2001年8月13日発行・27日発行合併号(第2・4月曜日発行)

News Source of Educational Audiology

聴能情報誌  みみだより  第3巻  第417号  通巻502号


編集・発行人:みみだより会、立入 哉 〒790−0833 愛媛県松山市祝谷5丁目2−25 FAX:089-946-5211
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立入 哉 :h-tachi@ma4.justnet.ne.jp


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【目次】第417号

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第14回 フィティング・フォーラム開催要項


AABR(自動ABR)などを利用した新しい聴覚障害児の早期発見スクリーニングシステムが全国的に広まりつつあります。厚生労働省は3年後を目指して新生児期の聴力スクリーニングを実施する構想を立てています。新生児期に難聴が指摘される時代となり,聴覚障害児教育は,その子ども達の受け手として新たな責任を負うべき時代になりました。今年のフィッティング・フォーラムは,これら新生児期の聴力スクリーニングシステムの概要,発見された子どもの補聴と教育,補聴という面では,重度難聴用のフルデジタル3器種の比較から子どもへの適用についてなどを限られた時間の中で講習いたします。特にスクリーニングシステムに関する内容は他の講習会で扱っていない内容ですので,ぜひご参集ください。

     今年度のテーマ:早期発見・早期補聴・早期教育2

  日 時:2001年9月29日(土)9:00〜15:30
                          (全日聾研 福島大会終了後)

  会 場:福井市文化会館 大会議室(全日聾研大会と同じ会場です)

  報告「聴覚障害者のための国際大学連合ネットワーク」
     アジア,アメリカ,中国の聴覚障害者関連大学のネットワークについての報告
  報告「出そろってきた重度難聴用フルデジタル補聴器」
      ここ1年の間,対象を100dB以上としたフルデジタル補聴器の市販が相次いで
     います。センソP38・P37,プリズマSP2+,感多BTPといった器種について,実際の
     使用例を参考にディスカッションします。
  報告「動き出した乳幼児スクリーニングシステム
                   −モデル指定県からの報告−」
      昨年に続き,乳幼児スクリーニングシステムについて取り扱います。今年度は,
     モデル事業指定県である岡山県からの実情報告をしていただきたいと考えています。
                          講師:岡山かなりや園 福田章一郎

 定員:70名限定,参加費:3000円(予定)当日,会場にてお支払い願います。
 申込方法:必要事項を記入した下の申込用紙をFAXで下記にご送信願います。
 ※申込締切日:9月20日(木)
  定員に達した時点で締め切ります。受け入れ可能の場合は通知いたしません。
  定員を超えた場合のみ,申込書に記入してある連絡先にご連絡致します。
 ※情報保障が必要な方は、通訳方法の打ち合わせと通訳者の確保のために遅くとも8
 月下旬までにご連絡をお願い申し上げます。なお,直前,当日の情報保障要請には応じ
 ることができません。
 ※申込書送付先:愛媛大学教育学部 立入 哉 FAX:089-946-5211



     第14回 フィティング・フォーラム参加申込書

氏名_____________

所属機関名:_________________

連絡先:(郵便番号 □□□-□□□□)_________________

         _______________________________

     電話______________ FAX________________

     e-mail:______________________________
      ※諸連絡はFAXまたはe-mailを用いますので、どちらか一方は必ずご記入願います。

※情報保障の要・不要(要・不要)
 情報保障「要」の場合,その種類_____________

本テーマに関して,質問したい事項などがあればご記入下さい。

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【目次】



学校公開
 こばと聾学校 学校公開デー

本校では兵庫県の「YU・らいふ・サポート事業」の一貫として、学校公開デーを予定しています。本校の教育に興味を持っておられる人々に広く来校を呼びかけ、保育参観及び作品展、機器展示を通して、本校の聴覚障害教育や難聴幼児に対する理解啓発を図ることを目的としています。

日 時  10月27日(土)9:20〜12:30
場 所  兵庫県立こばと聾学校 各教室及びプレイルーム
日 程  9:20〜10:00 受付
     10:00〜11:50 公開保育:
           各クラスの保育(1歳から5歳児までの日常保育を公開します)
           合同リズム(3・4・5歳児が集まってリズムをします)
     作品展・機器展示(公開保育と並行して行います。時間は9:20〜12:30です)
照会先 兵庫県立こばと聾学校
    〒663−8001 兵庫県西宮市田近野町8−8
    TEL:0798−53−5061、FAX:0798−52−5062

・参加を希望される方は下記の要領で10月12日(金)までにお申し込み下さい。
 郵送・FAXどちらでも結構です。
・当日のビデオ・写真の撮影はご遠慮下さい。
・交通機関をご利用下さい。阪急甲東園駅下車、阪急バス「新明和前」下車すぐです。
・子どもさんの参加はご遠慮下さい。



 こばと聾学校 学校公開デー参加申込書
お名前
 
所属先
 
連絡先 □□□−□□□□


TEL:              FAX:

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シンポジウム開催
 あきらめず挑戦へ
     開かずの門をこじ開けよう!

