1997年11月24日発行(第2・4月曜日発行)
聴能情報誌 みみだより 第3巻 第334号 通巻419号
編集・発行人:みみだより会、立入 哉 〒790−0833 愛媛県松山市祝谷5丁目2−25 FAX:089-946-5211
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立入 哉 h-tachi@ma4.justnet.ne.jp
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【目次】第334号
- International Forum'98 参加申込開始のお知らせ
- プラネタリウム番組紹介「グッドリック物語」
- プラネタリウム番組紹介「天球のハーモニー」
- 「もののけ姫」を字幕付きで観ませんか?
- 論文紹介「FM補聴器使用についての調査研究」
- ミニニュース
- 全日本聾教育研究大会 機器展示から
- 新刊図書「重複障害児の聴力評価と聴覚補償に関する研究」
- 誘導コイル内蔵受話器付きFAX
- 新刊図書「ろうあ者・手話・手話通訳」
- 第3回 International Forum'98 開催のお知らせ
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International Forum'98参加申込開始のお知らせ
1.日 時: 1998年2月8日(日) 会場=横浜ラポール
1998年2月11日(水・祝) 会場=新大阪三和科学ホール2.参加費: 3,500円(当日 4,000円) 前売りチケット購入用の振込用紙の発送を開始しました。
振込用紙をご希望の方は、FAX:089−946−5211にお申し込み下さい。
来年1月中旬に参加チケットを発送いたします。
プラネタリウム番組「グッドリック物語」 プラネタリウムに「番組」というものがあるのをご存じでしたか?。良くわからないのですが、通常のプラネタリウムの説明に加えて、特集的にあるトピックスを取り上げて説明する時間を設け、それを「番組」と呼んでいるようです。この番組に、「グッドリック物語」が取り上げられました。内容は、下記のようなものです。残念ながら、字幕等、聴覚障害児者に内容がわかるようなものが付いていません。そこで、内容の紹介を兼ねて右記にあらすじを掲載いたします。なお、下記のプラネタリウムで鑑賞可能です。
番組の内容が秋の星座に関するものですので、次回の上映は来年の秋になる可能性があります。地元のプラネタリウムと相談すれば、来年の秋、地元のプラネタリウムで上映/鑑賞することが可能になることもあるそうです。
「若き天文学者グッドリック」 上映館=浜松科学館(静岡県浜松市)/9月6日〜11月24日 照会先=ミノルタ プラネタリウム(株)開発部 ソフト制作課
〒442 豊川市金屋西町1−8 FAX:0533−89−3578
プラネタリウム番組「天球のハーモニー」 その他、大宮市宇宙劇場(埼玉県大宮市)では、視聴覚障害児者と非障害児者とが一緒に鑑賞できるプラネタリウムを上映しています。こちらの方は、「字幕付き」と聞いておりますので、上映期間中にぜひご鑑賞下さい。毎月第4土曜日の正午/午後3時からの2回の上映、季節に係わらず鑑賞可能です。入場料は、おとな600円/子ども300円(身体障害者手帳所持者とその付き添い者1名までは半額)。障害者団体によっては、臨時上映も可能とのこと。ご覧になった方がおられましたら、感想をお寄せいただけましたら光栄です。
番組制作には大宮ろう学校の生徒の意見が取り入れられ、大きな文字サイズでの字幕、漢字にはルビがふられている。音にも低音域を強め、体感できるように配慮してあるという。視覚障害児者向けとしては、光源の照度を上げたり、声のポインタによる星座解説、音の移動による公転運動の再現、マルチステレオによる臨場感ある効果音をつけるなどの工夫をしてある。
上映に関しては大宮宇宙劇場(FAX:048-674-0066、TEL:048-647-0011)にご照会を。
番組の詳細については、番組制作会社、ミノルタプラネタリウム梶i上記)にご照会を。
「グッドリック物語 −アルゴルを見つめた男−」 上映時間 星座解説含み約40分 夜空の星の中には、明るさを変える星「変光星」があることは昔から知られていました。しかし、本格的な研究はなされていませんでした。
1764年、イギリス・ヨークの地方貴族の家に、ジョン・グッドリックは生まれました。グッドリックは、生後間もなくの病気で、聞くことができなくなりました。グッドリックは8歳の時、聾学校に入学し、14歳で普通校へ進学します。グッドリックは、気晴らしに星空をながめる、星好きの青年に成長しました。17歳の頃、学校を卒業し両親の元へ戻ったグッドリックは、エドワード・ピゴットに出会いました。ピゴットの家には、当時としては珍しくアマチュア天文台があったのです。
ピゴットはペルセウス座のアルゴルという星がときどき暗く見えることに気づいていました。グッドリックはピゴットにすすめられて、アルゴルの観測を始めることにしました。1782年11月12日の晩、グッドリックは、ピゴットの言う通り、アルゴルが1時間ほどで2等星から4等星へとぐっと暗くなる現象を観測しました。それまでに見つかっていた変光星は、何か月もかけて明るさが変化するものだけでしたから、それを知っていたグッドリックは、アルゴルのこの急激な明るさの変化に驚きました。それからグッドリックはアルゴルの観測を続け、アルゴルが非常に規則正しく暗くなることを発見しました。さらにグッドリックはそれがどうして起こるのかを、次のように説明づけたのです。
アルゴルは、望遠鏡では1つの星にしか見えないが、実はそのまわりを地球からは暗くて見えないもう1つの星が回っている。そして、地球から見るとその見えない星がちょうどアルゴルの前を通過し、アルゴルの光をかくしてしまうので、アルゴルが暗くなったように見える。この暗い星はいつもアルゴルの回りを規則正しく回っているので、アルゴルが規則正しく暗くなるように見えるのだ。
