1998年1月26日発行(第2・4月曜日発行)
聴能情報誌 みみだより 第3巻 第338号 通巻423号
編集・発行人:みみだより会、立入 哉 〒790−0833 愛媛県松山市祝谷5丁目2−25 FAX:089-946-5211
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立入 哉 h-tachi@ma4.justnet.ne.jp
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【目次】第338号
- お知らせ
- 98年の行事予定
- 「人工内耳フォーラム」開催ご案内
- 新刊図書紹介「盲ろう者とノーマリゼーション」
- 学会誌抄録[特殊教育学研究]
- 聾学校等に送られてきた文書にご注意を
- International Forum'98 報告集(1)講演概要
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お知らせ
★ 広島県立保健福祉短期大学 言語聴覚療法学科がホームページ開設
アドレス=http://www.hpc.ac.jp★ アメリカの補聴援助システムの通信販売会社、harc社のFAX番号が変更。
旧)1-616-381-3614→新)1-616-324-2387
98年の行事予定
6月12・13日 日本聴能言語学会(松本市) 7月29〜31日 全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会(静岡市) 8月3〜6日 アジア太平洋地域聴覚障害問題会議(中国・北京市) 10月8日・9日 日本聴覚医学会(東京:市ヶ谷私学会館) 10月14〜16日 全日本聾教育研究大会(福岡県立福岡聾学校・福岡高等聾学校) 10月17日 フィッティング・フォーラム'98(福岡市) 11月19・20日 日本音声言語医学会 地方の大会・研究会なども掲載しますので、
情報をお寄せ願います。
人工内耳フォーラムのご案内社団法人:全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
人工内耳はこれまで治療が不可能とされてきた中途失聴者にとっては画期的な治療であり、手術が可能な病院も、手術を受ける人も増加してきました。中途失聴者や社会の人工内耳に対する関心も深まっています。全難聴は難聴者の福祉に役立てる観点から、人工内耳の説明会やフォーラムを各地で開催してきました。人工内耳が聴覚障害者の福祉にさらに役立つためには、いろいろな立場の意見に耳をかたむけ、現状、問題点を明らかにすると共に、各地で行われている優れたリハビリ手法や周辺機器の活用方法、医療上の研究成果を広く共用し、また聴障者や家族に的確な判断材料を提供することが大切ではないかと考えます。
今回、医療やリハビリ、教育の最先端でご活躍中の先生、装用者、障害者運動団体のご協力を頂き下記の通りフォーラムを開催します。
また討議を踏まえて冊子「人工内耳を理解するために」を発行し各関係先に配布の予定をしています。
つきましては各方面から多くの方にご参加頂きたくご案内します。
1.開催日時: 1998年3月8日(日)9:00〜16:00(8時40分受付開始)
2.場所: 戸山サンライズ(東京都新宿区戸山1−22ー1)(道順は文末に記載)
TEL:03−3204−3611 FAX:03−3232−3621
3.参加費:1,000円(弁当代、冊子送料などに充当)
前泊の必要な方の為30名の宿舎を確保しています(朝食付き@8千円)。
先着順に受け付けますが、定員を越えた場合は個々に確保をお願いします。
前夜交流会を実施しますので希望の方は別紙でお申し込み下さい.
4.申込み先: 別紙により下記のフォーラム運営世話人のどなたかにお申し込み下さい.
@人工内耳友の会[ACITA]会長 小木保雄
〒228 座間市南栗原6−8−21 FAX:0462-55-0628
A装用者の親:田中多賀子
〒243−04 海老名市中新田722−1A505 FAX:0462-33-4132
B全難聴人工内耳部長 山口武彦
〒617 長岡京市長岡3−19−32 FAX:075-951-4982
参加費等の支払いは当日受付でお支払い下さい.