日 時   9月8日(土)13:00〜16:30
会 場   文化シビックセンター 4階シルバーホール
      営団丸の内線・南北線「後楽園」駅直結の高層ビル
      都営三田線・新設の大江戸線「春日」駅徒歩1分
参加費   1000円 展示・手話・要約筆記あり
シンポジスト:
     高岡 正(社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長)
     福井典子(社団法人日本てんかん協会常務理事)
     里見和夫(NPO法人大阪精神医療人権センター代表理事)
 ゲスト:早瀬久美
コーディネータ:
     金政玉(キムジョンオク)(DPI障害者権利擁護センター所長)

共 催 障害者欠格条項をなくす会,障害者総合情報ネットワーク(ビギン)
照会先 「障害者欠格条項をなくす会」事務局まで。
    TEL:03-5297-4675 FAX:03-5256-0414
    e-mail:nakusu@bk.iij4u.or.jp
    〒101−0062 東京都千代田区神田駿河台3−2−11
    総評会館内 DPI障害者権利擁護センター気付

参加申込先  ビギン TEL:03-3251-3886 FAX:03-5297-4680



 シンポジウム「あきらめず挑戦へ」参加申込書
お名前
 
所属先
 
連絡先 □□□−□□□□


TEL:              FAX:
必要な情報保障 ○をつけてください→ ・点字 ・手話 ・要約筆記

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関連領域新刊図書紹介

★教育実践は子ども発見
竹沢 清(愛知県立千種聾学校教諭) 全障研出版部 1500円 5-88134-293-2

★聾教育問題史:歴史に学ぶ
上野益雄著 日本図書センター 3200円 4-8205-6241-X

★新しい手話:わたしたちの手話4
全日本ろうあ連盟出版局 1500円 4-915675-69-6

★障害児教育 井谷善則編著 ミネルヴァ書房 2200円 4-623-03445-3

★日本版PIC活用編:視覚シンボルでコミュニケーション
藤沢和子編著 ブレーン出版 3500円 4-89242-672-5

★地域福祉の実践に学ぶ 土橋敏孝著 信山社出版 3000円 4-7972-3051-7

★新版K式発達検査反応実例集
中瀬惇編著 ナカニシヤ出版 2500円 4-88848-648-4

★自閉症なんか怖くない:低機能広汎性発達障害者とのつきあい
片倉信夫著 学苑社 3200円 4-7614-0106-0

★自閉症の人のライフサポート:TEACCHプログラムに学ぶ
梅永雄二編著 福村出版 2400円 4-571-12097-4

★論理療法と吃音:自分とうまくつき合う発想と実践
石隈利紀著 芳賀書店 1500円 4-8261-3061-9

★ADHDさとるくんの場合:落ち着きのない子をどう育てるか
古沢恭子著 鈴木出版 1700円 4-7902-7165-X

★障害児(者)のセクシュアリティを育む
“人間と性”教育研究協議会・障害児サークル編 大月書店 1500円 4-272-41133-0

★箱庭療法のプロセス:学校教育臨床と基礎的研究
平松清志著 金剛出版 3500円 4-7724-0702-2

★自立活動の計画と展開 障害児教育の新領域3
明治図書出版 2260円 4-18-905915-3

★介護等体験における人間理解:教師を志すあなたへ
船津守久編集 中央法規出版 1800円 4-8058-2103-5

★ここまできた障害者の恋愛と性
障害者の生と性の研究会著 かもがわ出版 2200円 4-87699-605-9

★障害者福祉とソーシャルワーク:障害者福祉論
大島巌編 有斐閣 1900円 4-641-05531-9

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ホームページ紹介

宮城県ろう学校ホームページ  http://miyaro-s.myswan.ne.jp/

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書籍紹介
 一聾者の60年のあゆみ
       奔 流  中島庄一著

中島先生は,豊橋聾学校を卒業し,豊橋聾学校非常勤講師を務めた後,愛知大学を経て,再度,長きに渡り同聾学校でお働きになり,後,岡崎養護学校に転任された聴覚障害者である。本書では,聾学校時代の先生の思いが随所に出てきて,その思いが伝わってくる。特に図書に関するお仕事への貢献には,先生の文字,文字日本語への強い入れ込みのようなものを感じた。
「奔流」は豊橋ちぎりライオンズクラブ主催の文学作品コンクール「ちぎり文学賞」の奨励賞を受賞した。自分史ということで,文学作品ではないのかも知れないが,むしろ,聾学校で働いていた聴覚障害者の思いのようなものを読みとることができることが私にとっては幸せだった。
奔流
『平成になってから,「手話は聾者の母国語だ。聾学校の口語教育は嫌いだ。」と聾者が言うのをよく聞いた。″母国語″か否かは,その人の判断によるだろうが,聾者にとっては確かに手話は必要である。口話の補助手段として,どうしても必要なのだ。しかし,耳の聞こえない者でも,まず日本語を身につけることが大切だと思う。』などなど,随所に先生の考えもある。一聾者の生き様に学ぶことができる一冊である。
ご注文は,
〒441-8106 豊橋市弥生町東豊和103-7 中島庄一先生に下記の注文票を添えて,書籍代と送料の合計金額を現金書留か,郵便小為替で送る。複数冊の場合は事前に FAX:0532-46-5003 にご連絡を。



「奔流」申込書   「奔流」を申し込みますので,書籍代+送料,3,140円を添えて
         申し込みます。なお,本は,下記にご送付下さい。         
お名前
 
送付先 □□□−□□□□


TEL:              FAX:

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学会誌・研究会誌 Contents

★音声言語医学 42(3),2001
総説「人工内耳と言語」本庄 巖 , 205-212
特集<小児の人工内耳と教育>
   「小児の人工内耳と教育まとめのことば」川野通夫 , 249
   「帝京大学病院における人工内耳装用児の実態」
    工藤多賀・斉藤宏・小寺一興 , 250-256
   「人工内耳幼児症例への援助」大森千代美 , 257-262
   「人工内耳と教育−聾学校の立場から−」中井弘征 , 263
   「聴皮質の発達と可塑性」内藤 秦 , 264-271
 
