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【目次】第426号
再び 緊急特集 「総合免許状を考える」(2)中央教育審議会「今後の教員免許制度の在り方について」(中間報告)概要
1.ワーキンググループ開始、専門委員会委員
2.中間報告に対する「意見募集」が行われた
3,本当に特殊免所持数教員は不足しているのか
4.聾学校の免許所持率の構造はどうなっているのか
5.聾学校の専門性は不要なのか
「特殊免許保有41%だけ」東奥日報2001年6月2日掲載記事※
6.全特長自体が各校の専門性を認め、一方で総合免とは?
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緊急特集:聾教育の専門性は これで維持できるのか!
総合免許状を探る(2)
昨年12月20日に開催された第12回中央教育審議会総会で「今後の教員免許制度の在り方について」中間報告案が了承され、12月25日に文部科学大臣に手交された。また今年度中を目途に最終答申を出す予定という。
中央教育審議会「今後の教員免許制度の在り方について」(中間報告)概要
2.教員免許状の総合化・弾力化を検討する背景(2) 特殊教育諸学校特殊教育については、特に近年、児童生徒等の障害の重度・重複化や多様化が急速に進んでいる中で、障害のある児童生徒等の一人一人のニーズを把握し、特別な教育的ニーズに応じた教育を推進することが必要である。今後、複数の障害に対応した専門性と実践的指導力を有する教員を養成するため、盲・聾・養護学校の全ての校種において教授することを可能とする総合的な免許状の創設を検討することが喫緊の課題となっている。
3.教員免許状の総合化・弾力化の方向性(2)特殊教育諸学校免許状障害を持つ児童生徒等の重度・重複化等の課題に対応するため、盲・聾・養護学校に区分されている免許状の総合化を早期に行うことが必要である。
4.具体的方策(3)特殊教育総合免許状の創設盲・聾・養護学校の別となっている特殊教育諸学校免許状の総合化については、早急に実現すべき課題として、教員養成部会に専門委員会を設けて具体的な検討を進めることとする。
1.ワーキンググループ開始,専門委員会委員
これまで開かれた部会,さらに中間報告にも触れられているように教員養成部会に専門委員会「特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループ」が設けられ12月14日に初会合が持たれた。WG委員は下記の通り。部会より: 宮崎英憲(東京都立青鳥養護学校長)大南英明(帝京大学文学部教授)渡辺三枝子(筑波大学心理学系教授)専門委員会委員: 尾崎亨子(群馬県教育委員会)香川邦生(筑波大学:視覚障害)木舩憲幸(福岡教育大学:運動障害)斎藤佐和(筑波大学:聴覚障害)佐竹京子(全国肢体不自由養護学校PTA連合会長)西川公司(国立久里浜養護学校長)物部長仁(秋田県教育委員会)山本昌邦(横浜国立大学)総括:文部科学省初等中等教育局教職員課 免許係 高田,安部TEL:03-5253-4111(内線 2453・2457),FAX:03-3508-4409
2.中間報告に対する「意見募集」が行われた
また,中間報告に対して「意見募集」が行われた。募集した意見がどう部会の議事に反映されるのか。「意見募集」が単なる手続きに終わらないよう部会審議の内容にも注目していきたい。
中央教育審議会では,本年4月より今後の教員免許制度の在り方について審議が行われ,12月25日に「今後の教員免許制度の在り方について(中間報告)」がなされました。つきましては,本中間報告に対し広く御意見等を賜りたいと考えておりますので,御意見等がございましたら,下記の要領にてご提出いただきますようお願い申し上げます(電話等による御意見はご遠慮願います。)。いただきました御意見等につきましては,可能な限り答申のとりまとめに向けた検討に反映していきたいと考えております。なお,御意見に対して個別に回答はいたしかねますので,その旨ご了解願います。1.御意見提出期限: 1月15日(月)2.提出方法: 郵便、ファクシミリ、電子メール3.宛先:文部科学省初等中等教育局教職員課免許係〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2FAX番号:03-3508-4409 ,電子メール:kyosyoku@mext.go.jp※なお,ご提出いただいた記載内容は,御住所,電話番号を除きすべて公開される可能性がありますことをあらかじめご承知おきください。この意見募集には対して多くの方々が応じていただけたことと思う。以下は私が送った意見。