5.申込期限:1998年2月末(定員は150人を予定)
6.テ−マとパネラー(予定)
テーマ「人工内耳の現状と課覆」
パネラー(予定)
障害者団体: @全難聴理事長 高岡正、A全日ろう連(未定) 装 用 者 : @人工内耳友の会[ACITA]会長 小木保雄
A全難聴人工内耳部長 山口武彦
B装用者の親 田中多質子S T : @国際医療福祉大 城間将江、A虎の門病院 氏田直子 Dr. : @チルドレンセンター 舩坂宗太郎、A(未定) 教 育 : @筑波技術短大 大沼直紀、A平塚ろう学校 三浦直久 そ の 他 : @日本コクレア社長 野口肇 7.その他: パネラーの主張や要旨は事前に配布する予定です。
3月3日頃に参加証を郵送しますので当日受付に提示し、参加費をお支払い下さい。
会場道順 地下鉄東西線早稲田駅下車徒歩8分
JR大久保駅・新大久保駅からは都バス63、新宿駅西□からは都バス74、
ともに、[国立国際医療センター前]下車100m参加申込書
氏名 年齢 性別 ( 男・女 ) 住所 障害の有無( 有・無 ) 必要とする情報補償(要約筆記 手話 磁気ループ 赤外線) 参加費内訳 参加費 @1,000円 1,000 円 宿泊(1泊朝食) @8,000円 円 交流会費 @5,000円 円 合計 円 パネル討議で取り上げたい事項、質問、意見など御自由に記入して下さい。
新刊図書紹介盲ろう者とノーマライゼーション
金沢大学教育学部助教授である福島智氏の著書である。福島氏が盲になった後、失聴し、いわゆる盲ろう者になった経緯から始まり、氏の多くの著作から推敲に推敲を重ね、加筆・修正された章が掲載されている。氏の著作であり多くの賞を受けた「渡辺荘の宇宙人」にも通じるが、氏の文章にはムダがないようであり、遊びがある。そんなところに惹かれている読者も多いことだろう。
本書は5章から成っている。第1章では、盲ろう者のめぐる様々な問題を紹介し、第2章では盲ろう者のコミュニケ−ションについて、第3章では盲ろう者の生活に必要な、盲ろう者への理解、社会・文化の条件などについて述べている。第4章では、論文2つを紹介し、第5章では、広く障害者一般と教育・福祉・社会との関わりについて述べている。
明石書店刊、2,800円。
学会誌抄録 ★「聴覚障害教育における人工内耳適用の現状と課題」大沼直紀
特殊教育学研究 No.35(3)69-78,1997
日本の聴覚障害教育における子どもの人工内耳による聴覚補償の現状と課題について述べている。各章は、U.人工内耳の出現と聴覚補償の教育/V.子どもの人工内耳手術適用の条件とその効果/W.聴覚障害児教育機関が人工内耳適用上配慮すべき課題/X.子どもの人工内耳に関する研究実践の動向。
聾学校等に送られてきた文書にご注意を ト○○○・オー○○○という団体から、タイでの角膜移植・内耳・中耳の移植手術を紹介するというような内容のFAXが送られてきている。よくご注意を。
第3回 International Forum'98 開催報告 International Forum は、聴覚障害児の補聴器装用・人工内耳・聴能など Educational Audiologyに関して、外国人講師を招き、世界の実践を紹介する研究会です。2年に1回の開催を続けており、第1回目は1994年、Mark Ross氏を迎えて、FM補聴器の問題を取り上げ、第2回目は1996年、ロチェスター聾学校の Educational Audiologistである Chris氏を迎えて、 Educational Audiologyの具体的中身を紹介して参りました。
第3回目の今回、アメリカのEducational Audiology Associationの元会長であり、コロラド州教育省オーディオロジー・コンサルタントをお勤めの Cheryl DeConde Johnson教育学博士をお招きしました。彼女は21年間に渡り、コロラド州のグレーリー学校区の Educational Audiologistとして、0歳から21歳の聴覚障害児のケァに携わったほか、コロラド州教育省オーディオロジー・コンサルタントとして、Educational Audiologyに関する政策やガイドライン作成に活躍されてこられました。その他、1997年に出版された Educational Audiology Handbookの著者でもあります。この著作は、この領域のまさに座右の書として広く行き渡りつつあり、今も編集部に購入の申し込みが続いています。