★特別支援教育 No.3,2001
「聴覚障害児教育担当教員に求められる専門性〜ことばと知識の獲得への援助〜」
 四日市章 14−16
 
★聴覚言語障害 29(3),2000
「聴覚障害児童・生徒は文をどのように理解するか」
 田中幹子、南出好史 65−78
「難聴の早期発見と療育の多様化における親の対応について」
 林美佳、鷲尾純一 79−87
 
★聴覚言語障害 29(4),2000
「聴覚障害生徒による日本サイン語手話,日本語手話,書きの理解力と理解誤り」
 南出好史,槻本千尋,鶴田彩子 103−110
「聾学校に在籍する子どもの作文力評価に関する研究」
 勝又直,澤隆史 131−140
 
★Scandinavian Audiology 30 Suppl.53 2001
「Universal newborn screening, a dream realized or a nightmare in the making?」
 G T Mencher and S J DeVoe 15-21
「Newborn hearing screening: selected experience in the United States」 D Hayes 29-32
「Universal newborn hearing screening and transient evoked otoacoustic emission:
 new concepts in Brazil」 M J Chapchap and C M Segre 33-36
「Children's amplification needs −same or different from adults?」
 T Y C Ching,H Dillin and D Byrne 54-60
「Auditory performance of young children with hearing aids: the Nijmegen experience」
 A Sniki,K Neijenhuis and C C Hoekstra 61-67
「How to assess outcome of hearing aid fitting in children」 S D Arlinger 68-72
「The effects of age of cochlear implantation on speech perception outcomes in
 prelingually deaf children」
 RV Harrison,J Panesar,H El-Hakim,M Abdolell,R J Mount and B Papsin 73-78
「Hearing impaired children in developing countries」 T Jauhiainen 79-82
「Aoudiology in Latin America: hearing impairment, resources and services」
 J J Madriz 85-92
「WHO activities for prevention of deafness and hearing impairment in children」
 A W Smith 93-100
「Support services in Denmark for parents of children who are deaf or hard of hearing:
 a national survey」 U J Mikkelsen,P Nielsen and S Rasmussen 116-119
「Social inclusion and career development-transition from upper secondary school to work or
 post-secondary education among hard of hearing students」
 B Danermark,S Antonson and I Lundstrom 120-128
 
★EAR and HEARING 22(3)2001
「Maximizing Effective Audibility in Hearing Aid Fitting」
 Teresa Y.C. Ching,arvey Dillon,Richard Katsch,Denis Byrne 212-224
「Use of Audiovisual Information in Speech Perception by Prelingually Deaf Children with
 Cochlear Implants: A First Report」
 Lorin Lachs,David B. Pisoni,and Karen ller Kirk 236-251
「The Influence of Contextual Information on the Perception of Speech by Postlingually and
 Prelingually Profoundly Hearing-Impaired Hebrew-Speaking Adolescents and adults」
 Tova Most and Limor Adi-Bensaid 252-265
 
★The Volta Review 102(1),2001
「Global Language Progress with an Auditory-Verbal Approach for Children Who Are Deaf or
 Hard Of Hearing」 Ellen A.Rhoades,Ed.S.,and Theresa H. Chisolm,Ph.D. 5-24
「Acoustic Consequences of Evaluating Hearing Aids via Stethoscopes and Listening Tubes」
 Linda M.Thibodeau,Ph.D.,Norma DeLaRosa,M.A.,and Craig A.Champlin,Ph.D. 25-33
 
★Journal of Deaf Studies and Deaf Education 6(3),2001
「Parents'Experience of Universal National Hearing Screening:A Critical Review of the
 Literature and Its Implications for the Implementation of New UNHS Programs」
 Alys Young and Elizabeth Andrews 149-160
「Peer Relationships of Children With Cochlear Implants」
 Yeal Bat-Chava and Elizabeth Deignan 186-199
 
★SEMINARS IN Hearing 22(2)2001
 特集「The Role of Adaptation in the Hearing Aid Fitting Process」
 巻頭言 George A.Lindley,Ph.D.
「Consideration of Auditory Acclimatization in the Prescriptive Fitting of Hearing Aids」
 H.Gustav Mueller,Ph.D.,and Thomas A.Powers,Ph.D. 103-124
「The Impact of Hearing Loss and Hearing Aid Experience on Sound Quality Judgments」
 Catherine V.Palmer,Ph.D. 125-138
「Audiologist-Versus Patient-Driven Hearing Aid Fitting Protocols」
 George A.Lindley,Ph.D.,Catherine V.Palmer,Ph.D.,John Durrant,Ph.D.,and Sheila Pratt,Ph.D. 139-160
「Adaptation to Enhanced Dynamic Range Compression(EDRC)―Examples from the SENSO P38
 Digital Hearing Aid」 Francis Kuk,Ph.D. 161-171
「Adaptation Management for Amplification」 Donald J.Schum,Ph.D. 173-182
「Expansion as a Tool for Adaptation to Amplification」
 Victor H.Bray,Jr.,Ph.D.,and Robert M.Ghent,Jr.,M.S. 183-197
「Adaptation Managers in Hearing Aid Fitting Software」
 CynthiaA.Eberwein,B.S.,HarmonyA.Mack,B.S.,Stephen Pallet,M.S.,and George A.Lindley,Ph.D.199-207