この観測結果を1783年5月にイギリスの王立学会に第1回目の報告をします。その後もさらに細かく分析し、同年12月には「アルゴルは、2日20時間49分3秒±15秒の間隔で、繰り返し明るさが2等星から4等星に変わる」と報告しました。当時は、グッドリックの理由づけに反対する学者もいましたが、グッドリックの研究は高く評価され、19歳にして、王立学会から年間の最優秀賞「コプレー・メダル」を授与されました。その後も、グッドリックは研究を続け、いくつかの変光星を発見しました。特に1784年の秋に発見したケフェウス座のδ(デルタ)星の不思議な特徴を報告し、グッドリックはまた注目を浴びました。そして1786年、21歳の若さで王立学会のメンバーに選ばれたのです。しかし、グッドリックは観測中にひいたかぜが長引き、肺炎になり、王立学会の会員となった2週間後の4月20日、亡くなりました。
字幕入り映画「もののけ姫」を字幕付きで観ませんか? 空前のヒット映画「もののけ姫」。子どもを中心にロングラン上映が続いています。学校でも子どもたちの話題になっていますが、聴覚障害を持つ子どもは、ストーリーが絵からの情報に限られてしまい、十分に鑑賞できないのが現実です。
そんな中、今年8月、名古屋で「もののけ姫」が字幕付きで上映されました。これ以来、各地で字幕付き上映が自主的に行われています。10月25日には堺東宝を会場にして、上映会が開催されました。
今回は、字幕付き「もののけ姫」を上映された堺でのケースをご紹介します。ぜひ、皆さんの地でも、字幕付きで「もののけ姫」上映会を実現しませんか?。
こうした活動を通して、「聴覚障害児者も映画を見たいんだ!、楽しみたいんだ!」という主張を映画会社や映画館に伝えられたら良いのにと思います。
詳しくは、下記のインターネットにアクセスを
★名古屋での上映に関する情報
http://pweb.pa.aix.or.jp/〜mohri/mononoke/monolink9.htm★大阪での上映や、字幕付き上映の仕組みや、上映後の感想など
http://www.sannet.ne.jp/userpage/mgoto/mononoke.html
パソ通で実現、字幕付もののけ姫上映会 堺もじもじ倶楽部 西村愼太郎
いつもメールで「みみだより」を届けていただきありがとうございます。
名古屋の「まごのて」による字幕付映画上映会の話題が紹介されていましたので、私たちが「まごのて」のお世話で気軽に「字幕付『もののけ姫』」上映会を行った経験をご紹介したいと思います。
私の息子は、ろう学校の中学部にお世話になっています。以前から宮崎駿監督のアニメ映画は大好きで、テレビで字幕付で放映されるとわかるとビデオに録画して楽しんでいます。7月に、「もののけ姫」が映画館で始まると息子もみたいだろうなと思いながら、新聞やテレビのCMをみていました。商用パソコン通信「Nifty-serve」でも、取り上げられ、8月の中旬には名古屋で8月末に字幕付で上映されることを知ったのです。家族で名古屋まで見に行きました。
映画館に入り、まず字幕投影装置に注目しました。そこには、家庭用ビデオデッキとビデオデッキよりひとまわり大きいビデオプロジェクタが客席の端、スクリーンより7.8m離して置いてあるだけでした。
映画が始まると私の息子たちは画面に食い入ってみていました。字幕がついていてよくわかるようです。バックに流れる音楽にまで簡単な説明がついています(例:「戦いを予感させるような音楽」)。また、ひづめの音やイノシシの鳴き声なども文字で表されていました。聴覚障害を持つ息子は、洋画など字幕のつく映画を見に行ってもよく途中で寝てしまうのですが、この映画は最後まで集中してみていました。
夏休みが終わって、ろう学校の大勢の子どもたちも字幕の付かない「もののけ姫」をみているというお話を聞き、大阪でも名古屋のような字幕付の上映ができないものかと思い始めました。
パソコン通信で知り合ったナツコさん(難聴のお母さん)とパソコン通信・難聴者の会議室を利用して相談し、「東宝」に「もののけ姫」の字幕を付けるようにお願いに行きました。このときに私は、東宝宛にPTAによる要望書も持参しました。字幕を付ける約束はいただけませんでしたが、名古屋方式で字幕付上映ができる映画館をお世話いただけることになり、今回の上映会が実現しました。
字幕を映画のスクリーンの横に投影する方法は、パソコンの字幕データから投影する方法と、パソコンで作った「字幕」を映画の進行にあわせてあらかじめビデオテープに録画しておいて、映画の進行にあわせてビデオを再生して投影する方法があります。「もののけ姫」の上映では、名古屋でも大阪でも後者を選びました。この方が道具立てがシンプルですし、ビデオデッキの一時停止や早送り機能を利用してタイミングを合わせるのにコツがいりますがどなたにでもできます。大阪での上映会では、字幕投影操作は、大阪の人工内耳フォーラムや「ふれあいピック」などでリアルタイム字幕で活躍しておられるBBさんにお願いしました。また、当日の受付には、要約筆記サークル「ぎんなん」機械化班のMさん、堺もじもじサークルのお母さんにお手伝いいただきました。
具体的な上映会を準備する方法は、1) 近くの東宝系の映画館を探す。 2) 東宝の映画営業部と連絡をとり、名古屋方式で字幕付上映会をしたいと相談を持ちかける。 3) 上映をする映画館と相談をする。 4) 東宝・映画館の了解が取れれば、「まごのて」に連絡する。 5) 字幕テープを借りる。 6) 映画館で、ビデオテープに「もののけ姫」の音声のみ録音する(東宝と映画館の了解がいります)(テープレコーダではダメ。テープののびがあり、正確な「時間」で音声が録音できない) 7) 録音した音声をたよりに、「字幕テープ」を再生してみて、タイミングが合うかどうか、練習してみる 8) 上映会に臨む。 名古屋では、一般上映の3日間に字幕を付けて上映されました。大阪など関西では初めての取り組みですので、一般上映の前に特別に「もののけ姫」を上映してもらい(8時45分〜)、それに字幕を付ける方法で取り組みました。この方法なら、字幕付テープを「まごのて」から借りてどこでも上映会ができます。みなさんの地域でも一度いかがですか。