今号から彼女を招いて開催された International Forum'98 の内容を連載でご紹介したいと思います。
印象記 :来日前より彼女の日本に対する思いは熱く、開催1週間前ぐらいから、連日のように資料がFAXで送られてきた。送られてきた資料を手分けをして翻訳しながら、彼女の Educational Audiologyへの熱意が伝わってきた。来日後、2つの聾学校を参観していただいたが、子どもの前に立つとガラッと明るい雰囲気で接しられ、第一線の現場人であることを見せつけてくれた。 講演の方も、Educational Audiologyの内容と課題などを手際よくおまとめいただき、今後の日本での Educational Audiology発展に役立つ貴重な内容であった。評価や連携の仕方など参考になる点が多かった。
日本滞在最終日、Johnson博士と大沼直紀・高橋信雄に私の4人で、今後の日本における Educational Audiologyの展開について短時間だが話し合いを持った。この話し合いも実は、彼女から提案されたものだった。彼女との合意点は、アメリカのEAA=Educational Audiology Associationと機関誌の交換、夏季講座での参加者派遣の2点である。今後、日本における教育オーディオロジーに対して支援を続けてくれるとのことであった。
残念だったのは、参加者が少なかったことだ。フィッティングなど実技中心の内容の講演には多くの参加者があるが、今回のような自分たちの領域に関する「柱」について、意思と指向をまとめる会に対し、参加者が少なかったことは、教育オーディオロジーを領域とするに、まだまだ全体が育っていないということを示している。これで良いのだろうか?
補聴に関する国際フォーラム= International Forum'98 招聘講師講演
教育オーディオロジスト
−その役割と責任−(講演概要)
Dr. Cheryl DeConde Johnson
この講演概要は、当日使用されたOHP原稿を元に重要なポイントのみを抜粋しています。実際の(特に大阪会場の)講演では、OHPに対して、Johnson Dr.がコメントを追加して内容をふくらませました。講演のすべてを聞きたい場合は、編集部宛てにビデオテープをご請求下さい(ビデオについては、次号掲載の注文票をご利用下さい)。
(講演の前にコロラドの聴覚障害児の教育場面を撮影したスライドが映写された)
1.教育オーディオロジストの役割
教育オーディオロジストの役割には、@聴能指導者、A聴能サービスの調整者としての仕事、B教師として、Cコンサルタントとしての立場としての役割がある。
@聴能指導者としての教育オーディオロジストは、・聴力障害の有無判別、・聴力の評価・補聴について、責任を持つ。
Aサービスの調整者としての教育オーディオロジストの仕事は、 ・難聴児のための就学措置の選択に関する情報を有すること、 ・難聴児の教師やサービスの提供者を用意すること、 ・全ての適切なサービスが適切な時期に準備され実行されることを確実にすること、 ・教師と連絡を取り技術的なサポートをすること、 ・生徒の措置と経過を確認すること、 ・生徒の措置を評価し、必要に応じて変更を薦めること といった内容が含まれる。
B教師としての教育オーディオロジストとしては、 ・聴能(スキル)、 ・補聴機器の正しい使用、 ・聴力障害にいかに対応するかの立案、 ・聴力・聴力障害およびそれらの意味、 ・聴力障害に関連した必要な援助 が内容として含まれる。
Cコンサルタントとしての教育オーディオロジストとしては、 ・聴力の状態についての説明、 ・聴力ときこえのしくみについての情報提供、 ・聞くための方略を改善するための方策を提案、 ・耳や聴力障害および聴力保護についての指導、 ・教室の音響環境についての情報提供、 ・教室用増幅システムの情報提供 が含まれる。
