1999年12月25日(第2・4月曜日発行)


News Source of Educational Audiology

聴能情報誌 みみだより 第3巻 第380号 通巻465号


編集・発行人:みみだより会、立入 哉 〒790−0833 愛媛県松山市祝谷5丁目2−25 FAX:089-946-5211
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【目次】第380号

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講演会案内
  移動母子教室のお知らせ

 このたび神戸市立ひばり学園で財団法人聴覚障害者教育福祉協会主催の移動母子教室を下記のとおり実施することになりましたのでご案内申し上げます。今回は『聴覚障害児への家族の関わり』〜子どもの自立を援助する家族の関わり〜をテーマに、聴覚障害児をもつ親としてそれぞれの時期に、どのように子どもとかかわっていけばよいかについて講師に草薙進郎先生をお招きし、ご講演いただきます。

T.日 時   1月16日(日)10:00〜12:00
U.場 所   神戸市立心身障害福祉センター3F大会議室
  神戸高速新開地駅,地下鉄湊川公園駅下車,兵庫税務署隣
V.主 催   (財)聴覚障害者教育福祉協会,神戸市立ひばり学園
W.講 師   草薙進郎先生
  略歴=1958年、東京教育大学特殊教育学科卒業
      川崎市立ろう学校・愛媛大学・東京教育大学・筑波大学を経て、
     筑波大学名誉教授,現国際学院埼玉短期大学教授
X.参加費   無料
Y.幼児を連れての入室はご遠慮ください。
Z.手話通訳を用意しております。
[.参加申し込み
 1月13日(木)〔必着〕までにハガキ・FAX・電話でお申し込み下さい。 会場の都合上、先着30名で締め切らせていただきます。尚、当日参加の受付はいたしませんので、あらかじめご了承下さい。
   申込先  〒652-0802 神戸市兵庫区水木通2-1-10 神戸市立ひばり学園
 移動母子教室事務局(担当 伊藤)FAX:078-577-6211

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ご案内
 障害学研究会関東部会第6回研究会

日 時   2月21日(月)午後6時〜9時
場 所   東京都障害者福祉会館(地下鉄三田・JR田町駅より徒歩)
  TEL:03ー3455ー6321 FAX:03ー3454ー8166
テーマ   「障害の定義と知的障害(仮題)」寺本晃久(都立大学大学院)
  「近代日本における『標準化』の思想ーろう者認識ー研究序説」
   本多創史(一橋大学大学院)
会 費   1000円、学生 500円
  *PC要約筆記と音声=手話通訳があります。

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字幕付き影絵
  角 笛 シ ル エ ッ ト 劇 場
 日時  2月11日(金・祝)開場13:30 開演14:00 終演予定15:40
 開場  横浜ラポール(新横浜駅より徒歩10分:連絡バスあり)
申込方法  1月29日(土)まで(必着)に,ハガキ・FAXまたは直接,横浜ラポールでお申し込みください(4名まで申込み可)。「字幕付き影絵」と明記の上,参加希望者全員の氏名,年齢,代表者の郵便番号・住所・電話番号,障害のある万は内容もご記入ください。
 入場無料。定員300名,応募者多数の場合は抽選。
応募先  〒222−0035 横浜市港北区鳥山町1752
 横浜ラポール「字幕付き影絵」係 FAX:045−475−2053
 主催  障害者スポーツ文化センター横浜ラポール
 社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団

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関連学会誌聴覚障害関連論文

★Audiology Japan 42(6),1999
「人工内耳装用幼児のマッピングー初回マッピングを中心に−」
 山口忍,川野通夫,藤沢直人,中島志織,藤木暢也,塩見洋作,内藤泰,本庄巌 667-673
「1〜3歳児を対象とする幼児聴力検査の正常聴力開値について」
 内山勉,伊集院亮子,天道文子,森美和子,徳光裕子 674-681
「近年発生した先天性風疹症候群の臨床的検討」佃朋子,工藤典代 682-688
「Nucleus22人工内耳装用児による母音・子音の音響的変化について」
 −失聴直後から術後18カ月迄の7年間の検討−
 吉川智子,大山健二,永渕正昭 689-696
「小児高度感音難聴症例に対するデジタル・フィードバック補聴器の臨床効果」
 間三千夫,硲田猛真,藤村聡,齋藤優子,嶽良博,榎本雅夫 717-721

