公開講演会
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「 手 話 法 と 口 話 法 の 歴 史 」
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【講演テーマ】
1月21日(金)「ミラノ会議とエドワード.M.ガローデット」(欧米聾教育史から)
口話法を最良と決議したミラノ会議、そして、その考え方に異議を唱えたエドワードの考え方を、400年にわたる欧米の聾教育の歴史から、私なりに改めて考えてお話します。
1月22日(土)「聾口話推進会と大阪市立聾学校」(日本聾教育史から)
欧米の後を追い、手話を廃して口話法を推進した日本の考え方、そして、その考え方に異議を唱えた高橋潔を中心とする考え方を、120年間の日本の聾教育の歴史から、私なりに改めて考えてお話します。
日 時 : |
1月21日(金)19:00〜20:45(受付開始18:30)
1月22日(土) 9:30〜12:00(受付開始 9:00)
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会 場 : |
21日 神奈川県民サポートセンター(横浜駅下車、徒歩約5分)
22日 健康総合福祉センター4階ホール(桜木町駅下車、徒歩約1分)
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参 加 費: |
1回券 1500円(当日券2000円)
2回券 2500円(当日券3000円)
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申込方法: |
ご住所、郵便番号、氏名、FAX番号をご記入のうえ、下記までFAX下さい。さらに,1週間以内に下記の銀行口座に参加費をお振り込み下さい。入金確認後チケットをFAX送信いたします。日本手話通訳付きです。
(振込先) |
第一勧業銀行 鴨居支店 普通 1324146
聾史研究横濱団 会計 原田妙子
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照 会 先: |
聾史研究横濱団事務所 FAX:045-435-3577 |
【目次】
特集
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V R A に よ る 乳 幼 児 聴 力 測 定
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乳幼児のきこえの程度を測定する技能は,よりよい補聴のために,欠かすことのできない技能と言えるでしょう。今回,特集として,乳幼児聴力測定の中で最も重要な測定法であるVRAと,この測定法・測定機器,併せて実際の現場での導入例をご紹介したいと思います。
1.乳幼児聴力測定が困難な理由とその対処
乳幼児の聴力測定は,対象児の音に対する応答を,測定者の判断によって読みとり,閾値を推定することに困難さがあります。この困難さの内容としては,下記のような事項をあげることができるでしょう。
@測定に対して協力的ではない
→落ち着ける環境が必要
(測定室の広さ・明るさ・子ども向けの内装・親がいること)
(測定前に被検児とラポートを取る余裕)
(まずスピーカ法で測定し,必要に応じてレシーバで測定する)
→短時間で測定を切り上げる必要がある
(1回の測定時間は10分が限度,これを何度か繰り返す)
(「めあて」を立てた測定時間配分)
→興味が持続しない
(被検児の興味を引きつけられる報酬,強化子を用意する)
(被検児が飽きたら,無理強いしない=次回の測定が困難になる)
A音への応答ができない
→裸耳での閾値測定にこだわらない
(最初は補聴器装用下での測定から始める)
→はっきりとわかる刺激音から順番に
(低くて強めの音で強化し,下降法での測定を試みる)
(右:250Hz→1kHz→3kHz,次に左の3周波数など音提示の順序の融通を考える)
→子どもの反応を短時間で見抜く眼力を
(音出し者と子どもの観察者は別の方が良い場合もある)
→測定者が判断する必要がある
(予想や事前の訴えを除去し,客観的指標を見つけることに努める)
→発達的に無理な応答を要求していないかを確認する
(発達に応じた音への反応様態を考えて測定手法を柔軟に変える)
B正確な閾値が出せない
→最初から正確な閾値を出そうと欲張らない
(短時間の測定を積み重ねて,推定の閾値を出していく)
→裸耳での閾値測定にこだわらない
(補聴器装用下での閾値から,裸耳閾値は推定できる)
→検査後,親や教師の訴えとの一致・不一致を確認する
(不一致度が大きい場合は,なぜかを考え,測定ミスを防ぐ)
2.乳幼児聴力測定
1)測定方法の種類
発達に応じた聴力測定法を選ぶ必要があります。
目安
0歳代 |
聴性行動反応聴力測定(BOA) |
6力月〜18力月 |
視覚強化式聴力測定(VRA) |
1歳〜3歳 |
条件詮索反応聴力測定(COR) |
2歳〜4歳 |
遊戯法とピープショー測定 |
3歳以上 |
遊戯法と通常の聴力測定 |
2)表記方法
レシーバを用いた場合は,○−○,×……×などの表記法に従います。スピーカ法での測定の場合も,裸耳△,装用時▲で線でつながない表記法に従います。スピーカ法で装用閾値を測定した場合の表記法は,規定されたものはありませんので,各自がわかりやすい表記をしても構いません。筆者は,右の装用時閾値をマークなしの直線で,左の装用時閾値をマークなしの点線で表しています。