アメリカにおける聴力障害の発生率から考えてみる。学齢期の子どもの3%が聴力障害を持っている。学習に影響を及ぼす聴力障害の発生率は1.5%である。この内訳は、ろうが 1/1000、軽度から重度が 7/1000、一側性が 3/1000、中耳炎による有意な遅れが4/1000である。
教育的に重要な難聴(ESHL)の分類(対象児 2307児)を見てみる。
両耳 一側性 高音急墜 中耳炎
ESHL児全体に占める割合 57.3% 23.8% 9.4% 8.9%
特殊教育下のESHL児に対する占める割合 76% 29% 21% 45% 両耳に難聴を持つ児童がその多くが特殊教育下であるが、一側性や高音急墜の児童は、特殊教育以外のもとにいる。中耳炎によって特殊教育の措置がとられる場合も多い。
2.教育オーディオロジストの責任
教育オーディオロジストは、下記の内容について責任を負う。
@聴力の保護と予防
A聴力障害の有無判別
B聴力障害の評価と関連する能力の評価
C補聴器と補聴援助システム機器の知識
D聴能教育の計画立案とサポート
E(リ)ハビリテーションのサービス
F家族へのサポート@聴力の保護と予防については、聴力や聴力の低下を防ぐ方法を生徒に教えることが含まれる。
A聴力障害の有無判別としては、 ・学校での集団検診を実施し管理すること、 ・乳児の難聴を早期に発見するために病院および地域の関係機関と共同して、新生児のスクリーニングを行うこと、 ・乳幼児(0〜5歳)の聴力スクリーニングを実施するために地域の関係機関や "CHILD FIND" といった機関と協調すること、 ・以上のようなスクリーニングを行う聴能技術者を養成すること が含まれる。
B聴力障害の評価としては、 ・スクリーニング検査で聴力障害が発見されたり、または聴力障害が疑われる0〜21歳の全幼児・児童・生徒に対し、聴能評価を行うこと、 ・聴覚中枢障害の評価を行うこと、 ・医学的な処置が必要な場合は医師に紹介すること が含まれる。
さらに、ルーチン業務に含まれる聴能評価として、 ・気導および骨導の閾値検査、 ・インピーダンスオージオメトリ、 ・語音聴取閾値検査、 ・語音弁別能検査、 ・耳音響放射検査(Oto-Acoustic Emission) が含まれる。
聴力障害が判明した場合は、以下の検査を追加して行う。 ・静かな音環境および雑音下での語音弁別能検査、 ・快適閾値(MCL)および不快閾値(UCL)のテスト
補聴器、人工内耳、FM補聴システムを使用している場合、以下の聴能テストを行う。 ・ウォーブルトーンまたはナローバンドノイズを用いた音場での装用閾値検査、 ・補聴器装用下での語音聴取閾値、 ・教室内で視覚への入力や話者からの距離および周囲騒音を考慮した状態での評価※(さらに裸耳状態との比較を行えば完全)、 ・読話能力、 ・聴能。
※)S.I.F.T.E.R.として検査法がある=後日、日本語で紹介その他、関連する評価として、 ・話しことばと言語、 ・教育面、 ・心理面、 ・社会性や情緒面、 ・健康面、 ・進路面 の評価を行う。
評価が終わると、その結果を報告することが必要である。報告の中身には、 ・評価結果を伝え、難聴との関係を説明すること、 ・フォローアップや、次の評価を受けることを勧めること、 ・クラスとコミュニケーションに関する援助を勧めること、 ・報告書として書面で残すこと、 ・教師や特殊教育担当者および両親と面会し、所見と勧告について話し合うこと が含まれる。
C補聴器と補聴援助システム機器の知識としては、子どもに補聴器が必要であるどうかの判断を行い、もし必要ならば、どのような補聴器(補聴器、人工内耳、個人用FM補聴器、音場拡声システム)の必要性について検討し、臨床オーディオロジストと共に最も適した補聴器を選定する仕事が含まれる。補聴器に併せて、補聴援助機器が必要と判断された場合は、 ・補聴援助機器を適合させること、 ・これらの機器を使用する生徒や現場の教師を実地指導すること、 ・補聴機器の状態を評価し、監視する仕事 が含まれる。
D教育の計画立案とサポートとしては、 ・教室の音響的環境の確認、 ・機器の使い易さや調整について勧告すること、 ・教師や生徒に対するサポートが含まれる。