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ミニニュース

★愛媛県は,聾学校中学部に「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を採択
愛媛県教育委員会は,8月8日の定例会で「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史、公民の教科書(扶桑社刊)を聾学校2校(松山,宇和),養護学校(肢体不自由2校と病弱1校)で採択することを決めた。7日には東京都が養護学校での採択を決めたが,聾学校については「記述が聴覚障害児には難しい」等の意見が出て採決が割れ,委員長判断で採択が見送られた。このため,聾学校での採択は現在,愛媛が唯一。なお,長崎県教育委員会(委員6名)は,8月13日,「障害のある子どもたちが学習しやすく、教師が教えやすい教科書を選ぶべき」とする声が過半数となり,「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書は採択しない方針を固め,教育長に最終判断を委ねた。同教育長は「最終判断は15日に行うが,教育委員会の意見は尊重したい」と述べている。
 
★2003年度入学から新基準採用−障害児の小学校就学
障害児の就学指導上の基準と方法の見直し作業を進めている文部科学省は,本年度中に学校教育法施行令を改正し,具体的な基準と方法を示す方針を立てている。これら新基準と新方法を2003年4月入学者から適用することを決めた。つまり,来年10月1日以降に各教委で行われる就学先決定手続きは,新基準で行われることになる。
 
★早瀬(旧姓 後藤)久美さんに薬剤師免許が交付された
障害を理由に免許・資格の取得などを制限する「欠格条項」を持つ法律のうち、厚生労働省が所管する27の法律が今国会で改正されたのを受け、聴覚障害のある早瀬(旧姓 後藤)久美さんに7月、薬剤師免許が交付された。早瀬さんは都内の薬科大を卒業し、薬剤師国家試験に合格。しかし「耳が聞こえない者には免許を与えない」とする薬剤師法の欠格条項を根拠に免許申請を却下されていた。
 
スター精密
★スター精密,米国ソングバード社との連携を強化
スター精密は、小型プリンタやブザーなどの部品を供給してきたが,加えて,マイクロホンなど携帯電話器用の部品の開発を手がけ,アメリカで話題となっている使い捨て補聴器「ソングバード」にマイクロホンとレシーバの納入を行っている。ソングバード社にはスタッフを送るなど密接な関係を築きつつあり,使い捨て補聴器自体の製造も引き受ける話を進めつつあるという。使い捨て補聴器ソングバードの日本上陸の日程は未定だが,準備は進められており,日本の補聴器市場に一石を投入できるかも?
 
★進む音源分離技術
音声のデジタル処理技術によって,騒音抑制,指向性など様々な技術が補聴器に生かされてきている。従来の騒音抑制機能から一歩進んだ音声分離技術の研究が名古屋大学理化学研究所生体ミメティックセンサー研究チームによって行われている。この技術が完成されれば,複数の人が話している状況から,それぞれの人の音声を分離することができるという。
 
★GNReSoundは,本社のコペンハーゲン集中化などリストラ策を発表
GN(Great Nordic)グループのジャスパー会長は,GNDanavox,ReSound,Beltone,Philips,Viennatoneなどを統合して,世界第2位の補聴器会社を作り上げてきた。このたび,本社機能のコペンハーゲンへの移動など,各ブランドの整理と統合,あるいはブランド名の維持などの方針などリストラ策を打ち出した。
 
★Phonakは,PicoForte3の開発を終了
乳幼児用耳かけ形補聴器として,広く使用されているPhonak PicoForteシリーズが,マイク孔の保護を兼ねたフックなど一部改良された。ハウジング(補聴器のケース)などもデザインも一新されるという。余談だが,Phonakは,カナダのUNITRONを買収し,補聴器アンプのメーカーARGOSYも傘下に収めた。GNReSound,Starkeyといったメーカーと競い,業界世界第2位を目指すという。
 
★シドニーオリンピック銀メダリスト 南アフリカのパーキン,センソを装用開始
昨年のシドニーオリンピック水泳競技で銀メダリストを獲得する活躍をした南アフリカの聴覚障害者,テレス・パーキンは,WIDEX社のセンソ最重度用フルデジタル補聴器を装用開始したという。P37か,P38だろうと思うが,正確な器種は不明。
 
★アメリカ マイクロオプティカル社が眼鏡形字幕提示装置を開発
アメリカ マイクロオプティカル社は,眼鏡のツルに反射型のLCDを付けることで,あたかも画面上に字幕が出るように見えるようになる装置のプロトタイプを発表した。映画館などでの映画鑑賞の際,聴覚障害者にとって字幕は不可欠だが,すべてのフィルムに字幕を焼き付けることが難しい場合や,個人的に字幕が必要な場面で使用できるという。また,今までは画面下側に字幕を付けていたために,画面の映像と字幕とを見る眼球の運動が必要だったが,個人のニーズによっては,画面上の話者に字幕を割り当てることも可能で,新しい字幕提示方法としても着目できるという。現在,アメリカの2つの劇場,4つの教室で試験使用中とのこと。
眼鏡型字幕提示装置

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特集
 「デジタル補聴器」 変遷から振り返って(2)