★耳鼻臨床 92(12)1283-1290,1999
「若年性原因不明両側性感音難聴の予後」服部 浩

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公開講演会
 「 手 話 法 と 口 話 法 の 歴 史 」

【講演テーマ】
1月21日(金)「ミラノ会議とエドワード.M.ガローデット」(欧米聾教育史から)
 口話法を最良と決議したミラノ会議、そして、その考え方に異議を唱えたエドワードの考え方を、400年にわたる欧米の聾教育の歴史から、私なりに改めて考えてお話します。

1月22日(土)「聾口話推進会と大阪市立聾学校」(日本聾教育史から)
 欧米の後を追い、手話を廃して口話法を推進した日本の考え方、そして、その考え方に異議を唱えた高橋潔を中心とする考え方を、120年間の日本の聾教育の歴史から、私なりに改めて考えてお話します。

日 時 : 1月21日(金)19:00〜20:45(受付開始18:30)
1月22日(土) 9:30〜12:00(受付開始 9:00)
会 場 : 21日 神奈川県民サポートセンター(横浜駅下車、徒歩約5分)
22日 健康総合福祉センター4階ホール(桜木町駅下車、徒歩約1分)
参 加 費: 1回券 1500円(当日券2000円)
2回券 2500円(当日券3000円)
申込方法:  ご住所、郵便番号、氏名、FAX番号をご記入のうえ、下記までFAX下さい。さらに,1週間以内に下記の銀行口座に参加費をお振り込み下さい。入金確認後チケットをFAX送信いたします。日本手話通訳付きです。
  (振込先) 第一勧業銀行 鴨居支店 普通 1324146
聾史研究横濱団 会計 原田妙子
照 会 先: 聾史研究横濱団事務所 FAX:045-435-3577

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関連新刊図書紹介

★障害者の機会平等と自立生活:定藤丈弘その福祉の世界
 定藤丈弘著 明石書店 2800円 4-7503-1234-7

★障害者白書:平成11年版 ノーマライゼーションの世界的展開
 総理府内閣総理大臣官房編集 大蔵省印刷局 1900円 4-17-217711-5

★知的障害と教育:母親ときょうだいのための障害児教育学入門
 島田有規著 朱鷺書房 1600円 4-88602-617-6


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研究会開催
 電子情報通信学会教育工学研究会

日時  1月21日(金)10:30〜17:00
会場  機械振興会館地下3階2号室
議題  −障害者教育,一般−
 7. 聴覚障害者のための音声認識を活用したリアルタイム字幕挿入システム(1)
 小林正幸・西川俊・石原保志(筑波技短大)
 8. ネットワークを利用した不登校・障害児支援のためのカウンセリング・システムの構築
 藤野 博(東京学芸大)・渡部信一・菅井邦明(東北大)
 9. 高度情報社会における聴覚障害者の企業内教育
 大石忠(筑波技短大)・菊地康子(日立)
10. 視覚障害・聴覚障害を考慮したネットワーク・コミュニケーション・メディアの可能性と問題点
 皆川洋喜・西岡知之・小林真・三好茂樹(筑波技短大)
11. 聴覚障害学生のための主体性を育む教育に関する一考察
 内藤一郎・加藤伸子・村上裕史・皆川洋喜(筑波技短大)
12. 重複障害児の学習を支援する意志伝達装置の活用事例
 下川和洋(都立府中養護学校)・小澤邦昭(日立)

