The Children's Hospital, Denver
University of Colorado Health Sciences Center, Denver
人工内耳でどのような結果が期待されるか?
効果は子どもそれぞれによって大きく異なることを知っておくことは大切である。人工内耳を用いた音声言語コミュニケーションの改善能力には様々な要因があるようにみえる。いかに早期に人工内耳を適応するかということが結果に強く影響することが最近の結果から示唆されている。他の要因としては:
・失聴期間(聾であった期間)
・聴覚神経路の保有(残存)状況
・1日に人工内耳を使っている総時間
・音がどの程度,子どもの生活に意味があるものとして生活の中で使われているか
・(リ)ハビリテーションサービスのタイプと質
・親の関わり
・適度な期待
最近の調査研究は,子どもの人工内耳における様々な結果を示しているが,早期に人工内耳の適応となった子どもたちは高いパフォーマンスを示す傾向がある。いくらかの知見は以下のことを示している:
・語音認知度や発話明瞭度における著しい改善
・言語理解および表出言語における著しい改善
どんなタイプの人工内耳が最近利用可能になっているか?
アメリカには3つの主要な人工内耳製造会社がある。
1. アドバンスド バイオニクス社のCLARION
2. コクレア社のNucleus
3. メドエル社のCombi40
人工内耳手術前に何が関わってくるか?
評価と人工内耳の手術は,決定過程に対象者や家族が関わるのと同様,専門家のチームが関わってくるステップバイステップの過程である。
相談:適応の必要条件として,人工内耳の簡潔な解説と効果,期待と成果,そして(リ)ハビリテーション過程の説明等が行われる。
聴能学的評価:診断テストは,オーディオロジストによって行われるもので,その可能性のある候補者が人工内耳の手術に対し聴能学的な基準に合致しているかどうかを決定するために行われる。
医学的評価:医学的な評価は,外科的に問題があるかどうか,もしくは異常な解剖所見があるかどうかを調べる画像診断を含んで行われる。
スピーチ/言語の評価:これは聴覚,言語,スピーチの発達における子どもの進歩を評価することや,人工内耳の適応によって子どものスキルがどのように発達するかを評価するために行われる。
関係者の観察:人工内耳センター,両親,学校そしてセラピスト間の協力関係は,人工内耳装用児にとって,その効果を高めるために重要である。この観察は,教育的そして/または治療的環境下で,子どもの発達を見極める機会となる。それはまた,両親や専門家に対し,術後の教育に対して,協同して取り組んでいくための関係を築く場の提供ともなる。
チームミーティング:手術に向けた過程が完了したら,最新の知見を議論し,手術の決定を下すためのチームミーティングが行われる。このチームミーティングは,家族,子ども,人工内耳チームのメンバー,子どもへの援助をする地域からの専門家を含む。
人工内耳適応前/後にはどのような評価が要求されるか?,そしてなぜ前後の評価が重要なのか?
評価は,人工内耳を考えている子どもが候補となりえるか,また,その後どう対処するかにおいて重要である。各人工内耳センターは特別な評価法や実施スケジュールを持っている。
合衆国の助成基金のある州は,3ヶ月から5歳のすべての聴覚障害児に,評価法を提供している。この評価は,言語聴取および表出言語,基礎的な聴覚スキル,遊び,発話などの様々な発達的領域を評価する。この評価は,人工内耳のチーム,セラピスト,家族に,子どもの長所や弱点など,価値ある情報を提供する。
家族は,Colorado-Boulder 大学のSpeech, Language, Hearing science科によって管理された州全体のデータベースに入力された子どもの評価結果をみる機会が与えられている。このデータベースの情報は長期間にわたる子どもの成長を評価するのに用いられる。加えて,人工内耳の効果を決定したり人工内耳装用児に対する有効な成果に関連する要因を調査するために比較ができるようになっている。
どのような(リ)ハビリテーションが人工内耳をつけた子どもに与えられるのか?
人工内耳装用児の聴覚的(リ)ハビリテーションはスピーチ,言語,そして認知の聴覚化の発達と統合に基づいている。この(リ)ハビリテーションの重要な部分は,(会話でのスピーチとリンクした)聴覚的な自己モニタリング,子どものニーズに従ったプログラムの個別化,そして両親の参加である。
人工内耳装用児の援助に有効なのはどのようなサービスか?
個別の言語療法に加え,それぞれの学区で聴覚的(リ)ハビリテーションや音声言語上のサービスを受けることになる。「コロラド州人工内耳関連教師プログラム」は,人工内耳の子どもに必要な特殊な療育的技術を考慮する学校職員へのトレーニングを行うため,コロラド州教育局によって設立された。このプログラムは各子どもに対し,10時間までの有償監督サービスが与えられる。サービスは地域の特殊教育監督者あるいはコロラド州教育局聾教育聴能サービス課シニアコンサルタントであるCheryl Johnson氏に電話で照会して欲しい(TEL:303-866-6960)。
コロラド人工内耳協会
Corrin Stine, Cameron Shaw, MD. /Colorado Hearing & Balance Clinic
George Modreck /Cochlear Corporation
Ginny Kitch Lupo, Herman Jenkins, MD./University of Colorado Health Sciences Center
Cheryl DeConde Johnson /Colorado Department of Education
Arlene Stredler Brown /Colorado Home Intervention Program, Colorado School for the Deaf and the Blind
Linda Fudge /Colorado Department of Public Health & Environment, HCP
Allison Biever, Robert Feehs MD., Robert Muckle MD. /Denver Ear Associates
Allison Sedey /University of Colorado, Boulder & The Colorado Cochlear Implant Mentorship Program
Mary Barker /Advanced Bionics Corp.