5)究極のアナログ補聴器
当時,DanavoxはSoundFocusという器種を販売していた。新聞広告でおなじみの大和田方式の前身というか,耳かけ形補聴器のボリューム部分が,音質調整器になっていて,補聴器装用者が環境に応じて高音を上げたり/下げたりできる仕組みになっている。いわば手動Tillアンプである。これもマーケットにインパクトを与えずに終わるが,私は今でも,この方法は優れていると思うし,なぜ今の補聴器がボリューム=全体的に下げるという発想にとどまっているのかが不思議と思うことがある。デジタルボリュームになっているのだから,ボリュームをさげることで,まず低音部をカットしていき,それでもうるさいのであれば全体にさげるといったボリューム操作を可変できる機能を付けても良いのではないだろうか(実用新案取れるかな?)。
1993年,OticonはMultiFocusPowerを出す。難聴者のラウドネスがノンリニアであることを最初に述べ,それに合わせていくという考え方は当初なかなか理解されなかったが,実際に適用してみると,多くの難聴者がスムーズに受け入れてくれたし,装用閾値的にも評価できる結果が出た。この補聴器自体はアナログ回路であるが,究極のアナログ回路,アナログ回路補聴器の栄冠の1台であると同時に,今後のデジタル補聴器の増幅方法を決定づける1台であった。Oticonは Personicシリーズ,E425,E400などの器種を出し続けるが,E38P,E39PLの路線を超える器種は出せずに聾学校の市場から離れていく。
 
1993年頃,日本にもTill増幅をするK-Amp登載補聴器が出そろってくる。笠松社長率いる新出StarkeyJapanは,耳あな形でK-Amp登載モデルを全モデルで用意し,DanaJapan A7K, 玉屋のクオリトーンK,R社のHI-18K,HB-71Kなどが出揃った。発売当初は,某メーカー人が「たかがAGCをちょっといじっただけじゃない」というセリフの通り,出は悪かったが,これもまた実際に適用してみると,多くの難聴者がスムーズに受け入れてくれたということもあり,急速にシェアを伸ばしていく。さて,K-Ampのチップには開発者である Dr.Killionのトレードマークである口ひげが描かれている。
 
同じ頃,アメリカのベル研究所の成果を製品化した補聴器,ReSoundが登場する。これは,プログラマブル補聴器であって,アンプはアナログである。ReSoundの特徴は,まずインサートイヤホンを使用すること,LGOBテストと呼ばれる難聴者個々のラウドネス感覚を測定することにある。通常のオージオメータの受話器は耳のシェル部分や外耳道部分など約6ccの複雑な形状を経由して音を鼓膜に届ける。この複雑な形状部分による音響変化の量は非常に大きく,受話器から同じ音圧の音を出していたとしても,鼓膜に到達するまでの経路での音響変化によって,鼓膜面上の音圧は人それぞれということになってしまう。それならば,インサートイヤホンを用い,より鼓膜に近い部分から音を出し,鼓膜面上の音圧をより正確に測定しようと言う画期的な考えが標準的に採用された。RedSoundシステムさらにラウドネスを測定することは,時間がかかるものの,当時の補聴器の音質設定が周波数特性にのみ固執していたものの,入力音の音圧に応じて増幅量を決めていこうという「帯域ごとに IO特性を変化させる方式」に果敢に取り組み,合理的な理論をうまくフィッティングに持ち込んでいる。この器種には,まさに当時の開発者の先見性を感じることができる。特にアメリカでシェアを拡大し,後にGNグループは,アメリカの市場拡大を見込み,ReSound社を買収,現在はGNReSound社として続いている。

右写真:ReSoundシステム
写真左側のユニットがラウドネス測定ユニット。調整装置からの音に対して,難聴者が「ちょうど良い」「少し小さい」などと書かれているボタンを押して応答する。右側のスポンジ状のものが,インサートイヤホン。

 
6)小型化と共にプログラマブル補聴器の完成
1994年,StarkeyJapanは,CIC(Completly In the Canal),DeepCanalとも呼ばれる外耳道深部にすっぽり入る非常に小さい補聴器の発売を開始した。わずかにマイクロドライバで調整できるボリュームがあるのみで,調整装置が付けられない。ゆえに,再度,デジタルプログラマブルへの要請が高まった。日本ではR社が HI21デジタルプログラマブル補聴器を市販する。これは,NEC9801シリーズのパソコンに HU01というインターフェース(パソコンと補聴器とを接続する装置)を用意した。さて,パソコンの世界は,当時は,NEC9801シリーズが日本市場を占有していたが,Windows 3.1の登場により,NECの牙城に黄信号が灯る。Windows 3.1の登場で世界や器種を超えて同じシステムが使えるようになったことを受け,PMCシステムのWindows版が1994年に登場する。これは後にnoahシステムとして発展する。
同年,Widexは Quattro,Duoと続いたシリーズをLOGOシリーズとしてまとめ上げる。特性メモリは2メモリ。メモリ数を2としたこと,「リモコンは意外と使われない」という事実から,リモコンを廃し専用のプログラマを用意したこと,L6,L8,L12,L32,LXというラインアップなど,Quattro,Duoの経験を実にうまく商品に生かした「プログラマブル補聴器の完成品」として,現在も市販され続けているロングセラー商品が生まれる。
さて,当時のプログラマブル補聴器を整理してみよう。プログラマには,@専用プログラマ(あるプログラマブル補聴器には、その器種特定のプログラマが必要),Aマルチ・プログラマ(数器種のプログラマブル補聴器が共通して利用できるプログラマ)がある。さらに@の専用プログラマは,プログラマと補聴器とを接続する方法に,3形態有り,a)ワイヤレス式(プログラマからの電波で補聴器がプログラミングされる),b)有線式(プログラマと補聴器とはコードでつながれれている),c)コンピュ−タ式(パソコンとインタフェースを用意し,パソコンの専用ソフトによって補聴器がプログラミングできる)に分類できる。
@a)にはWidex Quattro,Duo(AM電波を利用)
@b)にはSiemens INFINITY,Widex LOGO,
    Unitron Sigma,ReSound※,Bernafon PHOX
@c)にはPhonak PiCS,R社 HD-10,HI-21
AにはPMC参画器種として Siemens TRITON INFINITY,
    DanaJapan 143PRO alpha'I,Philips P74P,Phonak PiCSが存在した。
日本では市販されなかったが,その他に,@a)Philips Faro,@b)Starkey Trilogy,BeltoneComposer,Rexton Horizonとあり,いわば乱戦状況で,補聴器が異なると,その専用プログラマを探さなくてはならないといった非常に不便な状況であった。(※ReSoundは有線で専用のリモコンを調節し,そのリモコンと補聴器とは無線で接続する方式をとった)
 