 ☆今後の予定   2001年1月20日(土)障害者教育,一般
  日本聴覚障害・教育工学研究会共催 筑波技短大

 照会先:宮寺庸造(東京学芸大)FAX:042-322-9898 E-mail:ieice-et@u-gakugei.ac.jp

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字幕ニュース
 今春から,NHKニュースに字幕付く

 11月24日,衆議院逓信委員会におけるNHKの決算に対する質疑の際,矢島恒夫議員がNHKニュースに対して字幕を付けることにして,NHKの海老沢勝二会長に質問をした。同会長は,「メインアナウンサーの単独でのニュース部分には今の技術で字幕が付けられる。メインアナウンサーについては,来年度できるものからやっていこうと思う。」と答弁した。これまで100%目標(97年郵政省の字幕放送拡充の行政指針)の対象外であったニュースに字幕を付けることが決まったことは,字幕に対する認識が高まっていることの証とも言える。
 このNHKの動きは,全難聴・全日本ろうあ連盟などによる根強い要望運動が実った成果であり,運動を進めてこられた各氏に拍手を送りたく思う。今後,民間放送局,BSなどの衛星放送,デジタル放送など多くの通信機関にこの動きの影響が伝わっていくことを願いたい。

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字幕入り映画
  G T O   日本語字幕入り映画

 98年7月に反町隆史主演でスタートしたTVドラマGTO(グレート・ティーチャー・オニツカ)。タイトルからして従来のいわゆる“教師モノ”をはるかに逸脱したこの作品は,放映と同時にたちまち大反響を巻き起こし,日本全国の学校でこんな先生いたらいいのに!と切望する中高生が続出した。
あらすじ
 3週間の代用教員として北海道,幌比内町の北文舘学苑に赴任した鬼塚は,そこで問題児が集まるクラスを受け持つ。生徒たちは鬼塚の授業をボイコット。さらにわがまま放題の理事長の娘には,振り回される始末。こんな生徒達を相手に一騒動巻き起こす鬼塚。そこヘスクープ狙いの美人報道記者が現われ,警察まで出動,事態はますます悪化する。

 上映劇場  日程   TEL  FAX
 丸の内東映
 横浜伊勢佐木町東映
 梅田東映
 京都大宮東映
 名古屋東映
 福岡東映
 札幌東映
 2/5(土)・6(日)
 1/30(日)・31(月)
 1/26(水)・27(木)
 1/22(土)・23(日)
 1/7(金)・8(土)
 1/15(土)・16(日)
 1/11(火)・12(水)
 03(3535)4741
 045(261)3800
 06(6345)7096
 075(841)3714
 052(971)3440
 092(281)0757
 011(231)2568
 03(3563)1777
 045(253)6838
 06(6345)7296
 075(841)3059
 052(971)4012
 092(281)0776
 011(231)2569

 照会先:東映(株)映画営業部 TEL:03-3535-7179 FAX:03-3535-7186

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公演のお知らせ
 D−SPIRITS 5周年記念企画第一弾
 R4公演<デフ・オムニバス・シアター>【聾唖万華鏡】

日 時 : 2000年2月26日(土)12:00開場,13:00開演
会 場 : 名古屋市青少年文化センター(アートピア)ナディアパーク内11階
地下鉄名城線「矢場町」下車徒歩約5分
参加費 : 前売券 一般2500円,高校生1500円,
当日券 一般3000円,高校生2000円
申込方法: 前売券代金を銀行振込し、【住所・FAX・枚数】を下記にFAXする。
振込先 東海銀行鈴鹿支店 店番537口座番号 普通預金1198985
口座名義 R4 公演企画チケット代表者 伊藤 金吾
申込・振込確認後、参加チケットを送ります。
照会先 : R4公演企画チケット伊藤金吾 FAX:0593−83−5656

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特集
 V R A に よ る 乳 幼 児 聴 力 測 定

 乳幼児のきこえの程度を測定する技能は,よりよい補聴のために,欠かすことのできない技能と言えるでしょう。今回,特集として,乳幼児聴力測定の中で最も重要な測定法であるVRAと,この測定法・測定機器,併せて実際の現場での導入例をご紹介したいと思います。

1.乳幼児聴力測定が困難な理由とその対処
 乳幼児の聴力測定は,対象児の音に対する応答を,測定者の判断によって読みとり,閾値を推定することに困難さがあります。この困難さの内容としては,下記のような事項をあげることができるでしょう。