3)測定の目的=補聴状態の評価
医療現場での「診断」を中心とした聴力検査の目的と教育現場での聴力測定には目的が異なることも念頭に置くべきだと思います。私たちは診断後に,教育手段の確保と教育方法や教育の場の選択をするために,その子の保有聴力を評価することが主務だと思います。
聴力測定は聴覚障害児が装用している補聴器が補聴の役割を果たしているかどうかを評価するために行います。この場合,(できれば左右別々の)音場装用閾値を測定します。多くの施設等で乳幼児の裸耳の聴力を測定しようと苦労している話を聞きますが,乳幼児の場合は,音場での装用閾値を測定することに重きをおきましょう。裸耳の閾値を測定しない理由には,以下の2つの理由があります。
ア |
) 重度の聴覚障害児の場合,十分な音反応を裸耳で出せるだけの音圧の音を出せない。仮に聴力が110dBの乳幼児の場合,子どもが「聞こえた」と意識できるレベルは,閾値より+20dB以上でしょう。乳幼児聴力測定では,十分に聞こえるであろう音を出して,反応を引き出す必要があります。通常の音場では130dBの音は出力不能ですし,仮に出たとしても振動を伴いますので,音反応とは言えなくなります。また,何より,立ち会う保護者に心理的な落ち込みを与えることにもなりかねません。
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イ |
) 裸耳の閾値は装用閾値から推定可能である。乳幼児の閾値は,あいまいな推定値にならざる得ません。装用閾値に補聴器利得を加えた値は,裸耳の推定値として十分に教育臨床的に使える閾値です。教育的には,裸耳の閾値より装用閾値の方が意味を持ちます。左右別々の装用閾値をだすことができれば,おおよその左右別々の裸耳の推定閾値を出すことができます。
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3.視覚強化式聴力測定(VRA)
CORの手法をもとにしていますが,CORより適応年齢が低く,またより定量的な測定ができます。CORでは,2つのスピーカと2つの強化報酬刺激を用意し,原則として左右への振り向き反応を指標にしますが,重度の子ども,あるいは補聴器装用下では左右の音源定位は困難であることから,1つのスピーカと1つの強化報酬刺激で十分と思われます。また,VRAではBOAと同様,子どものあらゆる反応を指標としてとりあげます。その上で,その反応を視覚的報酬によって強化していく点にCORとの違いがあります。そうした意味では,聾学校などの聴覚障害児を扱う機関では,CORよりVRAとしての測定法が,より適当だと考えます。
適応年齢としては,おおよそ5カ月以降,1歳半以下程度が対象となります。この検査法では最早期から定量的な検査ができることから,この検査法の修得は欠かすことのできない技能といえるでしよう。
VRAでは光強化報酬刺激と音刺激を出すタイミングが測定の成否を決めると言っても良いかと思います。私は,おおよそ以下の手順で行いますが,熟達者の測定を観察し,子どもの反応によって,音刺激や光による強化&報酬を出すタイミングを変えることが肝要でしよう。
@裸耳の閾値は測定せず,最初は両耳補聴器装用下で行う。
A音刺激(低音の強めの音)を出し,約1秒後に光強化刺激を光らす。
→最初は,振動が響く低音&やや強めの音にして,音に気付かさせる。
BAを2,3回繰り返し,子どもの反応を観察する。
→この際,音に対してスッと反応するかどうかを観察する。
→音に対してスッと反応しないようならば,音圧を上げてみる。
C音刺激を出し,子どもが何らかの反応を見せたら,すぐに光刺激(報酬)を光らす。
D光刺激に気付いたら,「う〜ん,そうだね」などとほめる(報酬)。
E音刺激の音圧をわずかに下げ,子どもが気付いたら光刺激を光らす。
FCのレベル−30dB程度の音圧から,
子どもの気付き反応が出るまで徐々に音圧を上げる。
G日を変えて,左右別々に装用閾値をとってみて,左右差を考えてみる。
4.VRAの装置
VRAは特別な装置を必要としません。通常の音場での聴力測定の装置と,光による強化&報酬の装置があれば良いのです。光刺激は裸電球でもよいのですが,ピープショーに転用できる装置を自作することをお奨めします。以下は,ピープショーでも使える装置例です。側面を切り抜いたような木の箱を用意し,そこに色の濃いアクリル板を貼ります。箱の中には,赤色のパトライトの他,白熱球を付け,中には人形やミニカーなどを入れます。これらが点灯していないと箱の中は見にくいけれど,点灯すると良く見えるようになる色のアクリル板を選びます。VRAとして使用するときは,@の切替スイッチを図中で<上>にセットします。すると,Aのボタンを押すことによって,点灯し,中が見えるようになります。Aのスイッチは大きめの押しボタンスイッチとし,足で踏むようにします。ピープショー装置(PS)として使用する場合は,@の切替スイッチを図中で<下>にセットします。音を出している最中はAのボタンを踏みます。対象児がBのボタンを押すことによって,点灯し,中が見えるようになります。
VRAで使用するときのタイミング例。
1) |
音→約1秒→を踏む(反応の提示と強化)
音に気付くようになったら,
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2) |
音→気付いたら→Aを踏む(反応に対する報酬)