noah
7)HIPROnoahの誕生
このようなプログラマ乱戦状況を解決するために,コンピュ−タ利用のプログラマ「HI-PRO」の統一規格をIECがまとめることになり,@コンピュ−タとプログラミングユニットはRS232Cによって接続される、Aプログラミング信号は−16Vから+18Vで行う,プログラマ内でコンピュ−タと補聴器とは絶縁するなどの規定がなされた。さらに,ベースになるソフトとして「noah」が提唱され,noahをベースに当初11のメーカーがアプリケーションを載せるという基本概念もできた。しかし,当時の日本には,Windowsが動くだけの十分な環境を整えたマシンを持っている箇所は少なく,かつNEC9801シリーズ上のWindowsでは,RS232Cの規格の違いから動作せず,日本での普及は未知数との言われ方もあり,普及には相当の時間を要することになる。

WH-AD200
日立LM-70
写真:日立 LM-70
小野測器CLEARTONE
写真:小野測器 CLEARTONE
8)日本の健闘
1994年,松下通信工業は、補聴器の調整機能の強化と音声のデジタル信号処理を含んだポケット形フルデジタル補聴器WH-AD200の市販にめどをつける。この補聴器では、@衝撃音の抑制:音声と衝撃音の時間的な音量の変動の違いを利用して衝撃音を検出し、衝撃音の音圧を下げる。A子音の強調:母音のパワ−がおおきいと子音が隠れてしまうことがあるが,この場合に子音だけを選択的に強調し、子音を聞きやすくできる。B3チャンネル分割,チャンネルごとに入出力特性が変更可能。C周波数分解能への対応:聞き取りに重要な周波数帯域だけを選択的に強調することができる。という特徴があった。
同じく1994年,NHK技研は話速変換技術を公表する。これは音声のピッチを保ったまま話速(話す速さ)だけを遅くする技術である。この話速変換技術は高齢者の聞こえにくさの軽減に役立つと考えられているが,わずかに日立が語学学習システム(LM-70)として取り入れた他には,民生品に生かされてはいない。世界にも話速変換を取り入れた補聴器がないだけに,補聴システムとして民生品化されることを今でも期待している。
1995年,R社もNEC9801シリーズの呪縛から解け,ハンディプログラマ HU-30,HU-30対応のHB-78高出力プログラマブル補聴器を市販開始する。その他,東北大チームのラウドネス補償型フルデジタル補聴器に「CLAIDHA」と名称が付き,市販のめどが立ったことが報告された。市販に向けて,補聴器の業界ではない小野測器がかかわることになり,業界への参入が話題となった。
さらにSONYもポケット形フルデジタル補聴器の市販を行う。
このように技術的な面では世界に飛躍できるものを持っていた日本であるが,日本でのマーケットすら取れず,かつ上記のすべて世界的には認知されず,結局,現在,どれもが打ち切り状態に近い。デンマークなど北欧諸国は早くから軽度であれ補聴器のニーズがあれば,補聴器を無償給付する制度を確立させた。このため,補聴器の需要と社会認知が高まり,一定の供給数が確保でき,開発の費用を生み出すことができ,主要な輸出産業にまで成長することができた。WIDEXはデンマークの輸出に貢献したということで政府から表彰を受けるまでに至っている。結局,自国の難聴者に補聴器を無償給付するという制度は,一時的に国家予算の支出を増やすことになるが,高齢化社会に不可欠な補聴器産業への投資となり,十分すぎるほどの利益を国家に戻している。介護ビジネスの成功は「福祉は税金を使うのみ」という考えが誤りであることの実証である。もし,日本が補聴器のニーズがある難聴者すべてに,必要な補聴器を無償給付している制度を作っていれば,おそらく,上記の日本の補聴器もそれなりの販売数を確保でき,次いで,それなりの販売数が確保できればコストダウン,さらに世界進出も可能になったのではないかとさえ思う。世界のソニーが補聴器業界から手を引いたのは,ソニーの責任と言うより,世界ブランド「SONY」を生かして補聴器を日本の輸出産業に育て上げる政策がなかったからと,私は考えている。
 
noah
9)noahの普及と新しいアンプの登場
1995年のIHS大会の展示では,補聴器とパソコンとを接続するHI-PRO,HI-PROを通して補聴器を調整するソフトnoahがほぼnoahの当初参加メーカーから出そろった。その他,SiemensがILLUSIONというWDRC回路付きの補聴器を展示した。AGC回路の動作開始点をより低入力時に動かすという発想や,Argosy社などが3チャンネル分割AGC回路を,さらにTELEX社はAdaptive Compression回路を紹介するなど,現在のデジタル補聴器の基礎となるアナログアンプ技術が頂点に達する。
 