論文紹介FM補聴器使用についての調査研究
〜普通教室における聴覚障害児の
FM補聴器活用についての学級担任へのアンケート調査から〜福岡県久留米市立金丸小学校ことばの教室 教諭 衛藤泰博
1.研究の動機
ここ数年の間に、耳かけ形FM補聴器が普及しはじめ、普通学級で学ぶ聴覚障害児が、授業や集会などの学校生活の中で、このFM補聴器を活用するケースが増えてきている。FM補聴器は、話し手の声をFM電波によって子どもの補聴器に直接飛ばすもので、距離が離れていても、騒音の多い教室の中でも、子どもは先生や生徒の声を、比較的、雑音の少ない音として聞くことができるようになるものである。
学校でのFM補聴器の使用にあたっては、学級担任が日常的にFMマイクを使用することから、担任の理解と協力が必要不可欠である。担任に対しては、必要に応じて聾学校やことばの教室の教師、または聴覚障害児の親が、FM補聴器の使用についての説明やアドバイスを行っているが、実際に使用している学級担任の苦労や問題点などについてはまだ具体的に明らかにはされていないのが現状である。
そこで、アンケートによる質問を通して、一般的には効果があると言われているFM補聴器が、実際はどの程度、学校生活の中で活用されているのか、そして、学級担任がどのような悩みや問題をかかえているのか、などについて回答してもらうことにした。そして現在のFM補聴器使用の実態を把握するとともに、よりよい使用方法についてのヒントをさぐり、現在FM補聴器を使用している聴覚障害児の学級担任や保護者、将来的に使用を検討している担任や保護者への指導やアドバイスのかてにしていきたいと考えた。
2.研究の目標
教室や学校でのFM補聴器の活用の実態や、FMマイクを使用している学級担任の苦労や問題点を把握するとともに、FM補聴器のより効果的な使用方法や使用上の留意点についての検討を通して、普通学級で学ぶ聴覚障害児にとっての、よりよい学習環境のあり方を明らかにする。
3.調査の内容
学級担任のFM補聴器の活用の実態や使用上の苦労や問題点について、次のような質問項目を設けた。
(1)担任が使用するFMマイクの保管場所や保管方法,保管や充電のトラブル
(2)FM補聴器使用開始に当たっての事前の打ち合わせや児童への説明
(3)FM補聴器使用開始の頃の率直な感想、苦労や注意した点など
(4)FM補聴器の使用頻度、エピソードや失敗談
(5)FM補聴器の使用が効果的と思われる教科や行事
(6)FM補聴器以外で、担任が聴覚障害児の指導について気をつけていること
(7)これからFM補聴器を使用する担任、保護者へのアドバイス
(8)FM補聴器の活用が十分できていない場合の原因や理由
(9)FM補聴器はどのくらい効果的だと思うかこのような質問項目に対して、主に文章による回答をお願いした。(4)のうち、使用頻度や、(9)の、どのくらい効果的か、といった質問については、それぞれ5段階の評価で回答をお願いした。
4.調査の対象
現在、本校ことばの教室に通級している聴覚障害児16名(教育相談を含む)のうち、FM補聴器を使用している児童(現在、試しに使ってみている児童を含む)9名の現在の担任と、FM補聴器使用の経験のある元の担任にアンケート用紙を発送した。8月末現在回答が届いたのはそのうち7名の児童の現担任(試用中1名)と3名の元担任の合計10名の担任からである。
表−1:児童の聴力レベルとFM補聴器装用歴について 児童名 学年 平均聴力(dBHL) FM補聴器の
装用開始学年FM補聴器の器種と
使用状態(スイッチ)右 左 A 6年 105 105 5年生〜 Free-Ear F B 4年 105 120 3年生の2月〜 Free-Ear B C 4年 105 105 1年生〜
(幼稚園在園時は、Extend-Ear F
リオネットFR28を使用)D 4年 103 103 2年生の3月〜 Extend-Ear F E 4年 110 111 1年生〜 Extend-Ear F F 1年 98 103 1年生〜 Extend-Ear B G 4年 79 80 (現在試用中)
《回答の状況》
A〜G児について、現在の担任から回答をもらった。C児については、現担任のほか、1〜2年と3年の時の担任2名から、D児については、現担任のほか、3年の時の担任から、それぞれ回答をもらった。合計すると、現担任6名,元担任3名,試用中の現担任1名の合計10名から回答をもらっている。
《FM補聴器について》
「Extend−Ear」(エクステンド イヤー)は、AVR社製造、日本ではダナジャパンが発売しているもの。FMマイクは充電式。
「Free−Ear」(フリー イヤー)は、Phonic Ear社が製造、日本ではリオンが販売しているもの。FMマイクは電池式
スイッチFは、FMマイクの音(先生の声)だけが聞こえる。
スイッチBはFMマイクの音(先生の声)と同時に周囲の音も聞こえる。
現在A〜Fの児童はFM補聴器を片方の耳に付けている。
5.調査結果の概要と考察
(1)FMマイク(補聴器)の保管方法について
表−2:FMマイクの保管方法(現担任のみ) 時間帯 保管方法 人数 内訳 平日 担任で保管 4 教室の机 2 職員室の机 2 児童が持ち帰る 2 学校内では教室 1 不明 1 土・日
(休日)担任で保管 2 教室の机 1(学校の備品のため) 職員室の机 1(充電の必要がないため) 児童が持ち帰る 4 家庭で充電するため 3 充電の必要がない 1