1)「当分の間」規定の取り外しについて中間報告で触れるべきではないか。初等中等教育分科会教員養成部会(第1回)議事要旨には,[盲・聾・養護学校に関しては,各学校種ごとの免許状保有率が低い。(中略)免許法上で特殊の免許状の保有要件を外した「当分の間」の規定は外していただきたい。]と記述されているが,この記述が中間報告に盛り込まれていない。小学校の教諭には「小学校教諭免許状」,中学校の教諭には「中学校教諭免許状」が必要という制度が特殊教育諸学校について適応されないのは,免許法上の大きな欠点であり,早急の改正があると考える。2)特殊教育諸学校に対して「総合免許状」を取り入れることは早急である。特殊教育諸学校に対して「総合免許状」を取り入れることは,未だ日本特殊教育学会でも統一の見解が出されているわけでもない。また,第6回部会では,[現場では、担当する障害種別の免許状を取ることに努力している教員がまだ多く、総合免許状を検討するのは早いという認識をしている。重複化への対応は重要だが、まずは障害種別免許状に対応するのが先決であろう。]との意見が出ているにもかかわらず,中間報告では[障害を持つ児童生徒等の重度・重複化等の課題に対応するため、盲・聾・養護学校に区分されている免許状の総合化を早期に行うことが必要である。]と書かれている。まずは上記の「当分の間」規定を取り外し,その上で,さらに必要があるのであれば改めて「総合免許状」を検討するべきではないか。3)重度・重複化は複数免許所持で対応すべきである。特殊教育諸学校が,重度・重複化,多様化の問題を抱えていることは既知のことである。しかし,この対応のために「総合免許状」を創設することよりも,例えば「聾免一種と養護免二種」のような複数免許を取得できる道を開くべきだと考える。現在,多くの大学教員養成課程でも障害児教育教員養成課程で「聾+養護」,「盲+聾」などの複数免許を出せるカリキュラムを構築している。また,認定講習によって,さらに他の特殊免許を積み上げることが可能になっている。最初から養護学校の新採教員として養護学校教員免許状所持者を採用し,採用後に必要に応じて聾学校や盲学校の免許を認定講習で取得するようにすれば,重度・重複化に対応できる教員が養成できる。現制度で対応できるにも関わらず,新たな免許状を創設することは,教員養成や教育現場の混乱を招くだけではなく,「薄く広い」学習内容で,複合した障害に対応できるとは思えない。また,特殊学校の幼児・児童・生徒の「多様化」については,LD,学習障害に代表される新しい障害分野,また聴覚障害児教育の世界では「0歳からの対応」など,新たな領域へ踏み出すべき状況がある。こうした状況の中で,「LD教育士」などの認定制度が誕生するなど,関係領域はむしろ,精鋭化し細分化されつつある。総合免導入は,この流れに逆行した案である。言語障害分野のように実態として教育が行われているにもかかわらず,免許制度が制度化されていない分野もある。こうした取り残してきた分野,新たな分野に対応する免許を創設し,きちんと対応できる教員の養成の方が急務だと考える。4)部会員や専門委員会に,教育を受ける側の委員が含まれていないことは是正されるべきである。免許状にかかる専門性の問題は,学校の教育内容にも関わることであるから,そこで学ぶ側の意見を十分に聴取する必要がある。特殊免許状の検討にあたっては,聴覚障害児教育関係者は当然として,難聴児を持つ親の会,全日本ろうあ連盟など,「教えられる側」の意見を十二分に聴取する必要があると思うので,最終答申に向けて,それら関係者からの意見聴取を行うことを強く希望する。
その他にもご意見をお送りいただいた先生からご報告を頂戴いたしました。その中から意見をいくつか掲載します。聴覚に障害を持つ子供の親として現在の聾学校・難聴学級の教員の免許状の所持状態には大きな不満と不安を持っています。@聾学校の教員は聾免の所持が義務付けられていますが現状は無免許者のほうが多い。(移行処置の廃止をお願いします。)A難聴学級・難聴通級指導教室には免許の所持の義務付けがない。B各教育委員会での教員の異動についても免許状の所持についての配慮が少ない。C聾学校は県立・難聴学級や通級指導教室は市町村立で人事交流が無い。以上のような現状であるにもかかわらず,この時点で総合免許状が導入されたとしたら聾教育の専門性はどこに求めればよいのでしょうか。聴覚障害児の教育に携わる教員が,補聴器のことも知らず,オージオグラムの見方もわからないよりは,広く浅くであっても知識がある教員が担当できるのであれば,総合免許状も意味があるとは思いますが,より高度な教育を受けた専門教員の養成と免許制度は必要と考えます。そこで以下の提案をします。@特殊学級・学校の担任は最低条件として総合免許状を持っていること。A盲・聾・養護・言語・自閉症・LD等のより専門性が必要な教育については総合免許 の習得後に専門免許として習得すること。(専門免許については現在の盲・聾・養護免許状と同等の内容か,それ以上とすること。)B文部科学省が各教育委員会に対して特殊免許所持者の異動について強く指導すること。[投稿者:全国難聴児を持つ親の会会長 稲田利光]