DigiFocus
10)フルデジタル耳かけ形補聴器の登場
1995年9月 Oticonは,「DigiFocus」のリリースを発表する。DigiFocusは,486DXプロセッサ並みの能力を持ったDSP(当時はDAP(Digital Audio Prossecer)と呼んだ)を積み,7チャンネル分割で音声処理することができる補聴器として紹介された。さらに10月には,WidexがSenso,DanavoxはAudallionという器種名で,それぞれフルデジタル補聴器の開発にめどがたったことを公表した。結局,1996年の春,Widexが先陣を切ってSensoの市販に踏み切る。続いて,DigiFocusが市販開始。結局,Danavoxは,騒音抑制をすることまでを目的としたDSPを耳かけ形補聴器の外部に出す E34システムに似た形式を公表するが,市販開始を1997年と宣言する(結局,Audallionは市販に至らず,Danalogicの市販までDanavoxのフルデジタル補聴器の市販はない)。つまり,フルデジタル補聴器は2社先進,それもWidexが先頭を走り,かつ今までには考えられなかった大規模な広告をし,マーケットを引っ張っていくことになった。まさに「速さは強さ」を思い知らされた。
 
11)センソの成功
WIDEX社の当時の日本総輸入代理店日本補聴器販売株式会社は,センソの新製品発表会終了後のパーティをデンマーク大使公邸で行った。これはWIDEXの補聴器販売が,国家をあげてのプロジェクトになっているのではないかと想像をかきたてるイベントであった。
さて,センソが今のようなフルデジタル補聴器で大きなマーケットを獲得したのは,上記の広告戦略だけではなく,WIDEXが蓄積した多くのノウハウの結集があったからこそであると思う。
まず,センソグラムという名で補聴器本体から測定音を出し,インサートイヤホンの使用より,より現実的なイヤモールド等々を含んだ鼓膜面上の閾値測定を可能にしたシステム。WIDEXの特徴的な長時間リリースタイムのAGCで音の印象をソフトにしていること(後に長すぎるとの評価があり,新製品になるに従い,リリースタイムを短くしていった)。EDRCをとりながら,ハウリングの危険性を防ぐために,「Fb」と呼ぶニーポイント近傍のゲインを落とすシステムを取り入れ,EDRCの良さと問題点をうまく妥協させたこと。3チャンネル分割,プログラムメモリを設けない,CFの組み合わせは数パターンに限るなど,操作を複雑にすることなく機能をしぼりこんだこと。補聴器とプログラマの接続を容易にし,従来のプログラマブル補聴器をも調整できるようにして,調整者の負担を少なくしたこと。従来の補聴器の名前が非常に長く,すべてが日本人になじみの低い英語であったことに対し,センソも日本語ではないが,短く音印象が良いので覚えやすかったこと。補聴器自体を全面に出す広告ではなく,シャチを採用したイメージ戦略で押すなど,過去の他社を含めた成功を非常にうまく取り込んでいる器種であった。当時のプログラマLP2自体の調整項目は,最新のフルデジタル補聴器に比べれば非常に少なく,今から思えば,「これでどうして何とかなっていたのだろうか」という印象さえ持ってしまう。当初,センソを装用している人から「遠くの人の声は良く聞こえるのだけれど,近くの人の声が小さく聞こえてしまって良く聞こえない」という聴印象を多く聞いた。EDRCがうまく働いている一方で,長時間リリースタイムのAGCが悪さをしているようなケースだが,これも「Fb」で逃げられる=入力音が小さいときのゲインを落とし,かつ全体的なゲインを上げればよいという解決策が取れることなど,少ない機能が実にうまく機能できる点に,センソの設計の優秀さを感じた。センソには耳かけ形の各器種に,通常のマイクの器種と指向性マイク登載の器種が用意されている。欧米では指向性マイクが付いている器種の方が,通常のマイクの器種よりも多く使われていると聞く。日本では,指向性マイクの評価がなぜか乏しく,この点については,別項で追述したい。 
 