表−3:FMマイクの充電方法(現担任のみ) 充電方法 人数 理由 家庭で 3 学校で 1 学校の備品のため 充電の必要なし 2 乾電池式
- 保管の場所や形態が案外ばらばらに分かれているのがわかった。
- 先生用のFMマイクを児童が毎日持ち帰るところが2件あった。個人の持ち物であることが理由と考えられるが、子どもにとって、持ち帰りが習慣となっていればよいが、保護者や子ども本人の負担は大きいと考えられる。
- 最近、FM補聴器を学校の備品で購入するところが増えてきており(今回の回答では1校)児童の持ち帰りや、家庭での充電といった負担の軽減にはつながる。しかし、学校での週末の充電の体制の問題が残る。乾電池式のFM補聴器も出てきているので、家庭や学校(担任)の協力の実態に合わせた機種の選定が課題となるのではないか
- 充電式の場合、「充電のし忘れ」「週末の担任からの渡しそびれ」「途中でのバッテリー切れ」等の問題が多いが、ある程度慣れてくると克服できる場合が多いようである
(2)FM補聴器使用開始に当たっての事前の打ち合わせや児童への説明について
- 事前の説明で、全校の職員や同学年の先生に説明をしたところが3名,同学年が5名であった。最初の年は全校の職員に説明があっても、担任が交代すると同学年や新旧担任での個人的な引継ぎになってしまうことがあり、次第に全校の共通理解が薄れていくことが心配である。 近年、「FM補聴器の使い方」のビデオや説明の小冊子が出され、各地で活用されているが、この冊子をさらに簡単にした、いつでも、だれにでも説明できるようなパンフレット等の用意も必要になるかもしれない。
- 学級の子どもたちへの説明については、FM補聴器の特徴や必要性などをかみくだいて伝えたり、「FM補聴器の使い方」のビデオを見せたりしているようである。また、実際にマイクを全員にまわして声を聞かせたところが2件あったが、友だちの声がよく聞こえて本人はとてもうれしかったようだ、といった報告がエピソード等のほかの質問項目で多くされていることを考えると、子どもたちへの最初の説明の時、FMマイクをまわして友だちの声を聞かせることは、とても効果的ではないかと思われる。
(3)使用開始に当たっての感想や苦労、注意した点などについて
- 「今までのマイク(拡声器)と違って、自分の声が補聴器に入っているのかどうかが実感がなかった」「声がはっきり入っているかどうか心配した」「どのくらいの声の大きさでしゃべっていいのかが分からなかった」「初めは、話す時、マイクをすごく意識してしゃべっていました。今までつけたことがなかったので違和感がありました。慣れるにつれてほとんど意識しなくなりました」「集会などで、FMマイクがあると声が増大されると思って、小声になってしまう子どもが多いので、きちんとした理解が必要と思った」といった回答のように、一般に「マイク」を使えば音が大きくなるという先入観があり、FM補聴器の場合、教師や周囲の子どもが音をモニターできないこともあり最初は戸惑う場合があることがわかった。
- また、「FM補聴器をして、やっぱりよく聞こえているようで、本人を意識しながら話をするようになったと思う」のように、担任がFMマイクを使用することで、クラスに聴覚障害児がいることを常に意識することにつながっている場合もあるようである。
- さらに、「非常に効果があると思いました。本人はスイッチの切りかえがめんどくさそうでしたが、顔の輝きがちがっていて、友だちの発言もマイクを使って聞き、うなづいたり、アーアと言っていました」のように、FM補聴器を初めて使う時の聴覚障害児の喜びの様子も報告された。エピソードのところでも出てくるが、特に「友だちの声」がよく聞こえることに感激して表情が輝くことが多く報告されているが、これは、子どもの難聴が発見され、補聴器を装用して、初めて「音の世界」にふれた時の子どもの表情の変化の様子と重なるものがあり興味深い。
- FMマイク本体を入れるための「ポケットがついている洋服でないといけないので着る洋服が限られた」こと、「付けたりはずしたりが結構めんどうでボケットがない時はどこに下げるかで困った」ことなど、現在のFMマイクの構造上の問題があげられている。
編集部注: 「FM補聴器の使い方」に関する簡単なパンフを下記で作られています。
〒810 福岡市中央区唐人町3-1-45 福岡市立当仁小学校 きこえとことばの教室
270円切手を添えて、上記(ご担当 田村元美先生)までお申し込み下さい。
(4)使用頻度について
表−3:使用場面ごとのFM補聴器の使用頻度 ( )の数字は元担任で外数 使用場面 いつも
必ず大体
いつも時々 内容により
使用する全く使っ
てないア)教室での授業 3
(2)2 1
(1)−− −− イ)教室で
授業以外の時間2
(1)0 0 3(2)
スピーチなど1 ウ)体育館や
多目的ホール1
(1)1 1 3(2)
始業式など全校の前で
話がある時,集会,映画0 エ)屋外
(運動場など)1
(1)0 0
(1)3(2)
全校朝会,理科の観察の
時,行事の中で、など全
体での話がある時(諸注
意など)2
(1)オ)体育の授業 1 0
(1)0 1
表現の時4
(2)
- 教室での授業を中心に使用されており、体育の授業での使用頻度は低くなっている。体育館や屋外での使用は、全体での話がある場合などで、頻度としては高くないようである。
- 屋外の使用では、理科の観察の時に活用している例が報告されている。今後、屋外での、社会見学などの行事、生活科、理科、体育といった教科学習での日常的な活用についての検討が必要になると思われる。
(5)FM補聴器の使用が効果的な教科、行事について
表−5:効果的な教科、行事 ( )の数字は元担任で外数
(教科) 人数 合計 国語 2(3) 5 算数 4(1) 5 音楽 1(1) 2 記入なし 1(1) 2