E(リ)ハビリテーションサービスとしては、 ・聞き取り、 ・コミュニケーション方法、 ・読話、 ・補聴器についてのオリエンテーション、 ・補聴器の使用と注意、 ・補聴に必要なものの自己管理、 ・自己尊重の構築 が含まれる。特に自己尊重の構築は重要な内容である。
F家族へのサポートとしては、 ・積極的な相互関係を構築すること、 ・効率的なコミュニケーション法を示すこと、 ・情報を交換すること、 ・両親や家族の協力が得られるようにすること が含まれる。
3.インクルージョン ( INCLUSION )近年、普通学級で難聴児を教育する形が、メインストリームという形から、インクルージョンという形に変わりつつある。インクルージョンは、一緒に学習する生徒全員が個人差を認識したり、理解を深めることができる点、より多くのカリキュラムが選択できる点で利点がある。また、より高い期待や、より高い能力が要求される可能性もある。一方、普通学級教師に対して充分なサポートができないこと、生徒に対して充分なサポートができないといった問題点もある。
こうした問題を解決するために、一緒に授業をすること「co-teaching」が、インクルージョンを現実にすると考えられている。これは、1つの教室に、聾学校あるいは難聴学級教師と普通学級教師の二人がいて、一緒に授業を行うというスタイルである。学年を越えたグループ編成(例:2年と3年の合同、4年と5年の合同)などを考え、聴覚障害児に触れ合える機会を保障する。1クラスの聴覚障害児の割合は1/4〜1/3とし、全生徒や教師が手話を学び、使用するといったことで、インクルージョンを現実化しようと動いている。
インクルージョン教育環境下での補聴に関する考慮点としては、・教室内での音響、・最も適した補聴方法を決定すること、・補聴機器のフィッティングとその確認をすること、・補聴機器の管理をすることが挙げられる。特に、教室内の音響については、・教室内の雑音が大きいと、教師や生徒など話者の話を聞き取りを妨げることになること、・教室内の反響音が大きいと、会話理解度を低下させること、・教師などの話者との距離が離れると、声の音圧が下がることといった点を知り、対策を考える必要がある。これは、音響環境が悪いと、聴取努力を払わねばならず、疲労を増大させることになるからである。アメリカでは、推奨する雑音・反響基準について、下記の基準を定めている。・環境雑音レベル=35dBA以内、・信号対雑音比(S/N比)=+15dB以上、・反響時間=0.4〜0.6秒。
4.補聴機器教育オーディオロジストは、様々な補聴機器の使用を推奨する。個人補聴機器としては、・補聴器、・人工内耳、・骨導補聴器、・一般的なアンプ・、その他特殊機器があげられる。FM聴取補聴システムとしては、・個人用FM、・FM受信機+3D磁気ループマット、・箱形一体型FM受信機、・FM受信機+教室用音場増幅アンプがあげられる。中でも、近年、ホナック社が開発したマイクロリンクは乳幼児でも使用できるFM装置であり、多数利用されている。
イヤモ−ルドや補聴器のケースは様々な色から選択できるようになっている。補聴器やイヤモ−ルドの色を、好きな野球チームのチームカラーに変えることで、子どもの補聴器に対するイメージが変わる。
(講演では、様々な補聴機器やいろいろな色のイヤモ−ルドがスライドで紹介された)補聴機器の選定にあたっては、3つの留意点がある。
@聴力障害に関係する事項としては、程度・種類・両耳か片耳か・聴力レベルの安定度・会話識別能力・遠距離の音の聴取能力・注目や聴取の疲労度・動機付け・自己尊重・年齢・その他の障害の有無
A環境に関係する事項としては、部屋の広さや形・環境雑音レベル・反響音特性・部屋外部からの雑音・生徒のいるその他の環境(体育館・音楽室・コンピュータ室)
Bコミュニケーション環境に関する事項としては、教室内が生徒で一杯の時のノイズレベル・生徒の数・教育スタイル(講義 討論 集団教育)話者からの距離・話者の声の強さと明瞭さ・使用メディアの種類・照明・教師の動機付け・FM電波障害の潜在性・他の生徒が使用している機器