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VRAの手法を用いることで,聴児ならば,6カ月を過ぎた頃から,500・1k・4kHzで30dB程度の閾値を出すことができます。従って,VRAの閾値で30dB以上であれば,経過観察を続けること。聴覚障害児の場合ならば,VRAでの測定値−15〜−30あたりを真の閾値として想定できると思われます。VRAでは子どもの音の気づきを見るわけですから,裸耳での測定は余程聴力的に良い場合に限り,重度の子どもの場合は,装用閾値を中心に測定し,<装用閾値+補聴器ゲイン=裸耳聴力>として裸耳聴力を推定します。左右別々の装用閾値を測定できれば,左右別々の裸耳聴力の推定もできます。VRAは乳幼児の聞こえの評価には欠かすことのできない測定法ですので,聴児の測定で技能を磨くことも大切でしょう。
仙台市やまぴこホーム 伊藤洋子(言語聴覚士)
当施設の既存の聴力検査装置はRionのAA−80N(スピーカー法,ボタンを押すと電車が走る),AA−66D(通常の純音聴力検査装置)の2つを中心として使っています。しかし,この2台のオージオメータでは,検査の協力が得られず条件付けの難しい0〜1歳台の子どもや重複障害児の測定には不向きでした。数年前,筑波短大の講習会で立入先生に相談したところ,「手作りで,安く簡単にできる方法がありますよ」と,このVRA装置の実物と配線図を紹介していただき,98年の秋に製作しました。その際の各材料とおおまかな費用,製作の過程,使用しての感想など報告致します。
(1) |
購入した物リスト
品名
パトライト(赤)
板(厚さ1.5cm)
アクリル板(黒)
掛け金,釘など
小電球(2個)
押しボタン
塗装スプレー
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金額(円)
5980
4000
1900
830
240
480
480
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合計
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13640
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円
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DIYのホームセンターで全部購入しました。上記のほか,ソケット,コード,スイッチ(on-off,切り替え)コンセントなども使用しましたが,電気製品の廃材等から間に合わせたので,それらの費用はかかりませんでした。
(2)製作に当たって
実際に作ったのは園長です。配線図と写真を渡し,使用方法について説明し,製作を依頼しました。ボックスは順調に出来上がっていったのですが,電気の配線は難しかったようで,知り合いの電気店の人に聞いたところ,運良く配線そのものもやってもらえたそうです。内装は幼児月刊絵本のキャラクターを切り抜いて貼り付け,縫いぐるみを入れました。(ピカチュウ,アンパンマン,キティちゃんなどなど)屋根は取外しができるので,中の人形に飽きた時には,他のものに替えたりもできます。業務の合間に製作し,約2週間で完成しました。
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写真:屋根を取ったところ
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(3)実際の使用について
オージオメータはAA−80Nを使用,電車が入っている装置の上に,ボックスを置き,その横に子供を座らせます。検査の手順については,「教育オージオロジー実習テキストjのVRAの測定方法に沿って行っています。(上記)
(4)使用してみての感想
この検査法の最初の対象となったのは2歳の重複障害の子ども(発達レベル7〜8カ月,座位十,歩行−)でした。それまでAA−80Nでの検査を試みましたが,電車の動きを目で追うことが困難で強化刺激とはなりませんでした。早速VRAを試みたところ,すぐに光刺激に対して探索行動が見られました。 数回繰り返すうちに「音刺激が入ると期待してボックスを見る」という刺激と報酬の条件づけが可能になりました。その後,日を替えて数回検査をした結果,60dBで再現性のある反応が得られるようになり,耳鼻科に紹介したところ両耳に耳垢が溜まっていることがわかり,除去後の反応は40dBと閾値が下がりました。その他に,ピープショウの装置としても使っています。2〜3歳台の子に通常の聴力検査を行う場合「音が聞こえたらベグをさす」では興味を持続させることは難しいようです。ボックスの前にある「ボタンを押すと中のおもちゃが見える」であれば,その年代の子どもにとっては十分なご褒美になり,音場での検査と方法は一緒なので自然に受話器を使った検査にのってくれます。乳幼児の聴力検査は,発達のレベルに応じた測定方法を選ぶ必要がありますが,市販の検査装置でそれをカバーしようとすると高額な予算が必要となります。しかし,VRAの装置や方法は簡易で安価であること,また報酬刺激も子供の好みに応じられるなど利点はいろいろあげられます。既存の検査装置と合わせて使うことで,検査の対象児の幅が広がったことが実感できました。
【目次】
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