(教科) 算数: 本人が算数が好きなせいもあるが、教師の質問内容がわかりやすく、作業の説明も伝わりやすいと思う 算数: 説明がよくわかる, 音楽: スピーカのそばに置いて音楽を聴く,友だちの歌(声)を聴く (行事) 全校朝会,発表集会,観劇会,映画会,音読発表会,本読みのとき
- 教科では、国語と同じくらい算数をあげたところが多いようである。教師の質問や説明などの内容がFM補聴器を使うことで、子どもに伝わりやすくなることが実感されているようである。
- また、音楽も国語、算数といった教科に次いで評価されているようである。やはり音が主役の教科でのFM補聴器の効果を担任は感じていると思われる。
(6)エピソード、失敗談について
《FM補聴器の必要性や大切さを感じたエピソードについて》
- 話し手の声、特に友だちの声がよく聞こえることに喜びを感じて、子どもの顔の輝きがちがうこと、そして、よく聞こうとしていることなどが多く報告されている。「本人は、私の顔はよく見てききますが、友だちの顔をよく見てきくことはそう多くありません。その本人が、じっとくいいるように友だちの顔を見るときは帰りの会です。「友だちの話」で、5人の子が一日の出来事をFMマイクを持って話すときです。「友だち」の声・・・私でもお母さんでもない友だちの声がはっきりわかる時間なのだと思います。」「FM補聴器をはじめて使った時、友だちの声をきいて、うれしそうだった本人の顔が忘れられない。」
「本人がFM補聴器をつけて『聞こえる!!』とうれしそうにしている時には、ああ、やっぱりFM補聴器は必要だ!!と思いました。」
「集会の時、話をする人につけてもらったら、顔のかがやきが違っていました。(教生の先生のお別れだったのですが、本人がFM補聴器を試しに使ていることを校長先生が話したとき、顔を赤くしていました。内容がわかった証拠で、びっくりしました。)」- 会話以外の音源が聞き取りやすくなっているという報告もあった。「理科や社会のテレビや、CDを聴く時に、FMマイクをつけているとよく分かるようであった。内容をどの程度理解できているかは分からないが」
《失敗談について》
- 充電のし忘れ、バッテリー切れに関するもの
「(充電のため)本人がよく家に持ち帰るのを忘れていた」
「充電のし忘れが最初の方にありました。それからは、十分気をつけるようになりました。マイクの充電をしていても、補聴器の方の電池が切れていて聞こえなかった時がありました。充電と電池は十分確認をしないといけません」- スイッチの切忘れ、入れ忘れに関するもの
「本人以外の子を大声で叱って、本人をびっくりさせてしまった」 「スイッチを入れたつもりで授業に入り、終わったので切ろうとしたら、入れていなかった・・・そういえば反応が悪かったなあ・・・という事が2、3回ありました。休み時間に入れっ放しの分は本人があまり気にしないのでまだいいのですが、授業中の入れ忘れは本人にすごく悪かったです」- FMマイクの構造上の問題に関するもの
「ここだけの話ですが、(マイク本体を)ちょこちょこ落としていました。しっかり止まる工夫か、あるいは小型化を願います」
「アンテナの線(FMマイクのコード)がうまく体になじまないので、図工の時間、はさみで線を切りそうになった」
(7)FM補聴器の他に、日常、気をつけていることについて
- 授業や学校生活で聴覚障害児に対して分かりやすいように、どのようなことに気をつけているかという質問に対しては、具体的な対応を含め、担任の日常的な配慮が数多く回答されていて、最近の聴覚障害児への配慮についての理解が進んでいることを示しており、安心するとともに、担任の仕事のたいへんさもうかがえるような気がする。以下回答を紹介する。
(視覚に訴える授業の工夫)「プールではカードを提示。朝の会、帰りの会でもカードを提示」
「観劇会(影絵)があったので、事前にあらすじを書いたプリントを渡した」
「学習の跡が残るよう、なるべく模造紙や画用紙に板書」
「なるべく板書する」
「目に見えるような資料を用意すること」
(相手をよく見て話すこと)「学級で、学習中の発表は、その子に向かって言うようにしている」
「発表する時、みんなの顔を見て、はっきりと発表する。口の型をしっかり見せる」
「話し方(教師も学級の子どもも)口元がはっきり見えるよう、相手に分かり易い発表 をするよう心がけている」
「本人の方を向いて発言を心がけた」
「子どもたちに『目と耳できく』ということを常に言って、話す人の方を見てきく、だまってきく、ということを心がけています。私自身も、なるべく、本人の方を見て、ゆっくり、はっきり話すようにしています」
「大事なことは反応を見なから話したり、本人に確かめたりしています」
「お互いに顔を見ながら話す。唇を大きく、ゆっくりあける。」
「身ぶり、手ぶり、筆談も加える」
「“短く、はっきり、口を見せて”」
(その他の工夫)「確かめるために、逆に「どういうことを言った?」とたずねて、本人に話させる」
「本人が理解するまで、確認する。」
「個別学習に入った時に、もう一度説明を加える。TT指導形態の活用」
「保護者の方のアイデアで、イスにテニスボールをつけ、雑音をなるべく出さない」
「集会の時などは横で補説をするか、筆記をしています」
「机の配置を、お互いに表情が見れる形態にする。」
(8)これからFM補聴器を使用する担任や保護者へのアドバイスについて
- FM補聴器は万能ではないこと、視覚的な情報手段の活用が大切なことなどがあげら れている。また、本人の聞こう(聴こう)とする意識や傾聴態度といったものがFM補 聴器の効果を左右することなどがあげられている。
「FM補聴器に頼るだけでなく、あらゆるものを利用して、分かり易くする工夫が必要」
「FM補聴器があれば全部聞こえている、理解できている、と思わず、メモ等で伝えたいことはきちんと書いて伝える」
「集会や体育の時は、小黒板か、ホワイトボードを持参するといいと思う」