Sue Dreith,Kenny Chan, MD. /The Children's Hospital
Ruth Mathers /Hill Middle School &Denver Public Schools
【目次】
家庭支援希望調査[聴覚障害児をもつご家庭用]
FAMILY NEEDS SURVEY
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保護者の皆様
聴覚障害児を持つ多くのご家庭が情報提供や支援の必要性を感じています。次の表は,ご家庭によっては必要と思われる様々な支援をまとめたものです。各項目にご記入くだされば,私どもからの情報提供や相談の時に役立たせることができます。紙面最後にこの表に入っていない内容についても書き加えることができるようになっています。
ご記入いただいた内容につきましては,守秘義務をお約束いたします。今回,この調査票にご記入いただけない場合は,将来お役立ていただければ幸いです。
相談されたいですか?,それともより詳しくお知りになりたいですか?
項目 |
いいえ
|
よくわか
らない |
相談し
たい |
詳しく知
りたい |
一
般
情的
報な |
1. 子どもの成長と発達 |
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2. 子どもとの遊び方や話し方 |
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3. 子どもへの教え方 |
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4. 子どもの行動の扱い方 |
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情
え報
と提
聴供
覚・
障聞
害こ |
1. 正常なきこえと耳の働き |
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2. 我が子のきこえと聴力低下の理由 |
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3. 補聴器について |
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4. どんな補聴器が適合するか |
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5. その他の補聴援助システムについて |
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6. きこえをいかに維持するかについて |
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コ
ミ
ュ
ニ
シケ
ョ |
ン |
1. 我が子のきこえの指導の仕方 |
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2. 聴覚障害が話すことに与える影響 |
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3. 言語発達 |
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4. サイン言語 |
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5. 我が子のコミュニケーション |
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6. 我が子とのコミュニケーションの取り方 |
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サ
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ビ
ス
や
教
育
的
援
助 |
1. 我が子が受けられる特別なサービスについての情
報提供 |
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2. 将来必要とされる特別なサービスについての情報
提供 |
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3. 先生やセラピストとの相談予約 |
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4. 我が子の他の状況についての情報提供 |
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5.聴覚障害についての書籍やVTR,地方別,州別,
国別の組織と援助について |
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家
庭
や
社
会
的
サ
ポ
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ト |
1. 自分の心配をかぞくや友だちの誰かに相談するこ
と |
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2. 難聴児を持つ他の親と合う機会 |
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3. 難聴を持つ大人と合う機会 |
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4. 保護者の支援団体についての情報提供 |
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5. 自分のための時間 |
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6. 聴覚障害を受け止めるための家族の支援 |
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7. 聴覚障害の問題点に詳しいカウンセラーに会う |
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8. 他の人に我が子の聴覚障害について伝える |
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保
育
地と
域
支
援 |
1. 我が子のための良いベビーシッターの派遣の手助け |
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2. 我が子のための日常ケアプログラム決定の手助け |
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3. 医師や歯科医などの派遣の手助け |
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4. サービスを受けるための移動手段の手助け |
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費
用
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1. 補聴器費用 |
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2. セラピー費用 |
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3. 保育費と保育をしない場合の費用 |
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4. 我が子に必要なそのほかの支援装置費用 |
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5. 衣食住費,医療費,交通費費用 |
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知りたいことや相談したい内容について,この調査表以外のことがあれば,ご記入ください。
相談したい人が特にいますか?
ありがとうございました。
あなたが必要としていることと私どものサービスが一致するよう,この調査表を役立てたいと存じます。
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【目次】
国際会議開催
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第8回アジア太平洋地域聴覚障害問題会議(APCD) |
会議期間:2002年8月3日〜6日(火)
会場:台湾・台北 ザ・ハワードインターナショナルハウス
会議日程
8月3日(土) |
8月4日(日) |
8月5日(月) |
8月6日(火) |
8月7日(水) |
受付 |
開会式
特別講演 |
全体会
|
特別講演
|
ツアー |
特別講演 |
全体会 |
閉会式 |
一般発表 |
一般発表 |
|
一般発表 |
一般発表 |
歓迎パーティー |
夕食会 |
登録料と締切
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2002年6月1日以前 |
2002年6月1日以降 |
当日 |
一般 |
US$350 |
US$400 |
US$450 |
学生 |
US$300 |
US$350 |
US$400 |
旅行代金
コース、発着空港によって¥183,000〜¥256,000
申込方法
「参加申込書」に必要事項をご記入の上、下記宛てにご送付ください。
また同時に参加申込金お一人様(¥100,000)を指定銀行口座にお振込ください。
申込・お問い合わせ先
近畿日本ツーリスト(株)新宿法人旅行支店
〒160−0022 東京都新宿区新宿2−19−1 ビックス新宿ビル5F
TEL:03−3341−2411 FAX:03−3341−3101
担当:森田浩司、井部 誠、佐々木真由美
事務局・会議のお問い合わせ
〒272−0827 千葉県市川市国府台2−2−1 筑波大学付属聾学校内
TEL:047−371−4135 FAX:047−372−2672
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【目次】
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