@測定に対して協力的ではない
 →落ち着ける環境が必要
(測定室の広さ・明るさ・子ども向けの内装・親がいること)
(測定前に被検児とラポートを取る余裕)
(まずスピーカ法で測定し,必要に応じてレシーバで測定する)
 →短時間で測定を切り上げる必要がある
(1回の測定時間は10分が限度,これを何度か繰り返す)
(「めあて」を立てた測定時間配分)
 →興味が持続しない
(被検児の興味を引きつけられる報酬,強化子を用意する)
(被検児が飽きたら,無理強いしない=次回の測定が困難になる)

A音への応答ができない
 →裸耳での閾値測定にこだわらない
(最初は補聴器装用下での測定から始める)
 →はっきりとわかる刺激音から順番に
(低くて強めの音で強化し,下降法での測定を試みる)
(右:250Hz→1kHz→3kHz,次に左の3周波数など音提示の順序の融通を考える)
 →子どもの反応を短時間で見抜く眼力を
(音出し者と子どもの観察者は別の方が良い場合もある)
 →測定者が判断する必要がある
(予想や事前の訴えを除去し,客観的指標を見つけることに努める)
 →発達的に無理な応答を要求していないかを確認する
(発達に応じた音への反応様態を考えて測定手法を柔軟に変える)

B正確な閾値が出せない
 →最初から正確な閾値を出そうと欲張らない
(短時間の測定を積み重ねて,推定の閾値を出していく)
 →裸耳での閾値測定にこだわらない
(補聴器装用下での閾値から,裸耳閾値は推定できる)
 →検査後,親や教師の訴えとの一致・不一致を確認する
(不一致度が大きい場合は,なぜかを考え,測定ミスを防ぐ)

2.乳幼児聴力測定
1)測定方法の種類
  発達に応じた聴力測定法を選ぶ必要があります。
  目安
       0歳代  聴性行動反応聴力測定(BOA)
       6力月〜18力月  視覚強化式聴力測定(VRA)
       1歳〜3歳  条件詮索反応聴力測定(COR)
       2歳〜4歳  遊戯法とピープショー測定
       3歳以上  遊戯法と通常の聴力測定

2)表記方法
 レシーバを用いた場合は,○−○,×……×などの表記法に従います。スピーカ法での測定の場合も,裸耳△,装用時▲で線でつながない表記法に従います。スピーカ法で装用閾値を測定した場合の表記法は,規定されたものはありませんので,各自がわかりやすい表記をしても構いません。筆者は,右の装用時閾値をマークなしの直線で,左の装用時閾値をマークなしの点線で表しています。

3)測定の目的=補聴状態の評価
 医療現場での「診断」を中心とした聴力検査の目的と教育現場での聴力測定には目的が異なることも念頭に置くべきだと思います。私たちは診断後に,教育手段の確保と教育方法や教育の場の選択をするために,その子の保有聴力を評価することが主務だと思います。
 聴力測定は聴覚障害児が装用している補聴器が補聴の役割を果たしているかどうかを評価するために行います。この場合,(できれば左右別々の)音場装用閾値を測定します。多くの施設等で乳幼児の裸耳の聴力を測定しようと苦労している話を聞きますが,乳幼児の場合は,音場での装用閾値を測定することに重きをおきましょう。裸耳の閾値を測定しない理由には,以下の2つの理由があります。

) 重度の聴覚障害児の場合,十分な音反応を裸耳で出せるだけの音圧の音を出せない。仮に聴力が110dBの乳幼児の場合,子どもが「聞こえた」と意識できるレベルは,閾値より+20dB以上でしょう。乳幼児聴力測定では,十分に聞こえるであろう音を出して,反応を引き出す必要があります。通常の音場では130dBの音は出力不能ですし,仮に出たとしても振動を伴いますので,音反応とは言えなくなります。また,何より,立ち会う保護者に心理的な落ち込みを与えることにもなりかねません。
) 裸耳の閾値は装用閾値から推定可能である。乳幼児の閾値は,あいまいな推定値にならざる得ません。装用閾値に補聴器利得を加えた値は,裸耳の推定値として十分に教育臨床的に使える閾値です。教育的には,裸耳の閾値より装用閾値の方が意味を持ちます。左右別々の装用閾値をだすことができれば,おおよその左右別々の裸耳の推定閾値を出すことができます。