「一応、聞こえるということで安心して、相手の顔や口型を注意して見なくなった面もあります」
「特にありません。実際に使ってみて慣れるのが一番だと思います」
「FM補聴器は確かに有効ですが、万能ではないと思います。その子自身の特質が『聞こえ』にはやっぱり大きく左右するのではないでしょうか」
「まわりに雑音があったり、本人に、聞こうとする意識がない時は、FM補聴器を使っても効果はどうかな?と思った」
(9)FM補聴器の活用があまりできていない場合の原因や理由について
- 子どもの聴力活用や傾聴態度の問題、学校や教師側の理解の問題、そして聴覚刺激に頼った現在の集会のあり方の問題等が指摘されている。
- 「全職員にFM補聴器の効果や使用方法の説明を十分していないため、学校全体の行事の中で、なかなか使用できない」ということについては、担任の理解、努力と同時に学校内の全職員の共通理解が必要なこと、さらには中学校でFM補聴器を使用する場合に、教科ごとに担当教師がちがうという環境の中での共通理解の必要性が必要不可欠であることを示唆しているものと思われる。
- 聴覚障害児本人のFM補聴器の使用に対する意識が高くない場合(本人が効果をよく認識できていない時)は、担任としても迷ってしまうこと。また、補聴器のスイッチ(FかBか)の選択についても、本人の意識が影響していることなどがあげられた。
「使用の仕方が十分理解できていないと思います。本人にどの程度わかるのか把握できていない面もあり、FM補聴器をつけたからといって、本人に十分聞こえているように見えない所が見られ、効果的かな?と思う所があって、あまり使用できていませんでした」- 教室での授業に比べ、一般的な集会が、どんなに聴覚に頼ったものであるかがわかりただFM補聴器を使えばよいというものではなく、まず、集会を聴覚以外の情報伝達手段を活用する方向で考え直すことが大切だとの意見も今後の方向性を示した意見であると思われる。 「集会では、ただFM補聴器を使えばいいということではない、ということがよく分かりました。教室の中では、子どもの数も39、黒板(板書)やプリント教具があり、本人も予習してきているので、情報も多く、FM補聴器が有効です。でも、難聴児がいない集会しか経験していない私たちには、一般的な集会が、どんなに聴覚に頼ったものなのか、何百人という中でのザワザワ声がどんなにその子にとって困るものなのか分かっていません。集会自体の内容をFM補聴器がなくても大丈夫、参加できる、というものにねり直した上で、FM補聴器を使うと、とても有効だと思います」
(10)FM補聴器の使用がどのくらい効果的かについて
表−6:FM補聴器の使用がどのくらい効果的かについて
( )の数字は元担任及び試用中の担任回答項目 人数 合計 とても効果的 2(1) 4 まあ効果的 3(1) 4 ないよりはいい 1 1 あまり効果的でない 0 0 よくわからない 0(1) 1
- 効果の度合いについて5段階での評価をお願いした。大まかな評価の項目ではあるがどの子にも「とても効果的」というのではないが、大体において効果が認められている印象を受けた。
- 「まあ効果的」という回答が「とても効果的」と同じくらい多いということは、FM補聴器が、普通の補聴器と比べて「聞こえやすく」なるかもしれないが、「聞こえる」ようになるものではないこと、FM補聴器が万能でないが、効果はあるということをそのまま象徴しているように思われるが、どうであろうか。
- 「ないよりはいい」「よくわからない」の回答があったところは、子どものFM補聴器についての関心や反応がいまいちで、担任としてもFM補聴器を活用しにくかったようである。
6.研究のまとめ
今回のアンケート調査を通して分かった、特徴的なこと、留意すべきことをいくつか挙げて、調査研究のまとめにしたい。
◎ FM補聴器を使用する聴覚障害児は、友だちの声がよく聞こえることに喜びを感じているようであること。一番最初に教室で使う時に、教室の子どもたちにマイクをまわして声を聞かせるのは、かなり効果があると思われる。 ◎ FM補聴器(FMマイク)を初めて使用する際、担任や周囲の子どもたちは、マイクと言えば拡声器のマイクを思い浮かべることがあるため、若干の混乱がある。FM補聴器、FMマイクについてのきちんとした理解が大切であること。 ◎ FM補聴器が活用されているのは、国語、算数それに音楽の教科であり、体育や屋外の行事ではあまり活用されていないようであること。友だちの発言が重要な役割を果たす時間(朝の会、帰りの会、学級会など)での活用をもっと試みてよいのではないか。 ◎ FM補聴器の活用には、担任の理解とともに、同学年や学校全体の教職員の共通理解が必要であること。 ◎ 聴覚障害児本人の聞こうとする態度や注意力がFM補聴器活用のカギを握っていること。 ◎ 担任はFM補聴器の他に、日常的にかなりの配慮や工夫を聴覚障害児に対して行っていること。また、聴覚以外の視覚などに訴えるなどの授業の工夫は、全校での集会や行事にもっと生かされてもよいのではないか。すなわち聴覚障害児にとってわかりやすい授業や集会は、聴こえている子どもたちにとっても、わかりやすいものである、ということを再確認したい。
7.今後の課題について
- FM補聴器を使用する基準についての検討を進めること
FM補聴器の使用がより効果的な、聴覚障害児の聴力や聴覚活用などの条件について個別の事例研究を通して検討していく必要がある。
- 保護者や聴覚障害児本人への調査活動をすること
今回は担任向けの調査にとどまっているので、今後、保護者や聴覚障害児本人へのアンケート調査活動を通して、総合的にFM補聴器の効果的な使用のあり方についての調査研究を深める必要がある。
- 日常的な、学級担任への適切な指導やアドバイスの提供のありかたについての検討を続けていくこと
聾学校やことばの教室といった相談機関を活用した連絡体制づくり