補聴機器の選定後に、フィッティングと確認を行う必要がある。補聴機器の選定後、一定の試聴期間を設けることが重要だ。さらにオーディオロジストとしてのフィッティングをすること、プローブマイクによる実耳測定とカプラによる周波数特性検査をすること、個人用補聴器と補聴援助機器との接続についても考慮する必要がある。
補聴機器の使用が開始された後は、これらの機器の管理が必要となる。管理の内容としては、下記が含まれる。・各種機器の毎日のチェック、・子ども自身が自分でチェックできるように教えること、・教師や子どもが行う簡単な故障修理(電池の交換やイヤモールドの清掃)、・オーディオロジストは更に複雑な故障修理をする、・必要に応じてメーカーに故障品を発送する。
補聴機器の使用開始後は、社会的・感情的側面へのフォローも行う。自尊心をつけること、励ましてくれる人がいるかどうか、カウンセリングも重要である。
コロラド州において、補聴器とFM補聴器の使用状態に関する研究として、生徒が使用している補聴器とFMシステムの状態を評価したことがある。コロラド州にはほとんどの学校に「教育オーディオロジスト」が配置されている。この研究では、予告なしに補聴機器のチェックをした。対象となったのは、611名の生徒が使用している950台の補聴器と212台のFMシステムである。
この結論、すべての補聴機器が完全に機能していた割合は、たった56.8%の児童のみであった。また、73.4%の児童については、補聴器またはFMシステムが1台のみしか機能していなかった。点検や調整などのサービスの回数が多く、より行き届いている場合ほど、補聴器記の信頼性が高く、正確に機能していた。サービスが十分に受けられる状況ならば、FMシステムは児童の補聴器よりもよく機能していた。補聴器やFMのモニタの頻度は満足のいく性能を保証しなかった。
補聴器使用上の問題の分析結果として、79.5%は「軽微」な問題であり、教師、技術者、養護教諭、児童自身で対処できた。個別教育計画(Individual Education Plan)が作成されていない児童の持つ補聴器は満足度が低かった。
5.最近の動向最近の主な話題は、以下の5点である。@インクルージョン/協同授業、A音場での増幅(補聴)、B耳かけ形FM補聴器、C教室内の音響、Dオトアコゥスティク・エミッション(耳音響放射)
もっとも重要な話題としては、以下の4点を挙げることができる。@最新技術への適応、A補聴器や補聴援助システムのマネイジング、B子どもの重度/多様化するニーズ、C乳児のスクリーニングと発見/教育相談活動
6.政府教育オーディオロジスト・コンサルタントの役割政府教育オーディオロジスト・コンサルタントは、以下の業務を行っている。@学校のオーディオロジストのリーダーとなること、A学校に技術的援助をすること、B教育オーディオロジーに関する州規則やガイドラインを定めること、C州レベルで、他の障害や教育分野と連携をとること、D他の州の組織・機関・プログラムと共同すること
7.教育オーディオロジストのためのトレーニング教育オーディオロジストに望まれる能力として、・教育に関する薦め・フォローアップの手順・特殊教育への適応性、・教育的環境下で使用される個人用・教室用FMシステムとその他の補聴援助技術の選択とメインテナンスに対する必要性の評価、・教室内の音響と学習への示唆を考えた学習環境の構造化、・聴覚的評価結果とその意味するところの解釈、教育方法の選択、法的問題や手続きを含む Individual Family Sservice Plan(IFSP)や、Individual Education Plan(IEP)の作成、・教育的分野からの委託によって、フォローアップの手順や特殊教育への適応性を考えること、・教育的環境下で使用される個人用と教室用FMシステムとその他の補聴援助技術の選択とメンテナンスに必要な評価をすること、・学習や心理的能力の発達と、きこえと難聴の関係について、教師と専門職員と協力や協議を行うこと、・コミュニケーション問題に対処するチームへの参加、・ろう児や難聴児が使っているコミュニケーションシステムと言語に関する知識、・実際に教育に当たるスタッフとサポートにあたる職員の現職教育、・学校システム、多くの学問分野にわたるチーム、地域社会と専門的な資源に関する知識といった広範囲に渡る様々な能力が要求される。