こちらは難聴学級の先生からの投稿1.特殊教育免許の総合化を検討するについては,これにより直接影響を受けるであろう当事者,つまり教えられる側の意見を十部に反映させていただきたいと思います。直接子どもに聞くことは不可能ですので,現実的には,成人した聴覚障害者,保護者,またそれらの団体や組織の意見を聞く必要があると思います。2.特殊教育免許の総合化の目的は,重度・重複化や多様化への対応と,免許保有率の向上にあると読みとれるのですが,それはそもそも聴覚障害教育等,障害者教育の質の向上につながるものでなくてはなりません。単に広く薄く学んだ教員を増やすことでもないし,表面的な保有率の向上でも無いはずです。その意味で,4年制大学で取得できてしまう総合免許というのはあり得ないと思われます。3.重度・重複化,多様化への対応は,現職教育の充実によって実現することが,真に質の向上に結びつくという意味で,現実的な対応だと考えます。実際,聴覚障害教育分野だけを見ても,4年制大学で免許を取ったからといって,すぐに現場に通用するものではありません。手話,補聴器,発音指導等,どれをとってみても5年10年の経験を経てようやく身に付くものです。その5年10年の経験を土台に,重度・重複化,多様化に対処すべく新たな知識技能を実践を通して学ぶのでなければ,質の向上に結びつく力とはなり得ません。4.保有率の向上を目指すのなら,教員の採用や人事のシステムを,適材適所の観点から見直すべきです。採用に際しては,該当免許や本人の専門知識はもとより,その仕事に対する意欲も勘案すべきです。また,機械的な人事異動を改め,実績や意欲を重視していけば,自ずと保有率は向上するはずですし,それこそが教育の質を高めることにつながります。5.少なくとも,聴覚障害教育は複数の専門家のチームプレーで成り立っています。聴覚障害教育と一口に言っても,各教科の指導,手話,補聴器や聴覚学習,発音指導,言語指導,障害認識,ろう文化等々,幅広くしかもそれぞれに一定の奥深さをもつ分野があります。そして,一人の教師がすべてに通じることなどできるはずがないということを,現場の教師はよく分かっています。だからこそ,チームによる教育が必要になるのです。それが今日の教育の流れです。特殊教育免許の総合化,それも4年制大学でやってしまおうという案は,この流れに逆行しているように思えます。聴覚障害分野の中でさえ専門分野が細分化しているのですから,まして,他の障害を併せ持つ重度・重複化,多様化に対処するとなればなおさらのことです。今やらねばならないことは,一人の教師に薄っぺらな総合免許を与えることではなく,各分野にきちんと対応できる教師の養成と,それらを有機的に結びつける仕組みを確立することだと思います。意見募集に応募した意見ではありませんが,下記のご意見も頂戴しております。
総合免許状に反対する理由について1.私は聾教育を志し東京聾唖学校師範部を卒業したが,この教員養成学校への受験資格は小学校訓導を3年以上経験し,県知事の推薦を受けねばならなかった。9名の合格者は国費をもって1カ年の特別教育を受け,昭和9年,私は島根県立盲唖学校に勤めた。ここで盲生を教え聾生を教え,当時は養護学校がなかったが,その後国立身体障害者センターで肢体不自由者を指導して来たが,これらの生徒の中には知的障害を併せ持つ者もかなり含まれていたので,今日までの67年間すべて障害教育にかかわって来たものである。2.この障害教育の中で,私が最も困難な教育と思ったのは聾生の言語指導の問題であった。私は東京府立聾唖学校時代では2名の聾生を家庭に預かり,教師と父親の一人二役を4年も過ごしたことがあったが,言語指導で一人歩きができそうに思ったのが10年の経験を経た頃からであった。特に発音指導に至っては未だに自信がもてない。大学を出て聾免をもって赴任しても,殆どのものが専門性を身につけておらず役に立っていないのが実情である。これには教員養成にも問題があり,専門性を身につけた指導者がきわめて少ない。