現在、小学校に在籍している子どもたちが、中学校に進学した時、教科ごとに担当教師が交代する学習環境の中でのFM補聴器の効果的な使用のあり方についても調査研究をしていく必要がある。
謝辞:調査研究にご協力いただいた担任の先生方に厚くお礼申し上げます。
《参考文献》
1) 立入 哉・中瀬浩一:聴覚障害児の理解のために 第24集(補聴援助システム)、
全国心身障害児福祉財団/難聴児を持つ親の会,19972) 立入 哉・中瀬浩一・加藤登美子・岡林豊・岡林紀:
「FM補聴器の使い方」ビデオ・テキスト,みみだより編集部,1996(1997年9月作成)
転載の許可を下さいました衛藤先生にお礼申し上げます。編集部。
ミニニュース
★ 字幕とナレ−ションでスクリ−ンの臨場感
「ばりあふり〜」No.8,68-69,1997、ベースボールマガジン社刊 800円
洋画の字幕を朗読し、邦画に字幕をつけて上映という映画館を映画ファンが中心になって運営している。字幕は事前にパソコンに打ち込んだセリフをプロジェクタで映し出す方法を採用している。ベースボールマガジン社 FAX:03-3238-0063。 インターネットを通じた入手も可能 http://www.bbm-japan.com/jp/new/free.html★ 聴覚障害学生サポートシステム作り協力望む
「教育医事新聞」No.158 附録(10/25発行)、教育医事新聞社発行 750円
米国カリフォルニア聴覚障害学生サポートシステム視察旅行 野村みどりコーディネータによるの報告。関連記事=みみだより332号13ページ。入手は下記にご照会を= 葛ウ育医事新聞社 〒160 新宿区四谷4-30-23 Fax:03-3356-6682。★ 吉本興業が、大阪で「字幕寄席」を開催
吉本興業が80周年を記念して、「難聴者のための字幕寄席」を企画している。字幕寄席では、要約筆記グループの支援により、舞台後方の大型スクリーンにセリフを映し出す仕組みを採用。桂文珍の落語、吉本新喜劇などを披露する。期日は12月3日、なんばグランド花月に、関係者600人を招待する。すでに関係団体には招待券を配布済み。★ アメリカ、クリントン大統領が補聴器を装用開始
10月、アメリカのクリントン大統領が補聴器を両耳装用していることが判明した。クリントン大統領は現在51歳、以前から両側の高音域に軽い難聴があったと報じられている。以前、レーガン大統領が補聴器を装用していることが報じられたとき、アメリカでは補聴器の販売が30%上昇した。今回、クリントン大統領が装用したのは、もっとも進化したCIC(完全耳挿入形)補聴器であるため、外見から補聴器を装用しているかどうかがわからないということから、補聴器販売にそれほど大きな影響はないのではないかとも言われている。★ 100%、デジタル補聴器、各メーカーが開発競争
日本で市販されている(ピュア)デジタル耳かけ形/耳あな形補聴器は、ワイデックス社のセンソ、オーティコン社のデジフォーカスの2器種だが、欧米から、次々と、デジタル補聴器の開発/販売開始のニュースが届いている。まず、フィリップス社が、4つのプログラムを内蔵でき、リモコンでプログラムを選択できるものを市販開始する(今年の日本聴覚医学会機器展示会で参考出品され、音質の良さが好評だった)。さらにシーメンス社が来年1月にCICも可能な器種を、マイクロテック社が次世代DSPというCMを、バーナホン社も100%デジタルをコピーにしたCMを出している。11月から松下のデジタル補聴器WH−AD200が市販開始となる。まさにデジタル補聴器混戦の時代幕開けだ。
機器展示全日本聾教育研究大会 機器展示から 少し話題が古くなりますが、10月16日、ニュ−京都ホテルにて、全日本聾教育研究大会に併せて機器展示会が開催されました。展示メーカーは、松下/NJH/理研産業/ダナジャパン/アキトなど。この中でも、NJHと理研産業が、それぞれのFM受信アダプタ/FM受信用オーディオシューを参考出品していた。
1.理研産業/ホナックの「マイクロ リンク」
FM受信用オーディオシューとして、期待一番は、ホナックの「マイクロリンク」。ピコフォルテ/スーパーフロンテなどの従来器種に加え、PiCSなどのデジタル・プログラマブル補聴器などすべての器種に「マイクロリンク」が接続できる。しかし、新しいFCC認可周波数に対応のため、日本の新電波法下でも微弱電波での使用となる。
2.NHJのRX80(イスラエルAVR社製)
イスラエルAVR社とカナダのユニトロン社が設立したユニコム社(みみだより305号 P.7既報)の製品。ユニトロン社のUS80PPLに接続して使用するオーディオシュー。製造メーカーがAVR社であることから、Extend-Ear 耳かけ形補聴器と完全互換であることが利点。FMマイクも Extend-Ear用のものがそのまま利用できる。ユニトロン社の日本代理店がNJH(ニュー・ジャパン・ヒヤリングエイド社)であるため、今回の参考出品もNJHが行った。ダナジャパンが販売する Extend-Ear用新電波法対応FMマイクを使用すれば、新電波法の下、合法的に使用可能。
どのFM受信用オ−ディオシュ−も、海外では既に広く販売されている製品だ。しかし、日本での使用開始が遅れている理由は何であろう。ホナック製品は日本の電波法がいまだ輸入障壁となっているのであろう。微弱電波での使用を余儀なくされる日本の聴覚障害児者の聴環境の確保のためには、新電波法のFCC新周波数への対応に向けて、次なる改正を目指す必要があると言える。
また気になるのは日本での販売価格である。補聴器本体価+α=耳かけ形FM補聴器というぐらいか、わずかに > の関係でなくては、経済的理由で購入しにくいだろう。補聴器本体の価格は置いておくとしても、せめて、こうした周辺機器は欧米並み価格での販売をお願いしたいものである。なお、「今、欲しい!」という方には、個人輸入という手もある。インタ−ネットの海外サーチエンジンで「 hearing aid 」を検索語にすると、アメリカの補聴器販売店が出てくるので、直接交渉するのも一方策だ。