8.教育オーディオロジー協会アメリカにはオーディオロジストの団体であるAAAがあり、さらに教育オーディオロジストの協会がある。教育オーディオロジー協会は、学校に籍を置くオーディオロジストの国際的ネットワークである。この協会は、学齢期のすべての子どもたちに対し、きこえに関する全領域に渡るサービスを提供すること、教育環境下におけるきこえや聴力障害に関するマネージメントを行うオーディオロジストのために設立されている。協会では、年4回EARニュースと、年1回教育オーディオロジーに関する学会誌を出版している。その他、インターネットサイトの提供(www.ehhs.cmich.edu/eaa/)や、会員リストの提供、会員専用オンライン会議室の提供、夏期講座の開催(1年おき)、州間のネットワーク、Frederick教育オーディオロジー賞の授与、身分証明などを行っている。会員は、現在773人で増加中である。年会費は、$35(国際会員は$40)。協会に関する照会は、下記のFAXが利用できる(FAX:1-813-968-3597)。
教育オーディオロジスト協会のキャラクタ。
聞き・聴き・学ぶ子ども達の絵である。
アメリカ・オーディオロジー学会の紹介
THE AMERICAN ACADEMY OF AUDIOLOGY
アメリカ・オーディオロジー学会(以下、AAAと略す)は、一般人に対し、質の高い聴覚的ケァを提供するプロの集団である。学会は、専門的な開発、教育、研究を通して、会員の専門職としての仕事を成し遂げ、目的を実践するための能力を高め、また、聴力障害およびオーディオロジーサービスに対する一般人の意識を高めるためにある。
AAA会員になることで、The Journal of TheAmerican Academy of Audiology、Audiology Today、Audiology Express といった刊行物を入手できるほか、インターネットサイト(www.audiology.org)による情報提供や、会員名簿が利用でき、補習(生涯)教育が受けられ、年次総会に参加できる。
オーディオロジストの資質を維持するために、補習(生涯)教育を受けることが必要である。学会は補習教育として、年次総会での研修会の他、地域会議やCD−ROM[オーディオロジー:障害と評価]の利用、遠隔地での学習機会を提供したり、研修会での講演者を紹介するサービスを行っている。その他、学会では、新規研究者研究奨学金と学生研究者研究奨学金を用意し、新しい研究活動に対する支援をしている。一般人および専門家の意識を喚起するためのパンフレットして、「オーディオロジストとは何か」「あなたの赤ちゃんの聴力」「あなたの聴力はどうですか」「HIV/AIDSによる難聴」を用意し、会員の請求に応じている。
AAAの活動は、政府関連業務、政策に関する声明およびガイドライン、職業間の関係構築、倫理規定、州内会員ネットワーク、マーケティング、専門教育、倫理実務など多岐に渡り、これらの活動を支えるために、13の委員会が組織されている。AAA会員数は、1988年は2,000人弱だったが、昨年は6,500人に近づく勢いであり、現在も会員数を伸ばしつつある。
なお、アメリカ・オーディオロジー委員会は、委員会認定のオーディオロジスト資格を1998年から発足させる予定である。現任者は、修士課程を修了後、委員会認定の補習授業(4.5単位/45時間)を受けることで3年ごとに更新が可能となる。2007年までに資格を取得した者は、修士の学位でも構わないが、2007年以降、新たに資格を申請する者は、Au.D.(オーディオロジー博士)の学位が必要となる。
今回の International Forum'98 には、(株)ダナジャパン、日本コクレァから、人的側面と資金面でご援助を賜りました。特に(株)ダナジャパンにおかれましては、スポンサー料の負担=資金援助、一部資料の翻訳、招聘講師の案内など人的援助も賜りました。記して、お礼申し上げます。
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