【用語解説】

インサートイヤホン
インサートイヤホン
通常のオージオメータの受話器は耳のシェル部分や外耳道部分など約6ccの複雑な形状を経由して音を鼓膜に届ける。この複雑な形状部分による音響変化の量は非常に大きく,受話器から同じ音圧の音を出していたとしても,鼓膜に到達するまでの経路での音響変化によって,鼓膜面上の音圧は人それぞれということになってしまう。それならば,より外耳道の深部,より鼓膜に近い部分から音を出し,鼓膜面上の音圧をより正確に測定しようと言う考えがインサートイヤホンのアイディアである。
現在,欧米ではオージオメータの受話器との較正表もできていること,それゆえオージオグラムに直接書き込めること,補聴器の装用閾値等との比較がより現実的になること,受話器の装用をいやがる子どもであっても裸耳聴力の測定が可能になることなどから広く使われている。日本では,日本聾話学校で良く用いられており,使用報告も学会等でなされているので参考にされたい。
E-A-RTONE 3A
E-A-RTONE 5A
写真:E-A-RTONE 5A
従来は E-A-RTONE 3Aという製品が多く使われていたが,最近,E-A-RTONE 5Aが市販となり,徐々に置き換わっていくものと思われる。3Aは,装用状態の写真にあるよう,音を出すスピーカからチューブが伸び,ちょうど黄色の耳栓(良く飛行機搭乗中や勉強時に騒音をさげるために,ぎゅっと絞り込んだ状態で外耳道内に挿入し,徐々にふくらむことで耳栓効果が増大するような耳栓)の中心部に穴をあけ,チューブが差し込まれている製品である。5Aはスピーカ部が小さくなり,チューブの長さが短くなっている。
重度用センソを除くセンソなど一部のフルデジタル補聴器には,内部に閾値検査用の音源を内蔵している器種があり,その音で閾値検査を行うことができる。そうすれば,補聴器装用状態での最小可聴閾値を測定でき,補聴器フィッティング上,より正確な閾値データを得ることができる。このため,新しく市販されるデジタル補聴器には,およそ,この機能が加わっている器種が多い。
この考えは,かつて,大和田法として知られている SPLオージオメータを用いた閾値検査と同じ考えである。筑波大学附属聾学校でも盛んに行われたが,SPLオージオメータを用いた閾値検査では,装用者のイヤモールドを用いて閾値検査ができ,SPLでの閾値を補聴器特性表にプロットし,60dB入力時の周波数特性をその閾値に合致するように調整することで,60dBSPLの装用閾値を得ることができる。しかし,高音域の装用閾値として,60dBSPLフラットは満足できる値ではないし,耳かけ形や耳あな形補聴器のように,形が変わってしまえば,先ほどの原理は通用しなくなってしまい,ear-level補聴器の広がりと共に,このやり方はすたれてきた。一時,近畿の某聾学校では,耳かけ形補聴器の中のレシーバと,オージオメータの出力を結線し,耳かけ形補聴器用の,その子自身のイヤモールドを用いて,SPLグラムを書く試みもなされた。しかし,閾値測定用のレシーバと,実際に装用する補聴器のレシーバのインピーダンスが異なると,計算結果が合わなくなることがあり,この方法も一時で終わった。

★インサートイヤホンに関する技術資料は下記からダウンロードできる。
E-A-RTONE® Insert Earphones  http://www.aearo.com/html/products/aud_sys/aud02.htm
 
HI−PRO
デジタルプログラマブル機能を有する補聴器とコンピュータとを接続するためのインタフェース(媒介装置)。多くの補聴器メーカーが規格を統一しており,HI-PRO対応の補聴器であれば,メーカーを越えて,補聴器とコンピュータとを接続できる。HI-PROの販売は各補聴器メーカーで取り扱う。基本的な接続コード,アダプタなど込みで 120,000円程度。また,GNDanaJapanが販売しているAuricalのように,HI-PROが内蔵されている複合測定器もある。購入の際,ご注意を。統一が図られているはずの HI-PROだが,実際は,補聴器のメーカーごとに補聴器側の接合部が異なるために補聴器とHI-PRO間のケーブルが異なっていたり,同じメーカーであっても,器種ごとにケーブルが異なるなど,不便な点も多い。この点は,せめて数種類の規格の中で選択するようなシステムにしてもらいたい。結局,各メーカーごと,そのうちの製品バリエーションによって,10本以上ものケーブルや,補聴器の大きさに応じた接合カプラなどをじゃらじゃらと探さなくてはならない。
 
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HIMSA(Hearing Instrument Manufacturers' Software Association)社が提案した補聴関連ソフトの統一基本ソフト。顧客のデータを一括管理できたり,noah上にインサ−トイヤホンによる聴力測定などの機能を載せることができる。日本語版 2.0cが最新バージョンとなっており,各メーカーからも供給されている。noahソフトは基本ソフトであり,どのメーカーからの供給を受けてもソフトは共通である。実際は,noah上に聴力測定用ソフトとか,補聴器調整用ソフトを載せる必要がある。これら,noah上に載せる補聴器調整用ソフトは,各補聴器メーカーが独自に作っており,ほとんどの補聴器メーカーは無償または比較的安価で配布している。
現在,noahはバージョン 3.0 が開発済みで,既に欧米では利用されている。日本での使用は,おそらく言語翻訳の問題だけではないかと思うので,もうしばらくすると,日本語版 3.0 も出るであろう。
noah 3
日本語版noahソフトは,下記で扱っている。原則として,各補聴器メーカーを通じての購入になる。メイトリックス社(TEL:03-5689-3535),定価:アフタ−サポ−ト付き 160,000円。「アフタ−サポ−ト無し」のnoahソフトは,メイトリックス社で扱っていない。
詳しくは,以下のホームページを参照されたい。http://www.himsa.com/
 
Adaptive Compression, Adaptive AGC
日本では「適応型AGC」と訳す。415号の用語解説欄でAGC回路の場合のアタックタイムとリリースタイムについて解説した。アタックタイム(動作時間)は短ければ短い程良いが,リリースタイム(復帰時間)は,短すぎるとポンピングを起こすし,長すぎれば次の音が聞き取れなくなる。そこで,強大音の入力時間(長さ)によって,リリースタイムを調節しようという考えが生まれた。例えば,地下鉄の中にいるのであれば,強大音が持続するのでリリースタイムを長く取り,ちょっと物を落としたというような衝撃音の場合には,一瞬,出力を落とし,最小のリリースタイム,つまりスグに復帰させようとする。このことで,環境の変化に応じて,強大音によるやかましさを抑えながら,かつ明瞭度を維持するということが可能になる。このような適応型AGCは,補聴器に内蔵されている場合もあるが,FM補聴システムのFMマイク側に内蔵されていることが多い。FMマイクへ入力される音声の音圧は話し手や装着位置により大きく変化し,かつ落とすようなこともあり得るわけで,そうした意味でFMマイクに適応型AGCは不可欠の回路となっている。

【目次】



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