新刊図書重複障害児の聴力評価と聴覚補償に関する研究
聾学校の幼児・児童・生徒の重度重複化が進んでいる。養護学校に在籍している児童・生徒についても、医療的ケアの進歩に従い、今までは気付かれにくかった聴力障害について、診断がなされ、教育的対応が必要となるケースも多くなってきている。こうした聴力障害に加えて、別の障害を持つ子どもに対する聴覚的ケァは、検査/測定の難しさがつきまとい、十分にはなされていない現状が散見される。
本書は、そうした重複障害児の聴力評価と聴覚補償に焦点をあてた学術研究論文である。目次は、
1.本研究の問題と目的
2.ダウン症児の聴覚障害の実態
3.脳性運動障害児の聴覚障害の実態
4.重複障害児に対する聴性脳幹反応聴力検査の適用に関する研究
5.重複障害児に対する幼児聴力検査の適用
6.聴覚障害を併せ持つダウン症児の聴覚補償
7.総合的考察−本研究の教育的意義
の7章で構成されている。
重複障害児の聴覚補償に係わる先生方にとって、無比の参考書となろう。
国立特殊教育総合研究所 鷲尾純一先生著、風間書房刊、6,000円。
なお、風間書房のお取り計らいで、著者割引販売ができるので、入手ご希望の方は下記にてお申し込み願いたい。FAX送信先=089−946−5211。
「聴覚障害児の聴力評価と聴覚補償に関する研究」注文票 「重複障害児の聴力評価と聴覚補償に関する研究」を_____冊、注文します。 お名前:________________FAX:_____________ 発送先:(〒______)________________________
_______________________________
メーカー 機種名 価格 NEC speax23CL
speax23TA78,000
53,000NTT でんえもんJ-30 128,000 シャープ UX-T10CL
UX-T10オープン
オープン
誘導コイル内蔵受話器付きFAX右のFAXには、誘導コイルを内蔵した受話器が付いている(親機のみ)。補聴器使用者は、Tスイッチを使うことで、明瞭な音声で電話の音声を聞くことができる。右記のFAXには、「補聴器対応受話器」との表示がされているので、ご確認を。
(裏情報:手持ちの電話機の受話器が補聴器対応でない場合、下記の機種の受話器を、「こわれた」「なくした」と言って修理扱いで注文し、自分のFAXに接続することで、誘導コイル対応となる。しかし、必ず友だちの受話器などを借りて、使えるかどうかを事前に確かめること。機種によっては特殊なコードを使っていたり、FAX本体に受話器のサイズが合わず、電話のフックが押さえられないことなどもある)
(機種情報は、「みみより情報」大阪市立聾学校聴能研究班刊より転載)
新刊図書ろうあ者・手話・手話通訳 全国手話通訳問題研究会から「手話通訳問題研究」との季刊誌が発行されている。この季刊誌に連載された内容を集めたもの。
大阪市立聾学校出身の弁護士として、著者、松本晶行氏は有名だが、氏が係わってきた事件などを通し、ろうあ者・手話・手話通訳などの問題に触れている。ろうあ者の人権、法的権利などから洞察する切り口が新鮮な印象を与えている。運転免許裁判の回想録も収録されているが、今は常識ともなった聴覚障害者の運転免許取得のための運動がどのように展開されてきたかも初めて知ることができた。
松本晶行著、文理閣刊、1,700円。
第3回 International Forum'98 開催のお知らせ (第1報β)第3回 International Forum は、アメリカのEducational Audiology Association の元会長であり、コロラド州教育省オーディオロジー・コンサルタントをお勤めのCheryl DeConde Johnson教育学博士をお招きする予定です。彼女は21年間に渡り、コロラド州のグレーリー学校区のEducational Audiologistとして、0歳から21歳の聴覚障害児のケァに携わったほか、オーディオロジー・コンサルタントとして、Educational Audiology に関する政策やガイドライン作成に活躍されてこられました。その他、1997年に出版された Educational Audiology Handbook※の著者でもあります。この著作は、この領域のまさに座右の書として、広く行き渡りつつあります。彼女を招き、下記の日程で開催いたします。詳細のご案内は、11月下旬頃から「みみだより」を通じて行います。
どうぞ、万障を排して、ご参加下さいますようお願い申し上げます。
※Educational Audiology Handbookについては、331号 p.5にて紹介しています。
1.日 時: 1998年2月8日(日) 会場=横浜ラポール(JR新横浜駅下車徒歩8分)
1998年2月11日(水・祝) 会場=新大阪三和科学ホール(JR新大阪駅下車徒歩5分)2.参加費: 3,500円(当日 4,000円)
前売りチケットの購入用振込用紙は11月下旬にお手元に郵送します。3.内 容: 午前中に2時間の Cheryl博士のご講演の他、
午後には、国内研究家とのディスカッションの時間を設けます。4.講演には日本語の逐次通訳がつきます。
通訳=アメリカ テキサス州オーディオロジスト 田中美恵子先生(予定)5.主 催: 日本教育オーディオロジスト連絡協議会
連絡先:〒790-77 愛媛大学教育学部聴覚言語障害教育研究室
立入 哉 TEL&FAX:089−927−95136.その他:受講者には協議会の名前による受講内容の証明書をお渡しいたします。
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