3.視覚強化式聴力測定(VRA)
 CORの手法をもとにしていますが,CORより適応年齢が低く,またより定量的な測定ができます。CORでは,2つのスピーカと2つの強化報酬刺激を用意し,原則として左右への振り向き反応を指標にしますが,重度の子ども,あるいは補聴器装用下では左右の音源定位は困難であることから,1つのスピーカと1つの強化報酬刺激で十分と思われます。また,VRAではBOAと同様,子どものあらゆる反応を指標としてとりあげます。その上で,その反応を視覚的報酬によって強化していく点にCORとの違いがあります。そうした意味では,聾学校などの聴覚障害児を扱う機関では,CORよりVRAとしての測定法が,より適当だと考えます。
 適応年齢としては,おおよそ5カ月以降,1歳半以下程度が対象となります。この検査法では最早期から定量的な検査ができることから,この検査法の修得は欠かすことのできない技能といえるでしよう。

 VRAでは光強化報酬刺激と音刺激を出すタイミングが測定の成否を決めると言っても良いかと思います。私は,おおよそ以下の手順で行いますが,熟達者の測定を観察し,子どもの反応によって,音刺激や光による強化&報酬を出すタイミングを変えることが肝要でしよう。
@裸耳の閾値は測定せず,最初は両耳補聴器装用下で行う。
A音刺激(低音の強めの音)を出し,約1秒後に光強化刺激を光らす。
 →最初は,振動が響く低音&やや強めの音にして,音に気付かさせる。
BAを2,3回繰り返し,子どもの反応を観察する。
 →この際,音に対してスッと反応するかどうかを観察する。
 →音に対してスッと反応しないようならば,音圧を上げてみる。
C音刺激を出し,子どもが何らかの反応を見せたら,すぐに光刺激(報酬)を光らす。
D光刺激に気付いたら,「う〜ん,そうだね」などとほめる(報酬)。
E音刺激の音圧をわずかに下げ,子どもが気付いたら光刺激を光らす。
FCのレベル−30dB程度の音圧から,
 子どもの気付き反応が出るまで徐々に音圧を上げる。
G日を変えて,左右別々に装用閾値をとってみて,左右差を考えてみる。

4.VRAの装置
 VRAは特別な装置を必要としません。通常の音場での聴力測定の装置と,光による強化&報酬の装置があれば良いのです。光刺激は裸電球でもよいのですが,ピープショーに転用できる装置を自作することをお奨めします。以下は,ピープショーでも使える装置例です。側面を切り抜いたような木の箱を用意し,そこに色の濃いアクリル板を貼ります。箱の中には,赤色のパトライトの他,白熱球を付け,中には人形やミニカーなどを入れます。これらが点灯していないと箱の中は見にくいけれど,点灯すると良く見えるようになる色のアクリル板を選びます。VRAとして使用するときは,@の切替スイッチを図中で<上>にセットします。すると,Aのボタンを押すことによって,点灯し,中が見えるようになります。Aのスイッチは大きめの押しボタンスイッチとし,足で踏むようにします。ピープショー装置(PS)として使用する場合は,@の切替スイッチを図中で<下>にセットします。音を出している最中はAのボタンを踏みます。対象児がBのボタンを押すことによって,点灯し,中が見えるようになります。
VRA装置例
VRAで使用するときのタイミング例。
  1) 音→約1秒→を踏む(反応の提示と強化)
音に気付くようになったら,
  2) 音→気付いたら→Aを踏む(反応に対する報酬)

 VRAの手法を用いることで,聴児ならば,6カ月を過ぎた頃から,500・1k・4kHzで30dB程度の閾値を出すことができます。従って,VRAの閾値で30dB以上であれば,経過観察を続けること。聴覚障害児の場合ならば,VRAでの測定値−15〜−30あたりを真の閾値として想定できると思われます。VRAでは子どもの音の気づきを見るわけですから,裸耳での測定は余程聴力的に良い場合に限り,重度の子どもの場合は,装用閾値を中心に測定し,<装用閾値+補聴器ゲイン=裸耳聴力>として裸耳聴力を推定します。左右別々の装用閾値を測定できれば,左右別々の裸耳聴力の推定もできます。VRAは乳幼児の聞こえの評価には欠かすことのできない測定法ですので,聴児の測定で技能を磨くことも大切でしょう。