実習時間も少なく,4年の修業年限では短い。3.盲学校,聾学校,養護学校の対学は大々障害も異なり,教員の求められる専門性も異なり,共通点はほとんどないといえる。ここで専門性といえば普通教育との違いであり,聾学校でいえば言語指導であるがこれには発音指導も含まれて来る。そして前記の通り専門性も身につけない聾免が交付されている。これが各種障害に共通する総合免許状が交付されるとしたら結果はどうなることか。4.これまでの聾免には自立活動の内容も含まれていた筈だのに,なぜ別に自立活動の免許状を交付している。何のための特別な免許状となったのか理解に苦しむ。近年聾学校教員の専門性が薄らぎつつあると聞くが,この事はこの免許状と関係なかったことか,人事異動とも関係なしとはしないが改悪は速やかに認めてほしい。5.間口が広くても奥行のない露天商は商店とはいわない。専門性を伴わない教員免許状ならいっそ全部なくしてしまって普通免許状でやって行く教員養成を考えた方が賢明ではあるまいか。総合免許状がどうしても必要なら現場現状をよく知り,十分な理解の上の結果にしてもらいたい。教育の振興という大目標を見失わないように。[投稿者:聴覚障害者教育福祉協会 今西孝雄]
3.本当に特殊免所持教員は不足しているのか先日,文部科学省初等中等教育局教職員課からまとめた下記の資料に目が止まった。2000年6月1日現在の免許取得者および教員採用状況の数である。
免許取得者 受験者 採用者 全 体 うち国立大学
教員養成学部全 体 うち国立大学
教員養成学部全 体 うち国立大学
教員養成学部盲 学 校
聾 学 校
養護学校59
160
300131
127
1839
5733
1827
1101
482
合 計 3220 1997
表の見方であるが,該当年度に @学部・院卒で聾免所持者が127人いて,他に認定講習などで33人が免許を取得した。A特殊採用枠に5733人が応募し,1101人が合格したということである。ここから以下のことを読みとることができる。@特殊学校教員の採用試験に免許条件がないために 5733人もが受験してしまう(認定講習での免許取得者は教員採用試験の対象にはならないことが多い)A新規採用になる1101人は学卒特殊免所持者1997人よりも少ない(但し複数免許所持者が含まれるので頭数は1997人よりも減る)つまり,特殊免所持者の数は[所持者>採用者]であり,[供給>需要]である。従って,もし採用時に特殊免所持を義務づけたとしても,十分に供給できるだけの免許取得者がいるのである。
このことは,免許所持率が低いから「総合免許状」という短絡的発想ではなく,
採用試験の条件見直しだけでも,免許所持率の向上に対応できることを示している
4.聾学校の免許所持率の構造はどうなっているのか聾学校の聾免所持率は,新採で聾学校に採用される教員の所持率と,異動で聾学校に来る教員の所持率で変化していく。例えば,上記のように新採教員の所持率が100%にすれば,徐々に免許所持率は上がる。しかし,異動が激しく免許所持者が聾学校を去っていくと,当然,所持率が下がる。もちろん,加えて内地留学や認定講習などによって,所持率が高くなることがある。そこで,一部1997年の資料に,上記のデータを加えて図にしてみた。
例えば認定講習での特殊免取得者は,盲・養護が学部卒取得者と同じ程度の数,確保されているのものの,聾免については33人と,全教員数のわずか1%程度しかいないこと(聾免の認定講習の機会が少なく,開催県に地域差があるなど,免許所持率にインパクトを与えていない)がわかる。また異動によって聾学校に来る教員の聾免所持率は7%と極めて低く,これが全体の聾免所持率が年々下がる一因になっていることも伺える。
免許所持率は「総合免許状」という短絡的発想ではなく,
人事異動を減らし,認定講習の機会を増やすことなども,策としてある
5.聾学校の専門性は不要なのか
今まで聾学校は他校種とは独自の動きを続けてきた。その中で,私自身が聾教育の独自性を主張するばかりで,その専門性の内容について十分な説明を他校種にしてこなかったことは大いに反省すべき点であろう。しかし,本当に聾学校の専門性は不要なのだろうか。いくつかの主張や調査結果を引用する。通常の学校で聴覚・言語障害児の教育にあたる先生方が中心になって作られている「全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会」の研修・経営推進委員会が出した『難言教育(支援)のあり方』では下記のように述べられています。