VRA装置の製作と活用について

仙台市やまぴこホーム 伊藤洋子(言語聴覚士)

 当施設の既存の聴力検査装置はRionのAA−80N(スピーカー法,ボタンを押すと電車が走る),AA−66D(通常の純音聴力検査装置)の2つを中心として使っています。しかし,この2台のオージオメータでは,検査の協力が得られず条件付けの難しい0〜1歳台の子どもや重複障害児の測定には不向きでした。数年前,筑波短大の講習会で立入先生に相談したところ,「手作りで,安く簡単にできる方法がありますよ」と,このVRA装置の実物と配線図を紹介していただき,98年の秋に製作しました。その際の各材料とおおまかな費用,製作の過程,使用しての感想など報告致します。

VRA装置
(1) 購入した物リスト
品名
パトライト(赤)
板(厚さ1.5cm)
アクリル板(黒)
掛け金,釘など
小電球(2個)
押しボタン
塗装スプレー
金額(円)
5980
4000
1900
830
240
480
480
 
合計 13640
 DIYのホームセンターで全部購入しました。上記のほか,ソケット,コード,スイッチ(on-off,切り替え)コンセントなども使用しましたが,電気製品の廃材等から間に合わせたので,それらの費用はかかりませんでした。

(2)製作に当たって
 実際に作ったのは園長です。配線図と写真を渡し,使用方法について説明し,製作を依頼しました。ボックスは順調に出来上がっていったのですが,電気の配線は難しかったようで,知り合いの電気店の人に聞いたところ,運良く配線そのものもやってもらえたそうです。内装は幼児月刊絵本のキャラクターを切り抜いて貼り付け,縫いぐるみを入れました。(ピカチュウ,アンパンマン,キティちゃんなどなど)屋根は取外しができるので,中の人形に飽きた時には,他のものに替えたりもできます。業務の合間に製作し,約2週間で完成しました。

検査室内配置 VRA 屋根を取ったところ
写真:屋根を取ったところ

(3)実際の使用について
 オージオメータはAA−80Nを使用,電車が入っている装置の上に,ボックスを置き,その横に子供を座らせます。検査の手順については,「教育オージオロジー実習テキストjのVRAの測定方法に沿って行っています。(上記)

(4)使用してみての感想
 この検査法の最初の対象となったのは2歳の重複障害の子ども(発達レベル7〜8カ月,座位十,歩行−)でした。それまでAA−80Nでの検査を試みましたが,電車の動きを目で追うことが困難で強化刺激とはなりませんでした。早速VRAを試みたところ,すぐに光刺激に対して探索行動が見られました。 数回繰り返すうちに「音刺激が入ると期待してボックスを見る」という刺激と報酬の条件づけが可能になりました。その後,日を替えて数回検査をした結果,60dBで再現性のある反応が得られるようになり,耳鼻科に紹介したところ両耳に耳垢が溜まっていることがわかり,除去後の反応は40dBと閾値が下がりました。その他に,ピープショウの装置としても使っています。2〜3歳台の子に通常の聴力検査を行う場合「音が聞こえたらベグをさす」では興味を持続させることは難しいようです。ボックスの前にある「ボタンを押すと中のおもちゃが見える」であれば,その年代の子どもにとっては十分なご褒美になり,音場での検査と方法は一緒なので自然に受話器を使った検査にのってくれます。乳幼児の聴力検査は,発達のレベルに応じた測定方法を選ぶ必要がありますが,市販の検査装置でそれをカバーしようとすると高額な予算が必要となります。しかし,VRAの装置や方法は簡易で安価であること,また報酬刺激も子供の好みに応じられるなど利点はいろいろあげられます。既存の検査装置と合わせて使うことで,検査の対象児の幅が広がったことが実感できました。

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