もう一つは教員の免許状の問題です。我が国の特殊教育は,戦後50余年をへた今日でも,教員の免許があれば特殊教育の免許が無くても勤務することができます。特殊教育の免許状は特殊教育関連の単位を取り,一般には基礎免許と称する幼,小,中,高等学校の免許取得を条件に付与されてきました。この基礎免許さえあれば,当分の間は特殊学級でも勤務できることとなっており,その当分の間が50年も続いているのです。小,中学校の免許さえあれば,難言教育は誰にでもできるかといえば,これは難しいところです。難言教育に特殊教育としての専門性は必要ないのでしょうか。特殊教育の新しい免許状として取りざたされている,盲,ろう,養護学校全てで教授できる「総合免許状」で「通級指導教室」特に言語障害教育の専門性は裏打ちできるのでしょうか。【W】『専門家としての力をつけよう』特殊教育諸学校を始め,小,中学校に設置されている「通級指導教室」「特殊学級」の教員の大半は,現在特殊教育の免許状を持っていません。しかも全く研修を受けずにこの道に入った者が全体の33%にも及んでいる実態があります。障害のある児童・生徒の指導・支援に当たっては,事前の研修は欠かせないのです。地方分権一括法が施行された現在,全てを国に頼る時代は終わりました。特殊教育を担当する教員の研修については,都道府県自治体の努力が必要となり,設置校長会としてのビジョンや意見,あるいは指導力をも問われる時代に入ったものと思っています。
このように総合免許状の問題は,聾学校の問題だけではなく,難聴・言語障害児全般の教育の内容(専門性)と,それにあたる教員の資質(専門性)の問題として,広くとらえる必要があると思います。確かに目の前にいる障害がある子どもたちは重度・重複化しています。だからといって薄く広くあたれる教員が役に立つのでしょうか。むしろ,複雑化,精鋭化した各分野をさらに極めていく方向を重視し,様々な状況を併せ持った子どもには,それぞれの専門性を持ち寄って,協同して教育支援にあたることができる専門家同士の連携,ネットワーク構築こそ求められるのではないでしょうか!
6.全特長自体が各校の専門性を認め,一方で総合免とは?
今回の総合免許状は全特長(全国特殊学校校長会)がからんでいる。会長は部会委員を務める宮崎英憲(東京都立青鳥養護学校長)氏でもある。この全特長の法制制度専門委員会は特殊学校のセンター化について調査を行い,下記のまとめ(抄)を出している。
1.盲学校 全国盲学校71校のうち,未就学乳幼児への支援は59校が,保育所の幼児へは48校,幼稚園の幼児へは35校,小学校,中学校はそれぞれ46,23校が行っている。問題点としては教員の加配がないため教員の負担が増大する,教員が高い専門性を身につける必要性がある,保護者への交通費の支給の検討が必要などの指摘がある。2.聾学校 遠距離からの保護者の交通費負担が大きい,通級制度を聾学校が引き受けるならば法的な定数措置が必要だと指摘。3.知的障害養護学校 教育相談にのったり巡回をする教員の定数,現在の人員の専門性の向上,関係機関とのネットワーク作り,教育相談機能を果たせる教室などの回答が多数みられた。また教員の専門性を高めるためには臨床心理の研修,自閉症についての研修などを充実させる必要があると指摘。
この結果でも,教員の専門性を高めることの重要性が指摘されている。しかし,一方で「総合免許状」を推進しようと言う全特長の動きには整合性が見られない。何度も書いたことだか,「免許状所持=高い専門性」ではない。しかし,だからと言って,免許制度がなくなって良いはずもない。また,下記の論議も行われているように聞いている。1.一種免,二種免は総合免許状とする。専修免許状は従来通り校種別とする。2.二種免は総合免許状とする。一種免と専修免許状は従来通り校種別とする。これらは妥協策として議論されている案であるが,9ページで述べたとおり,採用,異動の考え方・制度が変わらなければ,仮に総合免を取り入れたとしても,所持率は頭打ちになるであろうし,422号で述べたとおり,見かけ上の所持率を上げるための「奇策」であって,上記の現場が要求する「高い専門性」は到底,望めない。中間報告の文中にある 総合的な免許状の創設を検討することが喫緊の課題 との一文はまったく現場の実情を反映したものではない。むしろ,「高い専門性」こそがこれからの特殊学校の現場や,学校に子どもを通わせている保護者の願い,喫緊の課題であるのではないか。そこを考えずに,総合化免許導入こそが喫緊の課題とは言えないと思うのである。
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